それでは、『和漢三才図会』の問題の個所を読んでみましょう。
あ、今回は青空文庫に対応した書式になっています。
この記事をコピペして、テキストファイルを作成して青空文庫リーダーで開くと、ちゃんとルビが漢字の横に表示されますヾ(๑╹◡╹)ノ"
本当はね、テキストファイルをダウンロードできるようにしたいんですけど、パクられ放題になるので断念しました。
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻. [25] - 国立国会図書館デジタルコレクション
【書き下し文】【現代語訳】
※なるべく漢字はそのまま残しました。
※なるべく漢字は現在使われている書体に修正しました。
※なるべく振り仮名を補いました。
へいさらばさら
へいたらばさる 二名共に蛮語《ばんご》也。
鮓荅
ツヲタ
鮓荅
訓読み「へいさらばさら」「へいたらばさる」※この二つの読み方は元々は異国の言葉。
音読み「ツォタ」
『本綱』
「鮓荅《さとう》は走獣《そうじゅう》及び牛馬諸畜|之《の》肝胆の間に生ず。
肉|嚢《のう》有りて、之《これ》を裹《つつ》む。
多きは升《ます》許《ばか》りに至る。
大なる者は鶏子《けいし》の如《ごと》く、小なる者は栗の如く、榛《はしばみ》の如し。
其《そ》の状《かたち》白色、石に似て石に非ず、骨に似て骨に非ず、打ち破れば層畳《そうじょう》す。
以て雨を祈る可《べ》し。
『本草綱目《ほんぞうこうもく》』には次のように書かれています。
「鮓荅《さとう》は、走り回る獣や、牛や馬、その他家畜の内臓の中に出来ます。
肉の袋に鮓荅は包まれています。
それほど大きなサイズにはなりません。
大きなものだとニワトリの卵ぐらいで、小さなものだと栗やハシバミの実ぐらいです。
鮓荅は白色で、石のようで石ではなく、骨のようで骨でもなく、割ってみるとミルフィーユ状になっています。
鮓荅を使って雨乞いをするそうです。
『輟耕録《てっこうろく》』に載する所の鮓荅は即《すなわ》ち此《こ》の物也。曰《いわ》く、
「蒙古《むくり》の人、雨を祷《いの》るに、惟《ただ》浄水|一盆《ひとぼん》を以て、石子《いしこ》数枚を浸し、淘漉《とうろく》し、玩弄《がんろう》し、密《ひそか》に咒語《じゅご》を持すれば、良《やや》久しくして、輙《すなわ》ち雨ふる。
石子を鮓荅と名づく。
乃《すなわ》ち、走獣の腹中に産まるる所。
独[実際の『輟耕録』では「狗」と書かれている]り牛馬の者、最も妙也。
蓋《けだ》し、牛黄《ごおう》狗宝《くほう》|之《の》類《たぐい》也。」
鮓荅 甘鹹《かんかん》 平《へい》 驚癇《きょうかん》毒瘡《どくそう》を治す。」
鮓荅は『輟耕録《てっこうろく》』にも載っていて、次のように書かれています。
「モンゴル人は雨乞いをするのに、キレイな水が入ったお盆に、小石を入れて浸し、ガチャガチャとかき混ぜて、秘密の呪文を唱えます。
すると、少ししてから雨が降り出します。
この小石のことを鮓荅と言います。
鮓荅は、走り回る獣の体の中に出来ます。
特に牛や馬に出来るのが良い物とされます。
つまり、牛黄《ごおう》や狗宝《くほう》のような漢方薬の一種でしょう。」[『輟耕録』の引用ここまで]
鮓荅―味は甘辛、効き目は穏やか。ひきつけ や できもの を治します。」
[『本草綱目』の引用ここまで]
△按ずるに、阿蘭陀《おらんだ》自《よ》り来る平《へい》佐羅婆佐留《さらばさる》有り。其《そ》の形、鳥卵《たまご》の如く、長さ寸|許《ばか》り、浅|褐《きくろ》色、潤沢《じゅんたく》、石に似て石に非ず、重さ五六|銭目《せんめ》|可《ばか》り。之《これ》を研磨すれば、層々たる理《すじ》有りて、巻き成る者の如し。
痘疹《とうしん》の危症《きしょう》を治すを主《つかさど》り、諸毒を解すと。
俗伝に言う、「猿、猟人《りょうじん》の為《ため》に傷せ被《ら》れ、其《そ》の疵痕《きず》贅《こぶ》と成りて肉塊《かたまり》也」と。
蓋《けだ》し、此《こ》れ、惑説《わくせつ》也。
乃《すなわ》ち、鮓荅|為《な》ること明《あき》らけし。
[ここから作者の見解]
オランダから伝来した平《へい》佐羅婆佐留《さらばさる》というものがあります。
その形は鳥の卵のようで、長さは一寸[約3センチ]ぐらい、薄い褐色でピカピカしています。
石のようで石ではなく、重さは五か六|匁《もんめ》[約20グラム]くらいです。
これを磨くと、ミルフィーユ状の筋が出て来て、何重にも巻いて出来たもののようです。
重症の天然痘《てんねんとう》を治すのに主に使われ、様々な解毒《げどく》の効果があると言います。
世間では「猟師につけられた猿の傷がコブとなってできた肉のカタマリ」と言われることがありますが、これはデタラメです。
私が思うに、平佐羅婆佐留と鮓荅が同じものであることは明らかです。
前半が『本草綱目』の引用で、後半が作者の見解です。
『本草綱目』の中で『輟耕録』が引用されているのでちょっとややこしいですね。
作者はオランダから伝来した「へいさらばさら」と、『本草綱目』50巻・『輟耕録』2巻に記載されている「鮓荅」は同じものだと言っています。
要するに動物の体の中に出来た結石ですね。
「ケサランパサラン」は『和漢三才図会』に記載されているという記述をたまに見ますが、正確には、体内石の「へいさらばさら」と白い毛玉の「ケサランパサラン」は別物で、語源は同じ可能性はあるということです。
どちらも貴重なもので大切にされているという点は共通します。
ちなみに、「へいさらばさら」はポルトガル語から来ているらしいです。
従って、「ケサランパサラン」は、戦後以降にしか資料に見られない、比較的新しいタイプの妖怪(?)だと思われます。
三つ目コーナー
えー、嘘だ~っ!
「ケサランパサラン」は、江戸時代からいるよ~!
「ケサランパサラン」ってこいつでしょ!
百鬼夜行拾遺 3巻. [3] - 国立国会図書館デジタルコレクション
こいつは「ケウケゲン」!
いいかげん、毛に執着するのはやめなはれ!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
あ、次回はこの「けうけげん」の絵に書かれている文章を読むから、予習しといてね!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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