うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

化物夜更顔見世 その10

【前回までのあらすじ】
ろくろ首のお六の許婚の河童の川太郎に支度金を返すために、お六と恋仲となった人間の与四郎は藪医者の よくあん にお金を借ります。花水橋の野良狐の家から盗み出した金で返済しようと、お六が包みを開けたら、中身は金ではなくて大きな玉でした。お六が怒って放り投げた玉を、お六の弟のちょろけん小僧が拾い、玉の力で木の葉を小判に変えて窮地を救ったのでした。
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国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 化物夜更顔見世 2巻
11ページ目です。


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翻刻
川太良にんげんに◆そつてゐるお六を◆
とりかへすにはしよ◆せんはけものつら◆
てははじまらずと◆よきはけこう◆
しやな◆はまみづ◆ばしの◆
のらきつねの◆かたへあまたの◆
ものものを◆ひきつれきたり◆
あるひはじゆん◆れいふるてかひ◆
ねきやまぶしに◆ばけさせ給へと◆
かわ太良しりばつた◆
こゑをしてのら◆きつねを◆たのむ

【現代語表記】
川太郎、人間に添っているお六を取り返すには、所詮化け物面では始まらずと、良き化け巧者な花水橋の野良狐の方へ、数多[あまた]の物々を引き連れ来たり、「或いは巡礼、古手買、禰宜、山伏に化けさせ給え」と、川太郎、尻張った声をして野良狐を頼む。

【ざっくり現代語訳】
川太郎は、人間に添い遂げているお六を取り返したいものの、この化け物面では相手にならぬと考えました。
そこで、化けるのが上手い花水橋の野良狐の家に、多くの化け物どもを引き連れて行き、「この者は巡礼者、この者は古物商、この者は神主、この者は山伏に化けさせてください」と語尾を上げた声で野良狐に頼むのでした。

【解説】
やはりお六のことが諦めきれない川太郎、この顔では人間に敵わないと、化けるのが上手な花水橋の野良狐の所に、人間に化けさせてくれるようお願いに行くのですが、あれ、確か花水橋の野良狐って前に出てきましたよね?

川太郎が連れて来た化け物
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馬・ゴイサギ・猫はわかるのですが、これは?
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最初、タヌキかとも思いましたが、タヌキなら来なくても自分で化けれるわけで(笑)、たぶん、です(次の回に名前が出てくるので)。

うん、やっぱりこのページ番号は、
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明らかに印刷部分と色が違うので、後から誰かが書き足したものみたいですね。


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翻刻
このめいきよくの◆いとくによつて◆
いづれもいろおと◆ことばけさせ◆
たまへすこゝん◆こんろけいじん◆
はらきりくそはか◆どろ/゛\とふだ◆
またかまたれうきめう◆てうらいうすどろ/\◆
とふだよしかまたか

【現代語表記】
「この名玉の威徳[いとく]よって、何[いず]れも色男に化けさせ給え。
すここん、こんろけいじんばらきりくそわか、どろどろ。」
「どうだ、まだか、まだか。」
「待たりょう。帰命頂礼[きみょうちょうらい]、うすどろどろ。」
「どうだ、良しか、まだか。」

【ざっくり現代語訳】
(野良狐)
「この名玉の素晴らしい力で、どの者も色男に化けさせてくだされ!
すここん、こんろけいじんばらきりくそわか、どろどろ。
(化け物)
「どうだ、まだか?まだか?」
(野良狐)
「お待ちなさい。帰命頂礼、うすどろどろ。」
(化け物)
「どうだ?上手く行ったか?まだか?」

【解説】
「うすどろ」は、怪異が起きるときの擬音です。要は歌舞伎などで太鼓を小刻み叩くあれです。ほら、「ひゅ~どろどろどろ」とか今でも言うでしょ?
「こんろけいじんばらきりくそわか」「おんろけいじんばらきりくそわか」という真言[仏教の呪文のようなもの]「おん」を狐の鳴き声の「こん」に置き換えたものです。
「帰命頂礼」は、仏様に参りする時の言葉です。
と言えばお稲荷さまなので、野良狐の神主風の着物に鳥居のマークがあるのはおかしくないのですが、
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唱える言葉が仏教系なのは、神仏習合の世だったことを象徴していますね。


翻刻
ねこませんせい◆おれがつらは◆
たきのやのやうに◆なつたか

【現代語表記】
猫魔[ねこま][「猫又」の略?]先生、俺が面は滝乃屋[二代目市川門之助の屋号か]の様になったか。

【ざっくり現代語訳】
(馬)
猫魔先生、オレの顔は、滝乃屋のようになったか?」

【解説】
は古語で「ねこま」とも言いました。妖怪なので、シャレて「猫魔」という字を当ててみました(笑)



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翻刻
おれもこんどはばけつい◆
でに◆よし◆はら◆しや◆
れと◆でる◆つもり◆だ

【現代語表記】
俺も今度は化けついでに、吉原遊郭の名前]洒落と出るつもりだ。

【ざっくり現代語訳】
(猫)
「オレも色男に化けたついでに、今度は吉原に繰り出すつもりだ。」

【解説】
川太郎に協力するために人間の色男に化けるはずなのですが、気持ちはもう吉原のようで(笑)



翻刻
ぢぐり◆なんぞは◆
をいらは◆こいさぎ◆だ

【現代語表記】
「地口り[じぐり]なんぞは、おいらは五位鷺[ごいさぎ]だ。」

【ざっくり現代語訳】
ゴイサギ
「ここは一つ、地口[ダジャレのような言葉遊び]でも。
おいらはゴイサギだ!」[?]

【解説】
ゴイサギゴイサギギャグを言っている箇所のようですが、ゴイサギと何をかけてるのかさっぱりわかりません。。。



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翻刻
をかげで◆どふやら
きもちがいろおとこの
やうになりました

【現代語表記】
「おかげで、どうやら気持ちが色男のようになりました。」

【ざっくり現代語訳】
(川太郎)
「おかげで、どうやら気持ちだけはもう色男のようになりました。」

【解説】
気分はすでに色男のようですが、もちろん、実際には化けれていません(笑)
「をかげ」じゃなくて「とかげ[常陰?]」にも読めるので、その点がちょっと気がかりです。。。



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翻刻
ましならかほを◆みさつせい◆
だんまりの◆なんと◆まぶか◆ろうが

【現代語表記】
まじ[「真面目」の略?]なら顔を見さっせい。
黙り[だんまり]の何と眩[まぶ][?]かろうが。

【ざっくり現代語訳】
(野良狐)
「本気で化けたいなら、しっかり顔を見てください。
黙ってたら上手くいきますから[美しくなりますから]。」

【解説】
ここもちょっと意味がわかりにくいです。
やいやい言う化け物たちに野良狐がちょっとイラついているみたいですが。
でも、野良狐の玉って、確か誰かさんが???


◆くずし字クイズ◆

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【ヒント1】
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この二種類はよく出てきますね。
「介」「者」のくずしです。

【ヒント2】

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これは「満」のくずしです。

【ヒント3】

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私、最初間違って「より」(「与里」)と読んでしまっていました。
「尓」「天」のくずしなので、お間違えなく!!!

 

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