うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

大昔化物双紙 その10

【前回までのあらすじ】
親の越後の大入道から貰った大切な目を、愛する毛女郎に与えてしまった今入道。それにつけこんだ丹波のヒヒは、養子の見越し入道が今入道から受けた恥辱の仕返しで、遊郭の化けの里から今入道を追い出したのでした。

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国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 大昔化物双紙 2巻
11ページ目です。

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①本文

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翻刻
いまにうだう◆ひゝにあつかう◆さればけものゝ◆
くらゐをくるは◆よりおいさげ◆られし事を◆
おやのふる◆にうだう◆ひそかにきゝ◆
こゆへのやみに◆ゑちごのくにを◆
いでゝせがれが◆ありかをたづね◆
さまよひける◆おりから毛女◆
郎はいまにう◆だうがあとを◆
したひくるはを◆かけおちして◆
ふたりしな◆んとかくごの◆
ところへふる◆にうだう◆ゆきあひ◆
ばけもの◆だけにこは◆ゐけんも◆よくきく

【現代語表記】
今入道、ヒヒに悪口され、化け物の位を廓より追い下げられし事を、親の古入道密かに聞き、子故の闇[こゆえのやみ]に越後の国を出でて、倅[せがれ]が在り処[ありか]を尋ね、彷徨い[さまよい]ける折から、毛女郎は今入道が後を慕い、廓を駆け落ちして、二人死なんと覚悟の所へ、古入道行き合い、化け物だけに子は意見もよく聞く[「化物だけに怖い」と「子は意見もよく聞く」をかけた]

【ざっくり現代語訳】
今入道ヒヒに罵られた挙げ句、化けの里に出入りする資格を奪われ、化けの里を追い出された事を、親の古入道[越後の大入道]はどこからか聞きつけました。
古入道は、息子を思うあまりに越後の国を出て、今入道の行方を捜してさまよい歩きました。
一方、毛女郎化けの里を抜け出し、今入道を慕って駆け落ちをするのでした。
このまま二人で死のうと覚悟を決めていた時、間一髪で古入道が見つけ出しました。
そして、古入道に説得され、今入道は心中を思いとどまったのでした。

【解説】
男女の究極の愛の形が共に命を絶つ心中です。
遊郭を抜け出して捕まった遊女には、死ぬほどの折檻[せっかん]が待っています。
もちろん一緒に逃げた男も相当な仕打を受けたはずです。
それぐらいならいっそ死んでしまおうというわけです。
⑤の毛女郎のセリフがそれを物語っていますね。
幸いなことに、二人は権力者の古入道に保護されたので一安心です。


②本文

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翻刻
此ところ◆じやう◆なりと◆いふば◆なれども◆
そんな◆きの◆きいた◆ばけ物◆にては◆なし◆
ずんど◆むかしの◆事ゆへ◆たゞ◆ひと◆とをり◆なり

【現代語表記】
この所、「情なり」という場なれども、そんな気の利いた化け物にてはなし。
ずんど昔の事故、ただ一通りなり。

【ざっくり現代語訳】
ここは感動的に盛り上がる場面ですが、化け物のためにそんな気の利いた演出をする必要もありませんし、ずっと昔のことなので、ざっとあらましだけ記しておきました。

【解説】
要するに、このあたりは芝居の心中物のパロディーなんですよね。
はい、ここでタイトルにあるように大昔の出来事だということがようやくわかります(笑)


③セリフ部分

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翻刻
いまにうだうやァい◆毛女良やァい

【現代語表記】
「今入道やあい、毛女郎やあい。」

【ざっくり現代語訳】
[古入道のセリフ]
「今入道や~い! 毛女郎や~い!」

④セリフ部分
翻刻
ハッァゝ◆ひとこへは◆
かつはち◆にうだう◆ほとゝ◆ぎす◆か◆
ハァ◆そふじや◆/\

【現代語表記】
「はっああ、一声は「がっぱち入道ほととぎす」か、はあ、そうじゃ、そうじゃ。」

【ざっくり現代語訳】
[古入道のセリフ]
「はあはあ、あの声は今入道ではないか? ああ、そうだ、そうに違いない!」

【解説】
「がっぱち入道ほととぎす」はこないだ出てきた「がんばり入道ほととぎす」と同じです。 

kihiminhamame.hatenablog.com

普通に「入道」と言えば良いものをわざわざシャレて「がっぱち入道ほととぎす」と言っています。
「鶴の一声」じゃありませんが、「ほととぎす」から鳥を連想して、「一声」という表現を使っているのでしょうね。
「がっぱち」「がんばり」がなまった言い方でしょうが、浄土宗「合鈸[がっぱち]という「鈸[はち]というシンバルのような楽器を鳴らす作法があるようです。
鈸の音ホトトギスの声、少しは関連があるのでしょうかね?
大入道が持っている提灯の文字は「浄」でしょうか?
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何を意味するのかよくわかりません。。。


⑤セリフ部分

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翻刻
こちの人ばけめに◆かゝらぬうち◆
はやくしに◆たいはい◆のふ

【現代語表記】
「此方[こち]の人[妻が夫に対して呼ぶ言葉]、化け目[化け物だけに「人目」ではなく「化け目」]にかからぬうち、早く死にたいわいのう。」

【ざっくり現代語訳】
[毛女郎のセリフ]
「ねえ、あなた、誰かに見つかる前に、早く死にたいものです。」

【解説】
前回のくずし字クイズの答えはここです!


⑥セリフ部分

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翻刻
そなたはながらへ◆わがばけあとを◆とふてたべ

【現代語表記】
「そなたは長らえ、我が化け後[化け物だけに「亡き後」のことを「化け後」としている]を弔うてたべ。」

【ざっくり現代語訳】
[今入道のセリフ]
「あなたは生きながらえてくだされ。
そして、ワシが死んだ後、供養をしてくだされ。」

【解説】
今入道は、毛女郎が出家してしまえば、遊郭側も手が出せないと考えたのでしょうか?
自分の命を捨ててでも毛女郎の命を守りたい、なんて今入道は優しい奴なんでしょう。
だからモテたんでしょうね(笑)

さあ、いよいよ、あと二回で完結です!!!

ーーー

◆くずし字クイズ◆

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【ヒント1】

f:id:KihiminHamame:20171209163037j:plain

この二つは同じ「め」ですが、上のちょっと読みにくいですよね。
でも、現在使われているのと同じこの「め」は元々は「女」のくずしだということを理解していれば、読めるはずです♪

【ヒント2】

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これもちょっと読みにくい字ですが、現在使われている平仮名と同じものです。
文脈を考えたら読めると思います。

【ヒント3】

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はい、この三つはよく出てくる字ですね♪
珍しく半濁点がついているのもあります♪

【ヒント4】

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さりげなく、片仮名も混じってたりするので気をつけてくださいね♪

【ヒント5】

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これもよく出てきます!
「本」のくずしで「ほ」です。

 

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