明治大正時代の本所七不思議の資料の続きです。
チャーコ (id:harienikki) さんからご質問がありましたので、まず、前回の地図に錦糸公園の場所を追加したものをどうぞ♪
〔江戸切絵図〕. 本所絵図 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※ この記事では国会図書館デジタルコレクションの画像を適時改変して使用しています。
錦糸公園は合羽干場(かっぱほしば)があった辺りにあるのですね。
kihiminhamame.hatenablog.com
ちなみに、合羽干場は、葛飾北斎が大きな馬の絵を描くパフォーマンスを行った場所です。
錦糸公園の南に面する通りが元錦糸堀です。
講談本
この時期、「本所七不思議」は誰もが知っていたようで、講談の題材にもなっています。
講談自体は創作なのですが、その冒頭に世間で言われている本所七不思議について触れてられいます。
国会図書館デジタルコレクションで、「本所七不思議」を題材にした講談本を以下の二種見ることができましたので、該当箇所を引用します。
本所の七不思議と言うのは、
置いてけ堀、
片葉の芦、
竪川(たてかわ)の一つ提灯、
一本足、
お竹倉(たけぐら)の神楽歌(かぐらうた)、
井戸の中の女の首、
亀戸(かめいど)の逆竹(さかだけ)、
などで、この外(ほか)に、
蛙の行列、
骸骨の行列、
など言う不思議な事がありました。
怪奇山人編『怪談百物語 本所七不思議』[大正五[1916]年刊]
本所七不思議 : 怪談百物語 - 国立国会図書館デジタルコレクション
本所竪川(たてかわ)の一つ提灯、
あるいは片葉の芦でございますの、
天井より一つ足が下がったの、
または夜に至って御竹倉(おたけぐら)に怪しげなる神楽の音が聞こえまするとか、
あるいは黒髪の婦子(をなご)の首が井戸の内に現われるとか、
または亀井戸(かめいど)の逆竹(さかだけ)とか、
置いてけ堀の怪異だとか、
かくのごとき事が本所にある、これを七不思議と申します。
なお探求致しますれば、これよりもっと不思議な事がございます。
それは何であるかと言うと、かの置いてけ堀近所に、蛙の行列と言う事がございます。
あるいは亡者(もうじゃ)の行列と言う。
松林伯知口演・一穴庵貍速記『妖怪奇談 本所七不思議』(大正六[1917]年刊)
本所七不思議 : 妖怪奇談 - 国立国会図書館デジタルコレクション
どちらも、ほぼ同じようなことが書いてありますね。
「一本足[一つ足]」は「足洗い屋敷」のことでしょう。
「一つ提灯」はおそらく「送り提灯」のことだと思われます。
前回の『東京風俗志』 では、「二つ提灯」でしたね、なんだかよくわかんなくなってきました(笑)
浮世絵の送り提灯では、出村町(でむらちょう)での怪異とされていましたが、講談本では竪川(たてがわ)のことになっています。
神楽[馬鹿囃子]も御竹蔵(おたけぐら)のことになってますね。
「井戸の中の女の首」「亀戸の逆竹」「蛙の行列」「骸骨[亡者]の行列」が初登場です。
特に「蛙の行列」「骸骨[亡者]の行列」が気になりますが、置いてけ堀の近くで起きる怪異ということしかわかりません。
講談本をちゃんと読めばわかるかもしれないので、読んでみたらまたご報告します。
「井戸の中の女の首」「亀戸の逆竹」は次回以降で触れる予定です。
郷土雑誌
この時代の雑誌記事で、本所七不思議について触れてられているものがあったので、該当箇所を引用します。
わざわざコピーを取り寄せて読んだんですよ!
●本所の七不思議
一、入江町の時無し 拍子木を打つと怪異あり
二、置いてけ堀
三、横網(よこあみ)の片葉の蘆(あし)
四、割下水(わりげすい)の灯り無しの蕎麦屋
五、竪川(たてかわ)の送り提灯
六、梅村邸の井戸
七、御竹蔵(おたけぐら)の足洗い屋敷 夜大足出でて洗わす
異説に、
割下水の「ほい駕籠」の呼び声 声あり形無し
及び、馬鹿囃子 何処なるか知れず
を数う。
山中共古「七不思議の話」『郷土研究』3巻12号[大正五[1916]年刊]
江戸本所
一、置いてけ堀
魚を持って通ると堀の中から「置いてけ、置いてけ」と呼ぶ、置いて行かぬと途中で必ず魚を失うて仕舞う。
二、横網の片葉の芦
三、堅川の送り提灯
夜半に通りへ出ると、必ず前方に提灯の火が見える。人が進めば提灯も進み、止まれば止まり、何処まで行っても追い付くことが出來ない。
四、割下水の消えずの行灯
二八蕎麦屋の昼行灯で油がいらぬ。(灯り無し蕎麦屋)
五、御竹蔵の足洗い屋敷
毎晩、天井から泥だらけの足が下がる。洗ってやると引っ込む。
六、入江町の時無し
拍子木を打つと怪異あり。
七、梅村邸の井戸
異説には
一、落葉せぬ榧(かや)
二、夜更の馬鹿囃(ばやし)
何処から聞こえるかわからぬ
磯貝宗楽「各地の七不思議(上)」『郷土趣味』17号[大正九[1920]年刊]
違う雑誌で違う筆者なのに、なぜか同じようなことが書かれています。
浮世絵では三笠町の話だった「足洗い屋敷」が、どちらも御竹蔵での怪異になっていますね。
浮世絵では血だらけの足だったのが、泥だらけの足になっています。
「あし」って打つと「芦」が最初に出てくるからややこしいw
「消えずの行灯」の「二八蕎麦屋の昼行灯で油がいらぬ」という説明が分かりにくいですが、「昼でも夜でも、油を足されてる様子がないのに、ずっと灯りがついているニ八蕎麦屋」という意味でしょう。
行灯は、ずっと灯っているのと、ずっと消えているのの、2パターンが伝わっていたみたいですね。
初登場は、「入江町の時無し」「梅村邸の井戸」「ほい駕籠」「落葉せぬ榧」です。
これも次回以降で改めて解説します。
では、今回出てきた場所を地図ドン!
以上が、とりあえず目に出来た明治大正の本所七不思議の資料ですが、浮世絵以外は名目だけでどういう怪異かその内容がほぼ書かれていません。
おそらく、怪異の内容よりも、不思議を七つ数えることに重点が置かれていたのでしょうね。
でも、内容が知りたいっ!
本所七不思議は、基本的に江戸時代の本所で起きた七不思議の伝承なので、あまり新しい資料だと伝承性が薄くなってしまいます。
なんとかそのギリギリのラインで、昭和3年に本所七不思議について詳しく書かれた雑誌記事があったので、次回に紹介したいと思います。
次回予告とくずし字クイズ
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江戸時代の資料からです。
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