玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。
【翻刻】
姫君かへらせ給ひぬれハきつねもかくて在へきことならす
とおもひて我つかへそかへりけるつく/\とざぜんして
身の在様をくわんするに我先のよにいか成つミのむくひ
にてかゝるけたものと生れけんいつくしき人を見そめ
奉りておよハぬ恋ちに身をやつしいたつらにきへうせ
なんこそかなしけれと打あんしさめ/\とうちなき
てふしおもひけるほとによき人にはけて此姫君に
逢奉らハやと思ひけるかまたうちかへしおもふよう
我此きミにあひ奉らハかならす御身徒に成給ひぬへし
ちゝはゝの御なけきといひ世にたくひなき御有さま成
をいたつらになし奉らんこと御いたハしくとやかくやと
思ひミたれてあかし暮しけるほとにゑしきをも
ふくせねハ身もつかれてそふしくらしけるもしや
またも見奉るとかの花そのによろほひ出れハ人に
見られ有るハつふ手をおひ有るハしんとうをいかけ
られいとゝ心をこかしけるこそ哀なれなか/\に
露霜とも消やらぬ命物うく思ひけるかいかにして
御側ちかく参りて朝夕見奉り心をもなくさめハやと思ひ
めくらして在さい家のもとにおのこハかりあまたありて
女子をもたて多き子共の中に獨女ならましかハと
※赤字が前回の予習の答えです。
【現代語表記】
姫君帰らせ給いぬれば、狐も「かくて在るべき事ならず」と思いて、我が塚へぞ帰りける。
つくづくと座禅して身の在様(ありさま)を観(かん)ずるに、
「我、先の世に如何(いか)成る罪の報(むく)いにて、かかる獣(けだもの)と生まれけん。
美(いつく)しき人を見初(そ)め奉(たてまつ)りて、及ばぬ恋路に身を窶(やつ)し、徒(いたずら)に消え失せなんこそ悲しけれ」
と打ち案じ、さめざめと打ち泣きて伏し思いける程に、
「良き人に化けて此(こ)の姫君に逢(あ)い奉らばや」
と思いけるが、また打ち返し思う様(よう)、
「我、此の君に逢い奉らば、必ず御身徒(いたずら)に成り給うべし。
父母の御嘆(なげ)きと言い、世に類(たぐい)無き御有様成るを徒(いたずら)為(な)し奉ること、御労(いたわ)しく」
兎(と)や角(かく)と思い乱れて明かし暮しける程に、餌食(えじき)をも服せねば、身も疲れてぞ伏し暮らしける。
「もしや、またも見奉る」とかの花園に蹌踉(よろぼ)い出れば、人に見られ、有るは飛礫(つぶて)を負い、有るは神頭(じんどう)[矢の先に付ける矢尻の一種]を射掛けられ、いとど心を焦がしけるこそ哀れなれ。
中々に露霜(つゆじも)とも消えやらぬ命、物憂く思いけるが、
「如何(いか)にして御側(そば)近く参りて朝夕見奉り、心をも慰(なぐさ)めばや」
と思い巡らして、在(あ)る在家(ざいけ)の元に男子(おのこ)ばかり数多(あまた)ありて、女子(おなご)を持たで、「多き子供の中に独り女ならましかば」と
【さっくり現代語訳】
姫君がお帰りになったので、キツネも「こんなことしてちゃいけない」と思って自分の巣に帰りました。
キツネは邪念を払おうと座禅に打ち込むものの、
「私は前世でどんな罪を犯したせいで、こんなケダモノに生まれ変わってしまったのだろうか。
美しい人に一目惚れをしても、所詮(しょせん)ケダモノには叶わぬ恋なので、思い慕うことしかできないままやせ衰え、この世から儚(はかな)くも消え失せてしまうかと思うと、悲しくて仕方がない」
と自分の身の上を恨んで嘆き、しくしくと泣いて突っ伏すのでした。
そして、ふと、
「イケメンに化けてこの姫君にお会いすれば良くね?」
と思いましたが、考え直して、
「いやいや、もし私がこの姫君と結ばれてしまったら、ケダモノと交わったせいで姫君のお体は汚(けが)れてしまうことでしょう。
姫君がまたとない美貌と心をお持ちで、ふさわしい宮仕えやお輿(こし)入れがなされるはずだったのに、私のせいでそれが全てパーになってしまい、ご両親もお嘆きになるかと思うと、申し訳なくて」
と、なんだかんだ狂わんばかりに、エサも食べれないくらい思い詰め、すっかり衰弱して寝込んでしまいました。
「ひょっとしたら、またお目にかかれるかもしれない」
と、弱った体を起こして何とか例の花園にヨボヨボとよろめきながら出かけて行くこともありましたが、姫君にお目にかかれないばかりか、人に見つかってしまい、ある時は石を投げられ、ある時は矢を射られる始末。
キツネはただただ激しく恋焦がれることしかできず、その様子はそれはまあ哀れなものでした。
命は露や霜のように簡単には消えてしまわないので、キツネは辛くて仕方ないのですが、
「なんとかして、姫君のお側近くに仕え、朝晩そのお姿を拝見するだけでも、心の慰(なぐさ)めにはなるだろう」
と色々と思案をめぐらせました。
ある町の家で、男の子ばかりたくさんいて、女の子がいないので、「こんだけ多い子供の中に、一人でも女の子がいればなあ」と、
【解説】
なるべく忠実に訳そうとは思ってるのですが、それだとつまんないばかりか、わかりにくいので、ちょっと大胆に訳しております♪
キツネの激しい恋わずらいです。
このキツネの前世は人間だったようです。
だから人間に恋をしてしまったのですね。
百合系の話だと話題になっていたのですが、このキツネたぶんオスですよね。
当時の女の人は座禅組まないでしょうし。
姫君の将来を考えて自分の欲望を満たすのをためらう、理性を持ち合わせた立派なキツネのようです。
次回の予習
キツネの特技を生かしたようです。
三つ目コーナー
僕も北見花芽のことを思うと、食事がのどを通らないよ。
さっきラーメン・チャーハン・餃子セット大盛りを完食してたよね。
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