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玉水が手渡しする箱だから、玉手箱? ~『玉水物語』その21~

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玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。

翻刻

ざりつるこそ不思議なれ」
と思ひ巡らして、「風邪の心地」とて我が住む局《つぼね》に閉じ籠《こも》り、始めより思い初め奉りし我が有様、今迄の事を書き集め、小さき箱に入れて姫君に持て参り、
「何とやらん、此の頃ハ世の中味気《あじき》なく徒《あだ》なる物と思ひ知られて、物憂くは侍れバ、もし夜の間にも消へ失せ侍る事もやと覚へて、此の箱を奉る。
 我、如何様《いかよう》にも成りなん後、此の箱をご覧ぜよ」
 と申してさめ/゛\と泣きければ、姫君ハ怪しく、
「如何に思ひ給へバ斯《か》くハの給[宣]ふぞ。
 此のまゝ我が行く先をば見届け給ハまじきや」
 と打ち恨み給へバ、
「御内参りにも御供申し奉るべけれど、もし如何なる事があらんと心細くて、これを奉り置くなり。
 もしき[「きしき《儀式》」の誤りか」の折ハ人目繁くて、此の箱をもえ参らせぬ事があらんなどゝ思ひ奉りて」
 などゝ言ゝ紛らかしつゝ、
「構へて/\、此の箱を類《たぐひ》無く思し召し、又親しく思し召さるゝ月冴へなどにも見せさせ給ふな。
[様?]有る箱にて候へバ、左右《さう》無く人に見せ給ふまじ。
中の掛子[懸籠]《かけご》をバ、御年積り世を思し召し放


【予習の答え】

我いかやうにも成なんのち此箱を
御らんせよ

【さっくり現代語訳】

 それにしても、私が女房に化けていた事が、これまでバレなかったのが不思議でならないことよ」
 と思いを巡らせ、「風邪気味なので」と言って、自分の住む部屋に閉じこもりました。
 そして、姫君に一目惚れしたあの日のことから、今日までのことを全て書き連ね、小さな箱に入れて姫君の所に持って参上しました。玉水は、
「何と申しましょうか、近頃世の中がつまらなくて、どうしようもない物だと感じまして、憂鬱《ゆううつ》になっております。
 ひょっとしたら夜の間消え失せてしまう事があるかもしれない、なんてことを思ったりもしまして、この箱を持って参りました。
 もし、がどうにかなってしまったら、このを開けてご覧くださいませ」
 と申し上げ、声を押し殺して泣きました。
 姫君不可解な言動だと思い、
「なにを血迷いなさってこんな事をおっしゃるのですか?
 最後まで見届けてくださるのではないのですか?」
 と恨み言をおっしゃいました。玉水は、
「もちろん、宮中にもお供申し上げますが、万が一のことがあるかもしれないと不安になりまして、この箱を献上させていただくのです。
 御参内の儀式の時は人目が多いので、この箱をお渡しできないかもしれないと思い、今ここで献上させていただくのです」
 とかなんとか言って誤魔化しながら、

「どうかどうか、この箱のことは秘密になさって、フレンドリーにされている月冴えたちにも見せないでくださいませ。
 大事な役割がある箱ですので、決して軽はずみににお見せなさらないでくださいませ。
 この箱内蓋《うちぶた》は、お年を召して世の中をお捨てになる

【解説】

 さあ、玉水は完全に姫君の元を去る準備を整えたようです。

 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、玉水姫君に渡す箱の中には、カミングアウトした手紙と、その下に内蓋があります。
 玉水がいなくなったら、まず、この箱を開けて手紙を読めという事です。
 そして、内蓋老後に開けろと言うわけです。

 さあ、物語もいよいよ佳境に入ってまいりました!
 玉水と姫君の運命はいかに???

次回の予習

姫君玉水言いつけを守ってのことは秘密にしているようです。
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三つ目コーナー

はい、この箱をどうぞ。

お、別れのあいさつに来たのか?

何言ってるの?

検便の箱だよ。

 

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