うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

江戸文学の楽しさを皆さんにお伝えできれば♪

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。

敦盛(あつもり) ~織田信長の愛唱歌~

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。

今日こそは『好色一代女』のお話を紹介しようと思ったのですが、間に合いそうもなかったので、前に別の所で書いたネタを焼き直してお送りします(笑)

織田信長『敦盛』を舞うシーン、ドラマや映画でよくありますよね。

でも、どれも長唄詩吟みたいな節回しで、なんか暗くて信長のイメージと合わないなあと思っていました。

こんなの。


織田信長『敦盛』を舞ったということが書かれているのは、信長公記』巻首尾張天台宗の僧・天沢が、甲斐武田信玄信長のことについて聞かれる場面です。

【原文】

[信玄]「其の外数寄は何か有」と御尋侯。
[天沢]「こうた数寄にて侯」と申上侯へば、
[信玄]「幸若大夫来侯か」と被仰侯間、
[天沢]「清洲の町人に友閑と申す者、細々召しよせ、まはせられ侯。敦盛を一番より外は御舞ひ候はず候。『人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如く也』。是れを口付けて御舞侯。」
※『史籍集覧19』より
 史籍集覧. 19 - 国立国会図書館デジタルコレクション  
74-75ページ


【現代語訳】

信玄「ほかに信長が好きなのはあるのか?」
天沢「小唄がお好きです」
信玄「幸若大夫が来るのか?」
天沢「清洲の町人の友閑を呼んで舞わせます。信長様敦盛『人間五十年~』の一節だけ口ずさんでお舞いになります」

ありゃ、長唄とかじゃなくて、どうも幸若舞敦盛みたいですね。

どんなんだろうと検索したら、ありましたよ♪

幸若舞の敦盛(大江天満神社[福岡県みやま市]で復元上演されたもの)】


ありゃ、この時代のものにしては結構、アップテンポやん!
これなら信長が好んだのも納得できます♪

「人間五十年~」は有名なので、意味とかは各自検索で(笑)

信長公記の記述は更にこう続きます。

【原文】

[天沢]「又、小うたを数寄て、うたはせられ侯」と申し侯へば、
[信玄]「いな物をすかれ侯」と信玄仰せられ侯。
[信玄]「それは、いか様の歌ぞ」と仰せられ侯。
[天沢]「『死のふは一定、しのび草には何をしよぞ。一定かなりをこすよの』。是れにて御座侯」と申侯へば、


【現代語訳】

天沢「信長様小唄もお好きでお唄いになります」
信玄「これは変なものを好むのだな。どんな唄じゃ?」
天沢「『死のふは一定~』という唄でございます。」

小唄も好んだみたいですが、「死のふは一定~」に関しては、有名な唄なのでこれまた意味とかは各自検索してください(笑)

それよりも、あまり有名ではない小唄を紹介しましょう♪

それは『犬つれづれ』(承応二年[1653年]刊)という書に出てくるのですが、

【原文】

一品左相府・平の信長公、常に御気色よき時は、『人の若衆を盗むよりしては、首を取らりよと覚悟した』と、小唄に作りて歌ひ給ひし」と、その頃きゝし人の語りはんべり。信長下にありて、もしも己れがあやまりありなば、聞くたびに恐ろしかりぬべし。
※『江戸時代文芸資料4』より
江戸時代文芸資料. 第4 たきつけ草, もえくゐ, けしずみ - 国立国会図書館デジタルコレクション 112ページ


【現代語訳】

織田信長は、いつもご機嫌がよい時は、『人の若衆を寝取ったからには、首を討たれても仕方がないと覚悟した』という一節を小唄にしてお歌いになってました』と、その当時に聞いた人が言っていました。信長公の臣下にいて、もしも自分が過ちを犯していたら、この小唄を聞くたびに恐ろしかったことでしょう。

「一品左相府」信長官位です。信長「右大臣」なので、「右相府」の誤りでしょう。
信長平氏を名乗っていたので、「平の信長公」というわけですね。

はい、男色小唄でございますな(笑)

ちなみに、松田修『日本の異端文学』には、

他人(ひと)の若衆を盗むよりしては命とらりよと覚悟した

と微妙に違う形で紹介されていますが、出典が明記されていません。

また、芥川龍之介『おしの』という作品では、なぜか主人公の夫が歌ったとしてこの歌が出てきます。→ 図書カード:おしの

えっと、ものすっごく簡単に言うと、

信長「ワシの蘭丸に手を出したら首撥ねるからね」

ってことですwww

小唄といっても、江戸のような三味線を弾いて芸者さんが歌うようなのじゃなかったでしょうし、どんなんだろうと検索したら、ありました♪

【中世の小歌】 → 歌唱編|文化デジタルライブラリー

うは、長唄に近いですねw
また、信長のイメージに合わなくなった(笑)

信長は声が高かったらしいから、やっぱり江戸小唄の方がイメージに合います(笑)

まあ、ジャンルとしての小唄じゃなくて、鼻歌的なちょっとした歌って程度の意味ということにしときましょうよ。

では、最後に、誰かが勝手にこの小唄を再現したのを聞きながらお別れしましょう(笑)

◆北見花芽のほしい物リスト

www.amazon.co.jp

◆オススメ書籍

江戸の男色文学を紹介するエッセーなどが掲載されています!
男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

 

はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪

web拍手 by FC2

◆よろしければ はてブ もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)