今日こそは『好色一代女』の(ry
妖怪物で何か面白いもはないかと、いろいろ見ていると、桜川慈悲成(さくらがわじひなり)作・歌川豊国(うたがわ とよくに)画の作品をちょこちょこ見かけます。
その中で、『ばけものつわもの二日替 (ふつかがわり)』(寛政二年[1790]刊)という作品に、ちょっと気になった絵があったので、紹介したいと思います。
はい、前に取り上げた、にわかとちょろけんに関係する絵です。 kihiminhamame.hatenablog.com
『ばけものつわもの二日替』は、臆病者の時太郎(坂田金時の息子)と綱次郎(渡辺綱の息子)が化物退治をする話です。
坂田金時や渡辺綱については、「頼光四天王」とかで各自検索ね!(笑)
※『ばけものつわもの二日替』は国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 二日替 : 2巻
7ページ目と8ページ目です。
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まず、綱次郎が厚紙で団十郎の目を作って貼り付け、化物を見ないようにしている場面です。
これはまさしく、にわか面と同様の半面・目鬘ですね。
(着物に名前の頭文字がちゃんと描いてありますね)
やってきた化物は見越入道と(カバン?がカワイイw)
息子の一つ目小僧です。
化物は綱次郎が恐れないので、怖い顔だとすごすごと帰ります。
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一方、時太郎は張り子の大頭を被って顔を隠します。
これはちょろけんと同様の大きな顔の被り物です。
(これまた着物に名前の頭文字がちゃんと描いてありますね)
やってきたのは見越入道の妻のお六(ろくろ首)と出入りの太鼓医者ぶらりひよん(ぬらりひょん)、お六の甥の河太郎(カッパ)たちです。
化物たちは恐れもしない時太郎を見て、怖い顔だと逃げ帰ります。
私は未読なのですが、この本に翻刻や注がついて収録されているみたいなので、興味のある方はどうぞ。
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ちなみに、同じ桜川慈悲成作・歌川豊国画の『鎌倉頓多意気(かまくらとんだいき、「年代記」「三代記」のもじり?)』(寛政六[1794]年刊)にも、同じような大頭の張り子が出てきます。
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 鎌倉頓多意気 : 2巻
6ページ目です。
これまたちなみに、『鎌倉頓多意気』は、源頼朝が人々に「頭が大きい」と言われるので、「ワシの頭が大きいのではない、皆の頭が小さいのだ。取り急ぎ、皆の頭を大きくせよ」と命じて、家来たちが大頭の張り子を求める話です。
こちらのサイトで翻刻が公開されています。
鎌倉頓多意気|お江戸の鎌倉|材木座書房
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これらがにわかやちょろけんのような芸能とどう関係しているかは何ともいえませんが、要するに、にわか面のような半面・目鬘や、ちょろけんのような大頭の被り物の趣向が、当時、好まれていたのは間違いなさそうです。
また何か見つけたら、しつこく報告します(笑)
というか、このコンビの作品でこれより更に気になるのがあったりするのですが、それは次回以降のお楽しみということで♪
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では、最後にちょっとだけ、くずし字タイム(笑)
一つ目小僧のセリフからです。
次の四角で囲ったのはこれまでに出てきた字ですが、覚えてますか?
はい、答え。
「に」は「尓」、「か」は「可」、「わ」は「王」、「る」は「留」、「ら」は「良」のくずし字です。
で、今日、覚えて帰っていただきたいのは、次の四角で囲った文字です。
読めますか?
これは、「げ」と「ほ」です。
「け」は「介」、「ほ」は「本」のくずし字です。
とつさん
にんげんが
こわいかほ
している
からきみ
がわるい
父っさん、人間が怖い顔しているから気味が悪い。
これは、訳さなくてもわかりますね(笑)