一寿斎芳員画『百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)』(安政五[1858]年刊)
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 百種怪談妖物双六
というわけで、新年の双六企画で出なかったコマの妖怪をちょこちょこ紹介していくシリーズも始めます♪
■丁鳴原(たんぽはら)の腹鼓(はらつゞみ)■
どこからともなく聞こえてくる鼓の音は、タヌキが腹を膨らませて打っている腹鼓だろう、というやつですね♪
今と違ってこの頃はさえぎるような大きな建物もなく、夜も騒がしくなかったでしょうから、目では全く確認できないようなかなり遠くの音も、風に乗って聞こえてきたのでしょうね。
全国各地にこのような伝承はあるようで、有名どころでは「本所[ほんじょ][東京都墨田区]七不思議」の一つに「狸囃子」があり、童謡の「証城寺の狸囃子」もこの手の伝承を元に作られた歌です。
歌のように、この絵でもちゃんと満月の下で腹鼓を打っていますね。
描かれている花は、紫が桔梗[ききょう]で、黄色が女郎花[おみなえし]でしょうかね。
十五夜のお月様なのでしょうかね、どちらの花も「秋の七草」です。
おや、お月様に何か文字が書かれていますね?
冒頭の文字がかすれてしまっていますが、
はらの◆皮(かは)◆そんじて◆一ト廻(まは)り◆やすみ
と書かれています。
調子に乗って叩きすぎたのか、腹の皮が破れて一回休みということです(笑)
そうです、このコマは一回休みのコマなのです!
新年の双六企画でこのコマに当たったら面白かったのにね!w
ちなみに、四角内の双六の目は、
二 九尾(きうび)の狐(きつね)
三 茂林寺(もりんじ)
四 やまびこ
五 見越入道(みこしにうだう)
と書かれています。
さて、皆さんは「たんぽ原」ってどこ?ってお思いでしょう。
「たんぽ原」はおそらく実在の地名ではないと思われます。
「たんぽ」は綿などを布で包んで球状にして、棒を取り付けたりしたものです。
墨をつけてポンポンと叩いて拓本をとったり、刀をポンポンと叩いて掃除するときなどに使います。
つまりこの「ポンポン」という動作から腹鼓の音を連想して付けた架空の地名でしょう。
、、、。
え?これじゃあ、ちょっと説得力に欠けるって?
じゃあ、タヌキの膨らんだお腹がたんぽの形みたいだから!
、、、。
だめ?
じゃあ、今の「ポンポン」とかは忘れてください(笑)
「たんぽ」は漢字で「打包」と書きます。
更に漢字を変換すると、「包(つつみ)」→「鼓(つづみ)」、「原」→「腹」、従って「たんぽ原」→「打鼓腹」となります。
つまり、「たんぽ原」は「腹鼓を打つ」と言う意味でシャレてつけられた架空の地名でしょう。
「たんぽ」は「丁鳴」という字が書かれていますが、これは腹鼓が「数丁[一丁(町)は約109メートル]もの距離まで鳴り響く」という意味で当てられた、完全な当て字でしょうね。
うひゃあ、もう一つ二つ紹介する予定だったのですが、この一枚の絵の説明だけにちょっと書きすぎました(笑)
でも、『百種怪談妖物双六』、ここまでしっかり解説してる所、なかなかお目にかかれないと思いますよ!
なので、このブログをお目にされている皆さんはラッキーですw
ただ、これだけ書くのに相当頭を抱えてウンウン唸[うな]りながら考えている北見がいるので、皆さんの心の中で少しだけでも労[ねぎら]ってやってくださいw
※東京都立図書館の画像の方が見やすいと思います。
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