今日は、双六から九尾の狐と分福茶釡を紹介するよ!
歌川芳員画『百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)』(安政五[1858]年刊)
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 百種怪談妖物双六
金毛九尾(きんもうきうび)の狐(きつね)
四 ひとつめ
五 おいわ
六 上り
九尾の狐は、中国からやってきた妖怪で、日本では美女の玉藻前[たまものまえ]に化け、鳥羽上皇を惑わせますが、正体がバレて退治されます。
しかし、九尾の狐の亡骸は殺生石[せっしょうせき]へと変化し、今でも毒を吹き出し続けています。
え?「今でも」ってどういうことかって?
だって、殺生石は現在でも、ちゃんと栃木県那須町にありますから!
ここで「金毛九尾の狐」とされているように、九尾の狐の毛は金色と言われていたようです。
茂林寺(もりんじ)の釜(かま)
一 九尾(きうび)の狐(きつね) 四 れん木ぼう
五 上り 六 いぬがみ
狐とセットになるのは、やはり狸ですかね。
九尾の狐と同じくらい有名な、分福茶釡(文福茶釡)ですね。
同じ化けでもこちらは美女ではなく、茶釡です(笑)
まさか、「おカマ」の意味が込められている、というわけでもなさそうですね(笑)
おとぎ話では、茶釡に化けたものの元に戻れなくなった狸が、見世物をして成功するお話ですが、元になった話は少し違うようです。
ここでは双六の絵の元になったと思われる鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』の記述から紹介します。
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 百鬼夜行拾遺 3巻. [2]
12ページ目です。
【翻刻】
茂林寺釜(もりんじのかま)
上州(じやうしう)茂林寺(もりんじ)に
狸(たぬき)あり守霍(しゆくはく)と
いへる僧(そう)と化(け)して
寺(てら)に居(お)る事七代(だひ)
守霍(しゆくはく)つねに
茶(ちや)を◆たしみて
茶(ちや)をわかせばたぎる事
六七日にしてやまず人
その釜を名(な)づけて文福(ぶんぶく)と云(いふ)
蓋(けだし)文武火(ぶんぶくは)のあやまり也文火(ぶんくは)とは縵火(ぬるきひ)也
武火(ぶくは)とは活火(つよきひ)也
【原文】
茂林寺釜(もりんじのかま)
上州(じやうしう)茂林寺(もりんじ)に狸(たぬき)有り。
守霍(しゆくはく)と言へる僧(そう)と化(け)して、寺(てら)に居(お)る事、七代(しちだひ)。
守霍(しゆくはく)常に茶(ちや)を嗜(たしな)みて、茶(ちや)を沸かせば滾(たぎ)る事、六・七日にして止まず。
人、その釜を名(な)付けて文福(ぶんぶく)と云ふ。
蓋(けだ)し、文武火(ぶんぶくは)の誤り也。
文火(ぶんくは)とは縵火(ぬるきひ)也。
武火(ぶくは)とは活火(つよきひ)也。
【ざっくり現代語訳】
茂林寺の釜
上野国(こうずけのくに)[群馬県]の茂林寺という寺に狸がいました。
狸は守鶴(しゅかく)という僧に化けて、人間で言うと七代もの間、寺にいました。
守鶴はお茶が好きで[茶道をたしなんで]、守鶴が使う茶釜は、一度茶を沸かせば、六・七日もの間、沸いたままだったそうです。
人々はその茶釜を「文福」と名づけました。
おそらく、「文福」は「文武火」の間違いでしょう。
「文火」は「弱火」、「武火」は「強火」のことを言います。
くずし字クイズにでもしようかと思ったのですが、あまりに文字がカスカスなのでやめておきました(笑)
※状態が良い本の画像は下記のリンクからご覧ください。
ARC古典籍ポータルデータベース 1280画面
絵では狸が茶釜に化けていますが、本文中では守鶴が妖術を使って沸かした茶釜を文福と言っています。
ちなみに、守鶴は最終的には、昼寝で油断して、下の絵のような姿になっているのを見られて、寺を去ったそうです(笑)
月岡芳年『新形三十六怪撰』より
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 新形三十六怪撰 茂林寺の文福茶釜
茂林寺には今でもこの茶釡が伝わっているそうです♪
あれ、狸は腹鼓でもう出たのに、またもやキャラかぶりですねw
kihiminhamame.hatenablog.com
双六の作者さんはキャラかぶりなど気にせずに好きな妖怪を描くという作風のようでw
この二人もキャラかぶりだね!
このままいけば、北見版の妖怪双六が作れそうですねw
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