『化物昼寝鼾』の途中だけど、なんか『カチカチ山』が気になって読みたくなってきた!
というわけで、『カチカチ山』の絵本で、現存する最も古いと思われる、江戸前期の赤本の『むじなの敵討ち』という作品が、国会図書館デジタルコレクションにあったので、読んでみる事にします♪
『むじなの敵討ち』は、その筋では有名な作品らしいので、たぶん翻刻とか研究もいっぱいあるだろうから、ここで取り上げてもしょうがないかなあ、とも思ったのですが、せっかく読んだので、もったいないので(笑)
国立国会図書館デジタルコレクション - むぢなのかたきうち
※この記事では国会国立図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
【原文】
本年 四ツ切り
狢《むぢな》の敵討ち 兎の知略《ちりく》
【ざっくり現代語訳】
本年出版の四つ切り本
ムジナの敵討ち
ウサギの知恵
【解説】
表紙が赤いから赤本なのですな!
珍しく表紙の字も残ってるという!
「四ツ切」は本のサイズを表しています。
「ムジナ」はここではタヌキのことです。
ちゃんと「元禄○年」とか書かずに、「本年」としか書いてないので、翌年まで売れ残っても、新刊のように見えますよね(笑)
【原文】
「狢《むぢな》の敵討ち」
昔/\、爺婆《ぢゝばゝ》夫婦暮らしせし百姓有り。
有る時、爺は山へ畑打ちに行きける間、婆 昼飯《ひるいゝ》に団子《だご》を拵《こしら》へて持ち行きけるに、爺殊の外喜び、彼の団子を食いけるに、爺 箸《はし》にて挟ミけるとて少しの穴の内ゑ落とせり。
爺心に思ふ様《やう》、
「朝夕骨折りて耕作を致しけるも、この菩薩[「米」のこと]故なれば、
【ざっくり現代語訳】
「ムジナ[タヌキ]の敵討ち」
昔々、ある所に農民の爺と婆がいました。
ある時、爺が山へ畑仕事に行ったので、婆は団子を作って爺に持って行きました。
爺はとても喜んで団子を食べたのですが、箸でつまみそこねて、
お団子 ころりん すっとんとん と、小さな穴に落ちてしまいました。
爺は、
「このお米を食べるために、朝晩苦労して耕作しているのだから、
【解説】
絵本なのに、いきなり文字だらけなのですが(笑)、次のページからちゃんと絵が出てきます♪
【原文】
徒《あだ》にはせじ」とて、彼の団子の落ちたる穴を掘り返して行く程に、三間《さんげん》程掘りて行けバ、大きなる古狢《ふるむぢな》を掘り出《いだ》しける。
やがて捕らへて四ツ足を括《くく》して婆に渡して、宿へ遣ハしける。
婆、狢を
□婆、昼飯《ひるめし》の団子《だんご》持て来る
□爺、団子食いながら落とす
【ざっくり現代語訳】
ムダにしてはならぬ!」と思い、
団子が落ちた穴を三間[約1.65m]ぐらい掘り進めると、中から大きな古ダヌキが出てきました。
爺はすぐにタヌキを捕まえ、四本の足を縛り、婆に渡して家に持って帰らせました。
婆はタヌキを
□婆、昼飯の団子を持って来る
□爺、団子を食っていたが、穴に落とす
【解説】
穴はタヌキの巣穴だったのですね。
それにしても爺と婆、ワイルドな姿です!
婆なんかオ○パイ丸出しですし(笑)
【原文】
持ちて帰り、天井に繋ぎ置きて、「晩の飯拵《めしごしら》へせん」とて粟《あわ》を取り出して臼《うす》にて搗《つ》きける。
さて、彼の狢、申しけるハ、「その粟、我等《われら》搗き申さん」と申しける。
婆、「さあらバ搗け」とて、縛《いまし》めを解きける。
□爺、狸を縛る
□婆、縄を持ちて行く
【ざっくり現代語訳】
持って帰り、天井にぶらさげて、「晩御飯の用意をしなきゃ」と、粟を取り出して臼でつき始めました。
タヌキはその様子を見て、「婆様、その粟は私がつきましょう」と言いました。
婆は、「そう言うなら、ついておくれ」と、言って縄を解きました。
□爺、狸を縛る
□婆、縄を持ってくる
【解説】
なんか、絵と本文がズレ始めてますが、細かいところは気にしてはいけませんね(笑)
【原文】
其の時、狢、申す様《やう》、
「我、搗き溢《こぼ》したらバ、其方《そなた》拾い給へ。
婆、搗き溢し給ふをバ、某《それがし》拾い申すべし。」
と約束し、ワざと搗き溢して、婆に拾ハせけれバ、婆、俯《うつむ》きにて拾《ひら》う所を、手杵《てぎね》にて搗き
□狸、謀《たばか》る
□婆、謀られる
【ざっくり現代語訳】
その際、タヌキは、
「私がついてこぼした粟は、婆様が拾ってくだされ。
婆様がついてこぼした粟は、私が拾いますから。」
と約束させました。
タヌキはわざとつきこぼして、婆に拾わせ、婆が下を向いて拾う隙を見て、杵で婆をつき
□狸、だます
□婆、だまされる
【解説】
完全に前のページの文と一致する絵ですが、気にしてはなりませぬ。
【原文】
殺し、やがて夕飯《ゆふめし》の汁に炊きて、婆の衾《ふすま》を被り、臥《ふ》せりて居けり。
爺、山より帰り、「飯を食わん」と言ふければ、狢の化け婆、寝て居て申す様、
「狢汁を煮て置き候。そこにて食い給へ。
我等は、血虫《ちむし》[「地虫」?]起こりた
□狸、婆を搗き殺す
□婆、粟を拾う
【ざっくり現代語訳】
殺しました。
すぐに夕飯の汁に婆を入れて炊き、タヌキは婆の布団をかぶってもぐりました。
爺が山から帰ってきて、「さあ、飯じゃ、飯じゃ!」と言うので、タヌキが化けた婆は、
「タヌキ汁を作っておいたので、そこで食べなされ。ワシはちと体調が悪く
□狸、婆をつき殺す
□婆、粟を拾う
【解説】
うーん、ここもまだ絵と文がズレてますねえ。。。
よく読んだら、タヌキは婆に化けたわけじゃなく、布団をかぶってごまかしてるだけなんですよねえ。
【原文】
れば、起き申す事ならぬ」と言ふて、
爺にとくと食わせ済まして[「澄まして」?]、踊り出で、駆け出て、大音《だいをん》にて申す様ハ、
「婆喰らいの爺め。かま
□爺、狢汁を食う
【ざっくり現代語訳】
なったので、起きられませぬ」と言って布団から出ず、爺にとっとと飯を食わせました。
爺が食べたのを確認すると、タヌキは布団から飛び出て駆け出し、大声で言いました。
「や~い、爺は婆を食ってやんの! かま
□爺、タヌキ汁を食う
【解説】
ようやく、文と絵が一致しました(笑)
実は、現存しているのはここまでで、この先、どうなるかわかりません!!!
まあ、このあと、ウサギが出てきてタヌキに仕返ししてくれるのでしょうけど(笑)
よく知られている『カチカチ山』の話と多少の違いはありますが、大筋はこの時から変わってないようです。
というか、婆汁にしたのはひどいけど、タヌキは巣穴にいただけで、何の悪さもしてないのに、食用に捕まえられただけなんですよね。
だから、ある意味正当防衛、、、というわけでもないですかね(笑)
そして、突然ですが、ここでクイズです!
最後が「かま」で終わっていますが、このあとどういう言葉が続いているか、皆さん推理してください!
私のせいじゃないのですが、尻切れトンボで終わって何だか申し訳ないので、次回はちゃんと最後まで残っている『カチカチ山』の絵本を紹介したいと思います!
そしてクイズの答えも次回なのです!
ねえ、ねえ、三つ目の絵本はないの?
あったとしても取り上げないから安心しな。
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