それでは、『カチカチ山』の絵本を読んで行きましょう。
本当は、江戸時代の絵本を紹介したかったのですが、ここで使っても大丈夫なのが見当たらなかったので、明治時代の絵本からです。
明治の絵本なら、さすがにくずし字じゃないだろうから、僕でも読めるね!
残念! 明治時代の絵本でも、まだくずし字が使われてるから!
国立国会図書館デジタルコレクション - [お伽噺]. かちかち山
【原文】
ある田舎に爺《ぢゞい》・婆《ばゞあ》有り。
爺わ、ある日、狸を捕まい来たりしに、狸
【ざっくり現代語訳】
とある田舎に、ジジイとババアがいました。
ある日、ジジイはタヌキを捕まえてきました。
【解説】
えと、いきなりインパクトのある絵から始まりますが、はい、婆がタヌキの金玉で押し殺されているシーンです(笑)
タヌキの金玉は色々なことに使えるといいますが、殺傷能力まであったとは!!!
kihiminhamame.hatenablog.com
明治時代の『カチカチ山』の絵本は色んな種類が残ってますが、このシーンのインパクトが強かったので、この絵本を取り上げることにしたのでした♪
何の説明もなく、いきなりタヌキは捕まっていますが、子ども向けの短い絵本なので、かなり筋が省略されています。
ちなみに、江戸時代の絵本では、
爺「こいつはオレを化かしょろうとしたから、捕らえてタヌキ汁にして食いましょう。」
と書かれています。
124.33.215.236
杵と臼が描かれているので、ここでも婆の夕食の準備の手伝いをするフリをして、タヌキは縄を解かせたのでしょうね。
それにしても、助詞の「は」「を」が、発音そのままの「わ」「お」で書かれているので読みにくいです!
「ジジイ」「バアア」と今ではひどい呼ばれ方をしていますが、当時は普通にそういう言い方をしていたのでしょうね。
【原文】
ハ金玉にて婆を圧《お》し殺しける。
爺、山より帰り来たりしに、狸は婆に化けて爺に飯を食わせて仕舞いて、
「婆お食つた爺いや。縁の下の骨を見ろ」
と、言ゝつゝ逃げ去りける故、爺わ、
【ざっくり現代語訳】
タヌキは、金玉でババアを圧《お》し殺しました。
ジジイが山から帰ってきたので、タヌキはババアに化けて、ジジイに飯を食わせると、
「ババアを食ったジジイや~い! 縁の下の骨を見てみろ!」
と言いながら逃げていきました。
ジジイが
【解説】
△と○で、文章がどこにつながるか示しています。
梅の屏風の前で食べる爺、農民にしては裕福そうです。
この絵本でも、しっかりタヌキは爺に婆を食わせています。
左端に鍋があるので、やはり婆汁なのでしょうね。
左上段、縁の下には哀れにも婆の骨があります。
【原文】
縁の下を見れバ、可哀想に、婆ハ食ひ殺されて居たる。
爺の悲しみ、大方ならず。
折から、兎来たりて、これを聞ゝ、気の毒に思い、
「婆の敵を討たん」と山に行き、芝を背負《しよ》わせて、これに
【ざっくり現代語訳】
縁の下を見ると、かわいそうに、食用に解体されてしまった、ババアの骨がありました。
ジジイの悲しみは言葉で表せないほどでした。
ちょうどその時、ウサギがやって来て、ババアがタヌキに殺されたことを聞きました。
ウサギは気の毒に思い、「ババアの敵を討ってやる!」と、手始めに山に行き、タヌキに薪《まき》《たきぎ》にする木を背負わせ、これに
【解説】
最初から微妙に絵と本文にズレがありますが、まあ、『むじなの敵討ち』に比べたら、これくらいは許容範囲ですかね(笑)
肝心な『カチカチ山』の名が出てくるくだりまで省略されてしまっています。
これまたちなみに、江戸時代の絵本では、
ウサギ、火打ち鎌にて火を打つ。カチカチカチ。
タヌキ「カチカチと音のするは何でござるべ?」
ウサギ「カチカチ山の風の音。」
と書かれています。
124.33.215.236
ウサギの手は火打石を打っているのでしょうか?
ちょっと潰れていてよくわかりません。
【原文】
火を点《つ》けて、火傷《やけど》をさせて、その所へ唐辛子味噌をつけて、悩ましけり。
ある日、木にて船を作り居たるに、狸、来たりける
【ざっくり現代語訳】
火をつけ、火傷をさせ、さらにその傷に唐辛子味噌をつけて、苦しめました。
ある日、ウサギが木で船を作っている所にタヌキがやってきました。
【解説】
すぐにトドメをさせばいいのに、死なない程度に火傷をさせて、その傷に唐辛子味噌を塗り込むなんて、ウサギはドSですね(笑)
そんな酷い目に遭わされたのに、懲りずにウサギにまた会いに行くタヌキもドMですよね(笑)
ま、まさか、『カチカチ山』ってSM小説???(笑)
なんか、唐辛子味噌を塗られんとしてるタヌキの顔が妙に嬉しそうですし、木の船を作るウサギを見る目も優しげですし、タヌキさんはウサギさんのことが好きだったのでしょうか?(笑)
男同士だから男色小説でもありますか???(笑)
【原文】
故、土にて船を作りけるに、忽《たちまち》ち出来たる故、兎と狸わそれを海に降ろして、漕ぎ行きしに、狸の船わ土なる故、水に
【ざっくり現代語訳】
そこで、ウサギがタヌキのために土で船を作ると、すぐに出来たので、ウサギとタヌキは船を海に降ろして、出航しました。
タヌキの船は土なので、海水に
【解説】
ウサギの凶器は船の艪《ろ》のようですね。
「好きな人に殺されるのなら本望」とでもいう感じの穏やかな表情で、タヌキは海に落ちています(笑)
【原文】
濡れて崩れける故、狸わ海へ落ちけるを兎は狸を打ち殺しける。
めでたし/\/\。
明治廿一年九(五×)月十日印刷
同 廿一年九(五×)月十七日出版
著作印刷兼発行者
日本橋区吉川町五番地
堤 吉兵衛
【ざっくり現代語訳】
濡れて崩れてしまいました。
そして、タヌキが海に落ちた所を、ウサギは打ち殺したのでした。
めでたし、めでたし。
【解説】
タヌキとウサギのゆがんだ愛情を描いた、SM男色小説、これにて終了です。
あ、ほんとは純粋に子ども向けの絵本ですので、真に受けないでくださいね(笑)
ご丁寧にウサギが裃[かみしも]を着て挨拶している絵で終わりなのですね。
それにしても、堤吉兵衛という方、作・印刷・出版、すべて一人でこなしてらっしゃったのですね!
「明治廿一年」は「明治二十一年」のことです。
五を消して九に書き直してありますが、諸事情で出版が延びたのか、単に描き間違えただけなのか???
江戸時代の『カチカチ山』の絵本としては、あと、『昔々御存知の兎』がネット上では見れますのでご参考まで。
124.33.215.236
ねえねえ、僕のブログの名前は「三つ目のトリプルアイ通信」っていうのはどう?
なんだか、カッコよさげだけど、意味わかんないよ。
なに勝手に話を進めてんだよ! このブログは終わんないよ! プンスカ!
◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪
◆オススメ書籍
西鶴作品が現代語でわかりやすく読めます♪ 私もちょっとだけ書いてます♪
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)