狂言「鈍根草」の続きだよ!
一ページごとに紹介してるから、文章の途中でも容赦なくぶった切られるよ!
『狂言記』巻三の三
国立国会図書館デジタルコレクション - 狂言記 5巻. [3]
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
【翻刻】
ぢもそれにておがめ ▲ はあ ▲との やい。それ
かしハ。今夜《こよひ》ハお通夜《つうや》を申ほどに。なんちは
それにおきておつて鳥かうたふたらおこ
しませい ▲くわしや 畏て御ざる申とのさま ▲との なん
ぢや ▲くわしや しゆくぼうから。重《ちう》の内が。参りまし
た ▲との やい。それかしか。しのびてまいりたを
ばなにとして。御ぞんじあるそ。御使ハ ▲くわしや
いや。をいてかへられまして御ざる ▲との ど
りや/\。さむいほとに。一つのまふぞ ▲くわしや
あがりませい ▲との さかなハ。なんぢや ▲くわしや ミやう
がと。たてとが御さりまする ▲との どりやその
たてをおこせい ▲くわしや はあ ▲との なんちも。そ
れてのめ ▲くわしや 畏て御ざる ▲との やい/\おの
れハさかなになにを。くうたぞ ▲くわしや ミやうか
をたべました ▲との にくいやつの。いとゞどんな
やつめが。ミやうがをくい。いよ/\どんになつ
て。つかはるゝ事て。あるまい ▲くわしや はあ
ミやうがをたべますれバ。どんになりまするか
ぞんしませなんで御ざる ▲との しらずハ。かた
【原文】※漢字や送り仮名を補足
汝《なんぢ》もそれにて拝め。」
▲[「冠者」]「はあ。」
▲殿「やい、某《それがし》は、今夜《こよひ》はお通夜《つうや》を申す程に、汝はそれに起きておつて、鳥が歌ふたら起こしませい。」
▲冠者「畏まりて御座る。申し、殿様。」
▲殿「なんぢや。」
▲冠者「宿坊から、重《ぢう》の内が参りました。」
▲殿「やい、某が忍びて参りたをば、何として御存知あるぞ。御使いハ。」
▲冠者「いや、置いて帰られまして御座る。」
▲殿「どりや/\、寒い程に、一つ飲まふぞ。
▲冠者「上がりませい。」
▲殿「肴《さかな》は何ぢや。」
▲冠者「茗荷《みやうが》と蓼《たで》とが御座りまする。」
▲殿「どりや、その蓼を遣《おこ》せい。」
▲冠者「はあ。」
▲殿「汝もそれで飲め。」
▲冠者「畏まりて御座る。」
▲殿「やい/\、己《おのれ》ハ肴に何を食うたぞ。」
▲冠者「茗荷を食べました。」
▲殿「憎い奴の。いとゞ鈍《どん》な奴めが、茗荷を食い、いよ/\鈍になって、使はるゝ事であるまい。」
▲冠者「はあ、茗荷を食べますれバ、鈍になりまするか。
存知ませなんで御座る。」
▲殿「知らずバ語
【ざっくり現代語訳】
▲殿「~お前もそこで拝みなさい。」
▲冠者「ははあ。」
▲殿「それでだ、ワシは今夜は一晩中ここに籠《こも》ってお祈りするので、お前はずっと起きていて、朝になって鳥が鳴き出したら起こしなさい。」
▲冠者「かしこまりました。ところで、お殿様、」
▲殿「なんじゃ?」
▲冠者「宿坊[参拝者が泊まる施設]から、差し入れがございます。」
▲殿「え?ワシはお忍びで参ったのに、なんでご存知なんじゃろうか?お使いの方はどうなされた。」
▲冠者「はい、差し入れを置いて帰られました。」
▲殿「そうか、そうか、寒いから一杯飲もうぞ♪」
▲冠者「どうぞ、お召し上がり下さいませ。」
▲殿「酒の肴《さかな》は何じゃ?」
▲冠者「ミョウガとタデがございます。」
▲殿「どれどれ、そのタデをよこしなさい。」
▲冠者「ははあ。」
▲殿「お前も飲め飲め。」
▲冠者「かしこまりました。」
▲殿「おい、おい、お前は肴に何を食っておる!」
▲冠者「ミョウガを食べました。」
▲殿「何やってんだよ! ただでさえお前は鈍《どん》[間抜け]なヤツなのに、ミョウガを食べたらますます鈍になるから、もう使い物にならんわ!」
▲冠者「ははあ、ミョウガを食べますと、鈍になるのでしょうか?」
▲殿「知らないのなら語
【解説】
【翻刻】の赤字の部分が前回のくずし字クイズの答えです♪
殿は夜通しお祈りすると言いながらしっかり寝て、冠者に寝ずにお祈りさせようというね、結局、代参りと変わらないじゃないかという(笑)
ミョウガを食べた冠者を殿は罵《ののし》りますが、お忍びなのに差し入れが来たのは、たぶん冠者が手配していたのでしょうね。
というか、仏前で酒盛りして、バチが当たらないんですかね?(笑)
さてさて、どうして殿は「タデ」を選んだのか?
次回に続きます。
それにしても、特にこのページのくずし字、似た字が多くてわかりにくいったらありゃしない!
ややこしい文字を抜き出して並べてみました。
上から順に左から、
ち[知]・る[留]・御・か[可]
た[太]・夜・お[於]・れ[礼]・な[那]
御・つ[徒]
事・る[留]・な[奈]
う[宇]・ら[良]・と[止]・し[之]・く[久]・[踊り字]・て[天]
は[盤]・そ[曽]・と[止]・今
です。
パッと見、同じ字に見えますが、別の字なんですよねえ。
こんな風に一文字だけ抜き出されたら、私も判別が困難です。
くずし字を読むときは、前後の文脈も考慮しなけりゃならんわけなのです。
つまり、くずし字を読むには、古文を読む知識もなきゃいけないというね。
さりげなく、北見花芽の奴、古文が読めることを自慢してやがる。
次回予告兼くずし字クイズ
さて、殿はミョウガを食べると鈍になる理由を冠者に語って聞かせるわけですが。。。
ヒントっ!
最初の字、さっきややこしい例にあげた「つ[徒]・御」とよく似ていますが、どちらでもありません(笑)
二番目に出てきた人物名は、こないだも出てきましたよね♪
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