狂言「鈍根草」の続きだよ!
ミョウガが美味しい季節になってきたよね♪
『狂言記』巻三の三
国立国会図書館デジタルコレクション - 狂言記 5巻. [3]
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
【翻刻】
りてきかせう。これへよつてきゝおろう
▲くわしや は ▲との さても。しやくそんの御弟子《でし》に
しうり。はんどくといふ人あり。此人くどん
第《たい》一の。人にてあつた。わが名《な》だに。おほへいで
つえのさきに。かいてあるきそなたの名
はと。たづぬれバ。これよといふて。さした
すほとなる。ぐどんな人にてあつた。しかれ
とも。人間のならひにて。つゐにハごどうを
なされた。土中に。つきこめてあれば。塚《つか》の
うへよりも。ミやうが一ほんはへて有。すなハち
これをぐどん第一の。つかよりでたれバ。ど
ごんさうと。つけられてある。又しやくそん
の御弟子にあなんそんじやと。申するハ。ち
ゑ第一の。佛にてあつた。しやか如来《によらい》。りやう
じゆせんにて四十余年の御説法《こせつほう》を一
字《じ》一点《てん》も。残《のこ》さずにうけとり。なされたる。
第一にてあつた。是もつゐにハ。ごどうを
なされ。土中にこめてあればその塚《つか》から
たで一ほん。はへ出る。すなはち。これをバ。
【原文】※漢字や送り仮名を補足
りて聞かせう。これへ寄って聞ゝ居《お》ろう。」
▲冠者「は。」
▲殿「さても釈尊《しゃくそん》の御弟子《おでし》に、周利槃特《しうりはんどく》と言ふ人有り。
此の人、愚鈍第一《ぐどんだいいち》の人にて有つた。
我が名《な》だに覚へいで、杖の先に書いて歩き、「其方《そなた》の名は」と尋ぬれば、「是《これ》よ」と言ふて差し出す程なる愚鈍《ぐどん》な人にて有つた。
然《しか》れども、人間の習ひにて、終《つゐ》にハ悟道《ごどう》を為《な》された。
土中に築《つ》き込めて有れば、塚《つか》の上よりも、茗荷《ミやうが》一本生えて有る。
即《すなハち》ち、これを愚鈍第一の塚より出たれバ、鈍根草《どごんさう》と付けられて有る。
又、釈尊の御弟子に阿難尊者《あなんそんじや》と申するハ、知恵第一の佛にて有つた。
釈迦如来《しやかによらい》、霊鷲山《りやうじゆせん》にて、四十余年の御説法《ごせつぽう》を、一字《いちじ》一点《いつてん》も残《のこ》さずに受け取りなされたる、第一にて有つた。
是も終にハ悟道をなされ、土中に込めて有れば、その塚《つか》から、蓼《たで》一本生え出る。
即ち、是をば
【ざっくり現代語訳】
▲殿「~語って聞かせてやろう。近う寄れ。」
▲冠者「ははあ。」
▲殿「お釈迦様のお弟子に、周利槃特《しゅうりはんどく》という人がいた。
この人は、お釈迦様のお弟子で一番愚鈍な人であった。
自分の名前すら覚えることが出来ず、杖の先に自分の名前を書いて歩き、「あんたのおなまえ何ァんてェの?」
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と聞かれると、「これです」と杖の先を差し出して見せる、それぐらい愚鈍な人であった。
そんな人でも、世の常で、最後は悟りをお開きになった[お亡くなりになった]。
埋葬すると、墓の上にミョウガが一本生えてきた。
つまり、一番愚鈍な人の墓から生えたので、鈍根草《どごんそう》と名付けられたのである。
一方、阿難尊者《あなんそんじゃ》は、お釈迦様のお弟子で一番賢い方であった。
お釈迦様が霊鷲山《りょうじゅせん》で、四十年以上にわたってご説法されたことを、一字一句も漏らさず覚えておられたほどじゃ。
この方も、最後は悟りをお開きになったので埋葬すると、墓からタデが一本生えてきた。
つまり、これを
【解説】
前回のくずし字クイズの答えは【翻刻】の赤字の部分です。
それにしても、前回の「御」とここの「さ[佐]」、ほとんど区別がつきませんよね!
※左が「さ[佐]ても」、右が「御ざる」。
「周利槃特」は『醒睡笑』の回でも出てきましたね♪
kihiminhamame.hatenablog.com
どうも周利槃特の墓から生えたのがミョウガという説は、この当時だいぶ流布していたみたいですね。
で、さらにここでは『醒睡笑』にはなかったタデの説明もされるのですが、説明の途中で文章がぶった切られてしまっているので、続きは次回と言うことで!
【次回予告兼くずし字クイズ】
短いお話なので、次回でおしまいです!
殿はタデを食べたはずなのですが?
ヒントっ!
ねえねえ、「蓼《たで》食う虫も好き好き」ってことわざはどういう意味なの?
「タデのような辛い葉っぱを好んで食べる虫がいるように、人の好みは色々だ」って意味だよ。
つまり、言い換えれば「ブサメンな三つ目にもファンがいるものだ」って事だな。
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