『浦島太郎』の続きだよ!
玉手箱を開けてお爺さんになっちゃった浦島さん、この後、どうなっちゃうんだろう?
国立国会図書館デジタルコレクション - 御伽草子. 第21冊 (浦嶌太郎)
【原文】
扨《さて》、浦島は鶴に成りて虚空に飛び昇りける。
そも/\、この浦島が年《とし》を、亀が計らひとして、箱の中に畳み入れにけり。
さてこそ、七百 年《ねん》の齢《よハひ》を保ちける。
開けて見るなと有りしを、開けにけるこそ由《よし》無けれ。
「君に会ふ
夜[「世」とも掛ける?]ハ浦島が
玉手(たまて)箱
開けて[「夜」からの連想で「明けて」と掛ける]悔しき
我が涙かな」
と哥《うた》にも詠まれてこそ候へ。
生《しやう》有る物、何《いづ》れも情けを知らぬといふ事無し。
況《いわん》や人間の身として、恩を見て恩を知《し》らぬは、木石《ぼくせき》に例へたり。
情《なさ》け深き夫婦は、二世の契りと申すが、寔《まこと》に有り難き事共かな。
浦島ハ鶴《つる》に成り、蓬莱の山に相を[?][「舞を」?][「相生」?][「相老」?]成す。
【くずし字クイズの答え】
扨(さて)うらしまはつるになり
て。こくうにとびのぼりける。
【ざっくり現代語訳】
さて、浦島は鶴になり、何も無い空に飛び立って行きました。
そもそも、浦島が本来重ねるはずの年齢を、亀が仕組んで、箱の中に封じ込めていたのでした。
だから、浦島は七百年もの間、年を取らずに生きることが出来たのです。
亀が「開けて見てはいけませぬ」と言ったのに、開けたからこんなことになっちまったのです。
「お前と会う夜は~
玉手箱開けた浦島みたいに~
あっという間に過ぎちゃうね~
悔しくて溢れる涙~」
[君と会う夜は、浦島が玉手箱を開けた時のように、あっという間に時間が過ぎてしまうので、悔しくて涙が出てきます]
という歌にもなったことは、みなさんもご存知ですよね。
生きとし生けるものは全て、「情け」[思いやりの心]ということを知っています。
ましてや、人間でありながら、恩知らずな者は、まるで木や石のように「情け」がないと言われます。
なにしろ、亀でも恩返しをするんですから。
「情け」が深い夫婦は、本当に素晴らしいことに、来世[「あの世」?]までも契りを重ねると言います。
鶴になった浦島は蓬莱山に舞い降りて、亀と再会しました。[?]
【解説】
最後の行の「あひをなす」の意味がよく分からないのですが、たぶん、「相生・相老[あいおい]」の最後の「い」が版木の痛みか何かで消えてしまったのではないかと思われます。
また、「あ」ではなく「ま」で、「舞[まい]」と読む可能性も考慮して訳してみました。
「情け」「恩」を知ってしかるべき浦島さんは、再び亀と過ごす道を選んだのではないかと。
「蓬莱山」は仙人が住むという中国の想像上の山です。
日本では「富士山」「熊野山」「熱田神宮」などの異称として用いられることもあります。
唐突に「蓬莱山」が出てくるように感じますが、当時のお祝いの席で用いられた蓬莱台[蓬莱山をかたどった台の上に、鶴亀や松竹梅を飾ったもの]というものがあるように、蓬莱山と鶴亀はセットと考えられていたようです。
ひょっとしたら、浦島の墓を教えたお爺さんは、蓬莱山の仙人の化身かもしれませんね。
さて、ようやくこのページで玉手箱と言う言葉が出てきましたが、何と、玉手箱の中には、浦島太郎の時間が封じ込められていたいう!
封じ込められていた浦島太郎の時間が一気に解放されてしまったので、浦島太郎は老人になってしまったというわけです。
七百年が一気に開放されてしまったので、老人なるどころか、更に肉体も朽ち果ててしまったので、鶴に化身したということでしょう。
ちょっとファンタジーと言うかSFチックですね。
浦島さんの時間を閉じ込めているので、当然、箱は浦島さんと一緒に置いとかなければ、色々と不都合が生じるのでしょうから、亀は玉手箱を浦島さんに渡したのです。
ほら、別れ際の亀のセリフを思い出してください。
「片時も見えさせ給わぬさえ、「とやあらん、かくやあらん」と心を尽くし申せしに、」
(「ちょっと姿が見えないだけで、「どうしたのかしらん?」とソワソワする程でしたのに、」)
ずっと浦島さんと玉手箱が離れないように注意してたんですよ!
それにしても、自分の正体が亀だと明かしたぐらいなんですから、玉手箱の秘密もちゃんと明かせば良かったのに!
悲劇の原因は、要するに、亀さんの説明不足!(笑)
でも、こんな能力を持っているとは、やっぱりタダの亀じゃないですよね。
亀が別れをあんなに悲しんだのは、浦島の性格的に絶対箱を開けちゃうと分かってたからでしょうか?
というか、亀も一緒に里帰りに付き合ってあげればよかったんじゃね?
この、「玉手箱に浦島太郎の時間を封じ込めた」という一番肝心な部分が、今の浦島太郎では何故か省略されてしまっているので、今ではお土産の玉手箱を開けたら、何故かお爺さんになってしまうという、意味不明で理不尽な終わり方になっているんですよねえ。
次回予告とくずし字クイズ
次回、感動(?)の最終回です!
ちょっとだけヒントっ!
三つ目コーナー
実は僕も時間を操れるんだ。
マジ?
うん、夜、目を閉じたら、一瞬で朝になるんだ!
それは熟睡と言うものだ。
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