今回から、『亀山人家妖』の「置いてけ堀」からのつながりで、本所七不思議について書いていこうと思います。
手始めに、明治時代のものになりますが、本所七不思議を描いた浮世絵を見て行きますよー。
By 歌川国輝 (3代目) - scanned from ISBN 4-3097-6096-4 Invalid ISBN., パブリック・ドメイン, Link
野久知橘筵作・歌川国輝画『本所七不思議』(明治十九[1886]年刊)
※ Wikipediaの画像を表示しています。
※ 早稲田大学図書館のホームページで高画質のものがご覧いただけます。
本所七不思議之内 / 昇旭斎国輝 画
【翻刻】
本所七不思議 送り提燈(おくりてうちん)
春(はる)と云(い)へど未(ま)だ寒(さむ)き空(そら)に雨(あめ)もつ朧夜(おぼろよ)の
月(つき)さへ西(にし)におちこちの往来(ゆきゝ)も絶(たへ)て襟元(ゑりもと)へ
ゾツト身に染(し)む風(かぜ)につれ淋(さび)しさ添(そゆ)る叩鉦(たたきかね)
幽(かす)かにきこゆる法恩寺(ほうおんじ)出村(でむら)の町(まち)の深(ふか)ぬかり
辷(すべ)るを止(とめ)る高足駄(たかあしだ)ほろ酔(ゑひ)きげんの千鳥(ちどり)
あし供(とも)の僕(おとこ)がブル/\もの主君(だんな)淋(さび)しう
厶(ござ)り升(ます)と云(い)へばこなたハ打笑(うちわら)ひヲゝサ爰(こゝ)らハ
狐狸(くり)の居所(おるとこ)じやと咄(はな)しながら行先(ゆくさ)きへ
パツト烘立(もへたつ)烑灯(てうちん)の火(ひ)かげを便(たよ)りに近寄(ちかよれ)バ
忽(たちま)ち消(き)へて真闇(しんのやミ)又も眼前(めさき)へパツト立(た)つ
火陰(ひかげ)は人(ひと)を送(おく)り提燈(ちやうちん)
野久知橘莚記
【原文(補足表記)】※振り仮名の一部は省略しました。
本所七不思議 送り提燈(おくりてうちん)
春と云へど、未(ま)だ寒き、空に雨持つ朧夜(おぼろよ)の、月さへ西に落ちこち[遠近(おちこち)と掛けたか?]の、往来(ゆきゝ)も絶へて襟元(ゑりもと)へ、ゾツト身に染(し)む風に連(つ)れ、淋(さび)しさ添(そ)ゆる叩(たた)き鉦(がね)、幽(かす)かに聞こゆる法恩寺(ほうおんじ)、出村(でむら)の町の深泥濘(ふかぬかり)、辷(すべ)るを止める高足駄(たかあしだ)、ほろ酔(ゑ)ひ機嫌の千鳥足、供の僕(おとこ)がブル/\者(もの)、
「主君(だんな)、淋しう厶(ござ)り升(ます)。」
と云へば、此方(こなた)ハ打ち笑ひ、
「ヲゝサ、爰(こゝ)らハ狐狸(くり)の居(お)る所(とこ)じや。」
と咄(はな)しながら行く先へ、パツト烘(も)へ立つ烑灯(てうちん)の、火陰を便(たよ)りに近寄れバ、忽(たちま)ち消えて真(しん)の闇、又も眼前(めさき)へパツト立つ火陰は、人を送り提燈。
野久知橘莚(のぐちきつえん)記す
【さっくり現代語訳】
本所七不思議 送り提灯(おくりちょうちん)
春と言ってもまだ寒く、雨が降る朧月(おぼろづき)の夜、月も西に沈んでしまい、人の往来も絶え、襟元(えりもと)に風が入ってゾクっとします。
かすかに聞こえる法恩寺(ほうおんじ)の叩(たた)き鉦(がね)の音が、寂(さび)しさを一層増します。
出村(でむら)町の深いぬかるみにハマらないように、高足駄(たかあしだ)を履いて、ほろ酔い気分で、千鳥足の主従がいました。
使用人は臆病者で、
「旦那様、何だか暗くて寂しゅうございます。」
と言うと、主人は、
「おお、何しろこの辺りはキツネやタヌキがいる所だからなあ。」
と言い、二人で話しながら歩いていると、行く先に、パッと提灯の火が灯(とも)るのが見えました。
それを道しるべに歩いて行き、提灯が灯っていたと思しき場所まで行くと、パッと明かりが消えて真っ暗闇になりました。
しかし、またもや行く先にパッと提灯の火が灯るのです。
これを夜道で人を道案内する、送り提灯と言うそうです。
野久知橘莚(のぐちきつえん)記す
【解説】
暗い夜道で提灯の明かりが見えるので近づいて行くと消え、また前方に提灯の明かりが見えるという怪異です。
キツネやタヌキの仕業だということでしょうか。
まあ、これは親切な怪異なので。ノープロブレムでしょうか。
はい、ここで本所七不思議を見て行くのに、便利なものをドン!
〔江戸切絵図〕. 本所絵図 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※ 国会図書館デジタルコレクションの画像を適時改変して使用しています。
江戸時代の本所の地図です。
法恩寺と出村町がちゃんと書かれていますね。
次回は送り拍子木です。
三つ目コーナー
kanahiro (id:kanahiro9-22_22-8-8) さんが、ミツメー・ビーンを描いてくださったよ♪
www.hachhach.net
ありがとうございます、チュッ♪
(激しく嫉妬)
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