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正直福衛門、夢で桃を授かる ~『桃太郎一代記』その1~

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【要約】

 ある所に、正直福衛門(しょうじきふくえもん)という爺さんがおったそうな。
 福衛門夫婦には子どもがおらなんだで、いつも嘆いて暮らしていたそうな。
 ある日、福衛門が、グースカ昼寝をしていると、の中に仙女西王母(せいおうぼ)が出て来て、
「これまで正直に生きてきたお前子どもがいないのは、なんともカワイソーなので、子どもを一人授けてやろう。ぜってー疑うなよ、マジだから!」
 と言って、枝付きの桃を与えたそうな。

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北尾政美(きたおまさよし)画『桃太郎一代記』天明元[一七八一]年刊
桃太郎一代記 5巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
※画像は拡大できます。

翻刻補足表記【現代語訳】

 こゝに正しきふく◆ゑもんといふもの◆あり日ころ一子な◆きことをなけき◆くらしけるか◆ひるねし◆てセいわ◆うほう◆よりもゝ◆一ゑた◆さつか◆りし◆ゆめ◆をる
 こゝに正直福衛門《しやうぢきふくゑもん》と言ふ者あり。日頃、一子無き事を嘆き暮らしけるが、昼寝して、西王母《セいわうぼう》より、桃一枝授かりし夢をる[「夢を見る」の誤りか]
 ある所に、正直福衛門《しょうじきふくえもん》[爺]という者がいました。
 いつも、子どもが一人もいないことを嘆いて暮らしていました。
 ある日、昼寝をしている時に、西王母《せいおうぼ》が現れ、福衛門を一枝授けるを見ました。

 此とし◆まて◆子と◆いふも◆なし◆すへか◆こゝろ◆ほそい
 「此の歳まで、子と言ふ者無し。末が心細い」
 「この歳まで、子どもができなんだ。この先、誰も世話してくれる者がおらんから、不安じゃ」

 セんさい/\◆われハこれ桃山の◆セいわうぼなりなんし一子◆なきゆへ一子をさつくる◆なり
 かならすうたかふこと◆なかれとのたまふと◆ミてゆめハ◆さめにけり
 「千歳《セんざい》/\、我はこれ桃山の西王母《セいわうぼ》なり。
 汝《なんじ》、一子無き故、一子を授くるなり。必ず疑ふ事無かれ」
 と宣(のたま)ふと見て、夢ハ覚めにけり。
 「千歳《せんざい》千歳[神楽歌《かぐらうた》の一節で、深い意味は持たない]桃山西王母《せいおうぼ》[本来は中国の仙女だが、ここでは日本風にアレンジされて、京都の桃山になっている。漢の武帝に三千年に一度しか実がならない不老不死の桃を与えたという]である。
 お前には、子どもが一人もいないので、子どもを一人授けることにする。
 が言ったことを、決して疑うではないぞ」

 と西王母がおっしゃるのを見て、福衛門は覚めました。

 

【解説】

 今回から、『桃太郎一代記』を読み始めます。
 前に『浦島太郎』をやったので、次は『桃太郎』というわけです、リクエスもありましたし。
kihiminhamame.hatenablog.com

 江戸時代桃太郎関係の作品山ほどあるのですが、続編や別作品とも言えるくらい奇想天外なアレンジが加えられている作品も少なからずあります。
 今回は、それらを除いたオーソドックスなストーリー展開の作品の中から、あまり紹介されていない作品を選びました。
 とはいえ、西王母霊夢から始まるあたり、私たちが知っている桃太郎とはちょっと違う感じでですが、はてさてこの先、どう展開して行くのでしょうか?

三つ目コーナー

お尻みたいだよ

知るか!

 

 

 

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