今日はキタヰスカヤ(id:Kitajskaya)さんのご質問にお答えしようと思います。
誰か言ってる人がいるかもしれませんが、パッと思い浮かんだのは、角大師《つのだいし》が影響しているのではないかということです。
はい、以前、このブログでちょこっとだけ取り上げたことがある、このような鬼が書かれたお札です。
kihiminhamame.hatenablog.com
角大師は、今でも元三大師ゆかりのお寺で厄除けとして配られています。
角大師誕生のエピソードが予言獣と関連しているのではないかと。
では、延宝八[1680]年頃に描かれた『元三大師縁起絵巻』の、当該箇所を読んでみましょう。
※今回は便宜上、寛政元[一七八九]年刊『元三大師伝』下の明治時代の翻刻本を利用します。
高僧実伝 : 仏教各宗 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【現代語訳】
永観二[九八四]年のころでしたか、夜が更け、人が寝静まったころ、風がもの寂し気に吹いていましたが、すさまじく雨が窓を打つ音が聞こえたので、元三大師良源《がんざんだいしりょうげん》様が、まだ油が切れずに消えていない灯明の光で様子をご覧になると、怪しい奴が大師様の前に現れました。
大師様が「お前は何者だ」とお聞きになると、怪しい奴は「私は疫病を担当する、百鬼夜行の化け物のボスです。大師様は今、疫病にかかる巡りあわせでございます。恐れ多いことですが、大師様のお体に侵入させていただきます」と言いました。
大師様は「悪業も仏道へと導く縁となる」とおっしゃり、試しに左の小指を差し出して侵入させると、すさまじい苦痛が大師様の全身を駆け巡りました。大師様は三つの真理を融合させてパワーチャージし、指パッチンをなさると、疫病神は大師様の小指から弾き出され、腰をくの字にして転げ回りました。やがて大師様のお体の異変は治まり、元通りになられました。
後日、大師様は「私は小指を一本、侵《おか》されただけでこんなに苦しかったのに、体全体を疫病に侵されたら、持ちこたえることはできないだろう。よし、この疫病をこの世から追い払ってやろう」とお誓いになりました。すると大師様のお姿は夜叉[鬼]になり、鏡にそのお姿を写して、「この姿を描いた絵を貼った所に疫病神が来ることは無く、疫病を追い払うことだろう」とおっしゃいました。
それから、大臣の家の柱から庶民の家の扉まで、今もこの元三大師様が夜叉になった姿絵を貼って敬《うやま》っているのです。とてもありがたい元三大師様のお誓いでございます。
【解説】
鬼の姿になった元三大師良源が「私の姿絵を貼れば疫病退散!」と、予言獣とほぼ同じエピソードですね。
要するに、強い人の姿を貼れば、おそれおののいて疫病も逃げていくということでしょう。
果たしてこの姿絵は効果があったのか?
江戸時代になってからのエピソードも『元三大師縁起絵巻』には、書かれています。
【現代語訳】
寛永[一六二四~一六四四年]の頃、越前国[福井県]で疫病が流行って、住民の多くが亡くなりました。
その頃、一人の大工が比叡山に登り、元三角形《がんざんかくぎょう》の御影《みえい》[角大師《つのだいし》]をゲットして帰り、門に貼りました。すると、前後左右の隣家では疫病にかかって苦しんでいたにもかかわらず、大工の家の人は一人も疫病にかかることはありませんでした。
大工ですから、その御影を板に彫って刷り、みんなに配ったところ、御影を貼った家はほとんど疫病にかかることはなく、たまたま疫病にかかった者でも死にまでは至りませんでした。
越前国の大名はこのことを聞き、比叡山に言って御影をたくさん刷らせ、住民に貼らせた所、越前国の疫病の流行は終息したということです。
【解説】
『元三大師縁起絵巻』は、元三大師及び天台宗をアピールするために描かれたもので、のちには刊行までされたので、角大師のエピソードはおそらく世間には多く広まっていたと思われます。
予言獣の話に転化されても何の不思議もありません。
ちなみに、獣が予言するのは、やっぱり、ソロリコロリの件が元なのかなあ?
kihiminhamame.hatenablog.com
※参考論文―鈴木堅弘「〈元三大師縁起絵巻〉からみるポリティクスと両大師信仰―近世天台高僧絵伝の成立と天海の意向」第52号 | | 全学研究センター | 京都精華大学
三つ目コーナー
◆北見花芽のほしい物リストです♪
5月3日北見花芽の誕生日でございますヾ(๑╹◡╹)ノ"
ご支援よろしくお願いします♪
◆インフォメーション
井原西鶴の大著、『男色大鑑』の一般向けの現代語訳「歌舞伎若衆編」が発売中です♪
北見花芽の中の人もちょっと書いてるので、興味のある方も無い方も、下のアマゾンリンクから買ってくださると狂喜乱舞します♪
※ 書店で買っても、北見花芽の中の人には直接お金が入らないので何卒。
- 作者: 染谷智幸,畑中千晶,河合眞澄,佐藤智子,杉本紀子,濵口順一,浜田泰彦,早川由美,松村美奈,あんどうれい,大竹直子,九州男児,こふで,紗久楽さわ
- 出版社/メーカー: 文学通信
- 発売日: 2019/10/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
「武士編」も好評発売中です♪
全訳 男色大鑑〈武士編〉
『男色を描く』も合わせてお読みいただけるとより楽しめると思いますよ♪
※ こちらも北見花芽の中の人がちょっと書いていますので。
男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(コメントもできます)
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪ バズりたいです!w
2020/05/30 08:58 リスト