続きですヾ(๑╹◡╹)ノ"
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
金草鞋. 1編 - 国立国会図書館デジタルコレクション
諸国道中金の草鞋. 1 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【翻刻】
男湯の方へ出ると、先へ入る人、
「ハイ、御免なせへ、田舎者《いなかもん》で御座りヤす」
と言つて入るを聞ゝて、
「こりヤアお江戸では国所《くにどころ》を名乗つて湯へ入るそふだこと」
二人ハ蛇喰口《じやくろぐち》を潜ると、
「はい、御免なさろ、わし共《ども》ハ、はあ、奥州仙台岩沼《おうしうせんだい
いわぬま》の者で御座り申す」
と断りて入りながら、
「さすがハ御屋敷付き合ひをするお江戸程あって、堅い事だ」
と感心しながらまた狂歌を詠む。
狂 こりやアはあ 御許しなさろ 不躾《ぶしつけ》な[「武士」とかけた] 裸で湯さあへ 入り申すは
【現代語訳】
男湯の方へ出ると、先の人が、
「はい、ごめんなすって、田舎者でございます」
と言って湯船に入るのを聞き、
「あれまあ、お江戸では自分の国元を名乗って湯に入るんだべな」
と思い、二人は石榴口《ざくろぐち》をくぐると、
「はい、ごめんなさい、ワシらは、はい、奥州仙台岩沼[宮城県岩沼市]の者でございます」
とあいさつしながら湯船に入り、
「さすがはお武家様とのお付き合いがあるお江戸だけあって、お堅いこと言うんだべなあ」
と感心しながらまた狂歌を詠みました。
狂歌―お武家様の前で無作法にも裸になっておりますが、裸にならないと湯船には入れないので、どうぞご勘弁くださいませ。
【解説】
江戸では庶民も武士も同じ銭湯を利用していました。
湯船に入る時、今のように電気が無くて暗いので、ぶつかったりしないように「田舎者で御座りやす」などと言いながら入るのがマナーでした。
もちろん、本当に田舎者というわけではありません。
「田舎者なんで勝手が知らず、失礼なことをしてしてしまったらすいません」というような意味で、要は、「ちょっと失礼」ぐらいの挨拶を、江戸っ子らしく洒落て「田舎者で御座りやす」と言うようになったわけです。
で、それを知らずに真に受けてしまった二人は、自分の国元を名乗ってしまうというギャグですヾ(๑╹◡╹)ノ"
湯船は湯気が逃げて行かないように、石榴口《ざくろぐち》という低い入口をくぐった先にあったのですが、これまた挿絵には描かれていないので、参考画像をどうぞヾ(๑╹◡╹)ノ"
賢愚湊銭湯新話 : 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
石榴口の右側に前回の湯口がありますね。
ちなみに、湯船へは低い入口を屈《かが》んで入らなければならなかったので、「屈み入る」→「鏡要る」→「鏡を磨くのに必要なのは石榴[当時、鏡を磨くのにザクロ酢を使っていた]」→というわけで、湯船への入り口は「石榴口」と言われるようになったそうです。
一般的には「石榴口」と言われるので、ここの訳では「石榴口」にしましたが、この作品では「蛇喰口《じゃくろうぐち》」になっています。入り口をくぐって湯船に人が消えていく様子が、蛇に飲み込まれているようだからとか。
湯船の様子も参考画像でどうぞヾ(๑╹◡╹)ノ"
というわけで、二人の国元はこれまで「奥州」とだけ書かれていましたが、ここで「奥州仙台岩沼」ということが判明しましたヾ(๑╹◡╹)ノ"
今は仙台市と岩沼市は別の市ですが、当時は岩沼は仙台の一部だという認識だったのですかね。
岩沼は奥州街道の宿場町として栄えたそうですが、二人の家は栄えてる所から離れた山の奥にあったのでしょう。
はい、岩沼のみなさん、十返舎一九にディスられてますよヾ(๑╹◡╹)ノ"
三つ目コーナー
はい、御免なせえ、田舎者で御座りやすヾ(๑╹◡╹)ノ"
なんで風呂でもないのに裸になってるんだよ!!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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