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「耳なし芳一」のルーツ?「耳きれうんいち」その衝撃の内容とは? その3

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今回でラストですヾ(๑╹◡╹)ノ"

果たしてうんいちは、けいじゅんの幽霊から逃れることができるのでしょうか?

おなじみのシーンがでてきますよ~ヾ(๑╹◡╹)ノ"

前回同様、『曽呂里物語』は、ここに載せれる画像が無かったので、オリジナルをご覧になりたい方は、下のリンク先でご確認くださいね。
www.wul.waseda.ac.jp

翻刻

一つハけいじゆんとふらひのため。又ハうんいち
かをんねんをはらハんためとて。寺中よりあひ百万べん
の念仏をしゆ行しける。をの/\かねうちならしじゆ経し

ける時にいつく共なく。けいじゆんかたちをあらハしいてきたり。
うんいちがひざをまくらにしてふしぬ。念仏のくりきによ
りてひたねいりにねいり。性躰《しやうだい》もなかりけれハ。かゝるひま
にうんいちまくらをはづし。はや国にかへり候へとて。馬を用《よう》いし
てをくりぬ。道すがらいかにも身のけよだちあとよりとり
つかるゝやうにおほえ行なやミけるほとに。ある寺へ立より長老
にあひてしか/\の事侍り。ひらにたのミ奉るといふ。さらバ
とてうげんの僧あまたよりあひ。うんいちが一身にそんしやう
だらにをかき付て。ぶつだんにたてをきぬ。さるほとにけいじ
ゆんさもおそろしき有さまにて。かの寺に来りうんいちをいだ
せ/\とのゝしりてはしりまハりしが。うんいちをミつけてあゝ
かハひやざとうハ石になりけるとてなでまハし。耳《ミゝ》にすこし
たらにのたらぬ所を見いだして。こゝにうんいちかきれのこり
たるとて引ちぎりてぞかへりにける。さてこそかひなき命

たすかりて本国へかへりしが。耳きれうんいちとて年
たくるまてゑちごの國に有しとそ

【原文】※漢字や送り仮名を補足した表記

「一つハけいじゆん弔《とぶら》ひの為《ため》、又ハうんいちが怨念《をんねん》を払ハんため。」
とて、寺中寄り合ひ百万遍《ひやくまんべん》の念仏を修行しける。
各々《をの/\》鉦《かね》打ち鳴らし、誦経《じゆきよう》しける時に、何処共無くけいじゆん形を現し出で来たり、うんいちが膝を枕にして伏しぬ。
念仏の功力《くりき》に拠りて、直《ひた》寝入りに寝入り、性躰《しやうだい》も無かりければ、
「斯《か》かる隙《ひま》にうんいち枕を外し、早《は》や国に帰り候へ」
とて、馬を用意《ようい》して送りぬ。
道すがら、如何にも身の毛 弥立《よだ》ち、跡より憑《と》り付かるゝ様《やう》に覚え、行き悩みける程に、或る寺へ立ち寄り、長老に会ひて、
「然々《しか/゛\》の事侍り、平《ひら》に頼ミ奉る」
と言ふ。
「然《さ》らバ」
とて、有験《うげん》の僧 数多《あまた》寄り合ひ、うんいちが一身《ひとみ》に尊勝陀羅尼《そんしやうだらに》を書き付けて、仏壇に立て置きぬ。
然る程に、けいじゆんさも恐ろしき有様にて、彼の寺に来たり、
「うんいちを出せ/\」
と罵《のゝし》りて走り回りしが、うんいちを見付けて、
「あゝ、可哀《かハひ》や座頭は石になりける。」

とて、撫《な》で回し、耳《ミゝ》に少し陀羅尼の足らぬ所を見出して、
「こゝにうんいちが切れ残りたる」
とて引き千切《ちぎ》りてぞ帰りにける。
扨こそ甲斐《かひ》無き命助かりて本国へ帰りしが、耳切れうんいちとて年長《とした》くるまで越後の國に有りしとぞ。

【現代語訳】

「一つはけいじゅんを弔《とむら》うため、もう一つはうんいちへのけんじゅんの怨念《おんねん》を払うため。」

ということで、寺中の者が集まって、百万回念仏を唱える修行をしました。

それぞれが鉦《かね》を鳴らし、お経を唱えていると、どこからともなくけいじゅんが姿を現して出てきて、うんいちの膝にして寝ました。

念仏の御利益によって、けいじゅんはひたすら眠り続け、意識もなかったので、

「今のうちにうんいち膝枕を外して、とっととに帰りなされ!」

ということで、用意して送り出したのでした。

道中うんいちゾッとしてが逆立ち、を付けられているような気がして、思うようにに進めなくなりました。

そこである寺に立ち寄り、住職に会い、

カクカクシカジカの事がありまして、どうか何とか助けてください!」

と頼みました。住職は、

「そういうことならば、何とかしましょう。」

と言って、祈祷を行う僧をたくさん集め、うんいちの全身尊勝陀羅尼《そんしょうだらに》[仏教の呪文の一つ]を書きつけて、仏壇に立てて置きました。

そうするうちに、けいじゅんがとても恐ろしい形相この寺にやって来て、

うんいちを出せ! うんいちを出せ!」

大声でわめいて走り回りました。

そして、うんいちを見つけると、

「ああ、かわいそうに、うんいちになってしまった。」[陀羅尼の力で、けいじゅんにはうんいちが石に見えた]

と言って、うんいちを撫《な》で回しました。

すると、うんいちの耳に少しだけ陀羅尼が書き足りない所を見つけて、

「ここにうんいちの切れ端[一部分]が残っている。」

と言って、うんいちの耳を引きちぎって帰っていきました。


こうして、うんいちは失う所だったが助かって国元に帰ることができたのですが、「耳切れうんいち」と呼ばれて、老人になるまでずっと越後の国で過ごしたという事です。

【挿絵】(模写)

挿絵には、
「ゑちこの国ミゝきれうんいちか事」
(越後の国、耳切れうんいちが事)
と書かれています。
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一番右うんいちで、その右膝の上寄り掛かっているのがけいじゅん
左の三人念仏を唱える尼たち

【解説】

念仏の力
によってけいじゅんは誘い出され、眠り続けます。

眠るにしてもうんいちの膝にするあたり、けいじゅんうんいちへ強い執着が感じられます。

尼寺脱出してようやく助かったと思いきや、うんいちけいじゅんの気配を感じ、ある寺に飛び込みます。

そして、ここから先はみなさんがご存知の、耳なし芳一」と同様の展開になります。

なりふり構わず「うんいちを出せ!」って騒ぎまわるけいじゅん

しかし、全身陀羅尼を書かれたうんいちは、けいじゅんにはにしか見えません。

助かったと思いきや、陀羅尼書き忘れるというイージーミス!

をあっさりと引きちぎる怪力けいじゅん

今の感覚だとこのシーン一番盛り上がる所なんですが、挿絵にはここが描かれず、膝枕シーンが描かれていることを考えると、この作品メインけいじゅんの愛-なんでしょうねヾ(๑╹◡╹)ノ"

目が見えない座頭にとって、最も大事な器官ですから、それを得ることができて、けいじゅん満足したのでしょう。

は失ったものの、聴力を失ったわけではないのがせめてもの救いでしょうか。
なにはともあれ、助かったので、一応、めでたしめでたしということで。

ん? 最後、「(けいじゅんは耳を)引き千切《ちぎ》りてぞ帰りにける」と書いてありますが、ということは、「尼寺に帰った」という事ですよね。

うんいちはもう、尼寺には行かずに越後でずっと過ごしたみたいなので、尼寺を訪れた別の男性被害に遭う可能性が、、、ガクブルヾ(๑╹◡╹)ノ"

次回番外編として「うんいち」というちょっと変わった名前について考察してみたいと思います。

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【参考文献】

◆『怪異小説集』

dl.ndl.go.jp

◆『江戸怪談集〈中〉』

江戸怪談集〈中〉 (岩波文庫)

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  • 発売日: 1989/04/17
  • メディア: 文庫
 

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三つ目コーナー

「耳切れうんいち」架空の尼寺でのお話だとわかっていても、怖かったよ~ヾ(๑╹◡╹)ノ"

ところがどっこい、「耳切れうんいち」の舞台となった尼寺は、善光寺大本願と言って、実在するというねヾ(๑╹◡╹)ノ"
daihongan.or.jp

 

 

◆インフォメーション

「を知る通信」さんに、「あなたの家の中にいるかもしれない衝撃の妖怪五選」という記事を寄稿しましたので、ぜひご覧ください!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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