『金玉ねじぶくさ』巻七の二「蛙も蛇を取る事」の続きですヾ(๑╹◡╹)ノ"
基本的に、2ページずつ紹介しているので、必然的に途中で切れてしまい、その結果、わざと焦《じ》らしているようになってしまっているのです(笑)ヾ(๑╹◡╹)ノ"
霞亭文庫書誌詳細
※この記事では霞亭文庫の画像を適宜改変して使用しています。
【原文】
蛙《かはづ》居直《いなを》つて、前足を上げ、蛇の顎《あぎと》を討《うち》ちけるが、此の蛇《へび》、強《したゝ》か手負いたる躰《てい》に見へて、伸び縮み、苦し気にのたれ廻《まハ》つて、終《つい》に死《し》せり。
蛙《かへる》は別《べつ》の子細《しさい》無く、又、外《ほか》へ退《の》きて前の如くに鳴《な》く。
主《あるじ》、何とも不審晴れず、
「大きなる蛙《かへる》の少《ちいさ》き蛇に取らるゝハ、常の事なり。
然《しか》るに、此の蛙は少さくして大きなる蛇を取れり。
但《ただ》し、三足《さんぞく》の蛙《かへる》は足《あし》に子細《しさい》がな有るか。」
と立ち寄りて見れば、三足には非《あら》ず、常《つね》の四足《よんそく》の蛙《かわづ》成りしが、足《あし》に少《ちい》さき蝸牛《なめくじり》を挟みて、三足《さんぞく》にて飛び歩き、蛇の飛び掛ゝつて食い付かんとする時《とき》ハ、彼《か》の蝸牛《なめくじり》を纏《まと》いたる手《て》を伸べて、蛇の顎《あぎと》へ差し込む。
蛇は貪《むさぼ》りの心《こゝろ》深《ふか》く、飛び付くや否《いな》や後先《あとさき》を顧《かへり》見ず、何処《いづく》にも有れ、細《ほそ》ひ所へ早速《さつそく》喰らい付く時、毒に中《あた》り死すると見へたり。
窮鼠《きうそ》還《かへ》って猫《ねこ》を噛《か》むと世話《せわ》に言い傳《つた》へしが、然《さ》れば今の蛙《かわづ》も
【現代語訳】
カエルはヘビの方を向き、前足を上げて、ヘビのアゴにパンチしました。
このヘビは強いダメージを受けたようで、苦しそうに伸び縮みをしてのたうち回り、とうとう死んでしまいました。
カエルは特に何ともなく、また、他の所に移動して、さっきのように鳴きました。
家の人は、なんとも不思議に感じました。
「大きなカエルが小さなヘビに食べられるのは、珍しい事ではない。
ところが、このカエルは小さいのに大きなヘビをやっつけた。
おそらく、三本足のカエルは足に何か秘密があるのではないか。」
と思い、近くによって見ると、実は三本足ではありませんでした。
普通の四本足のカエルなのですが、一本の足に小さなナメクジを挟んで、残りの三本の足で飛び歩き、ヘビが飛び掛かって食い付こうとしたら、そのナメクジを持った足を伸ばして、ヘビのアゴに差し込んだのです。
ヘビはとても食い意地が張っているので、飛び付くとすぐに後先を考えず、急所になるような細い場所だったらどこでもかまわず喰らい付く習性があるので、目の前に出た細いナメクジに喰らい付き、ナメクジの毒にあたって死んでしまったようです。
「窮鼠《きゅうそ》かえって猫を噛《か》む[窮鼠猫を噛む]」という諺《ことわざ》が世間では言われ続けていますが、そのようにこのカエルも
【解説】
なぜナメクジがヘビを倒せるのか、これには一応、定説があります。
ヘビ・カエル・ナメクジの三敵《さんかたき》[三竦《さんすく》み]の初出は中国の思想書『関尹子《かんいんし》』[著者とされる関尹子は周代の人物だが、この書の成立は唐代か宋代か]です。
関尹子文始真経 - 原文テキスト
新日本古典籍総合データベース
【原文】
蝍蛆食蛇 蛇食蛙 蛙食蝍蛆 互相食也 聖人之言亦然 言有無之弊 又言非有非無之弊 又言去非有非無之弊 言之如引鋸然 唯善聖者 不留一言
【書き下し文】
蝍蛆《むかで》は蛇を食い、蛇は蛙を食い、蛙は蝍蛆を食い、互《たがい》に相《あい》食す也。
聖人の言《げん》亦《また》然《しか》り、有無之弊《うむのへい》を言い、又《また》非有非無《ひうひむ》之弊を言い、又非有非無を去るの弊を言う。
之《これ》を言うは鋸《のこぎり》を引く如《ごと》く然り、唯《ただ》善《よ》き聖者は一言《いちごん》を留めず。
【現代語訳】
ムカデはヘビを食べ、ヘビはカエルを食べ、カエルはムカデを食べるというように、互いに食べ合うものである。
聖人の言葉もこのようなものであり、有無[存在と非存在]の悪い所を言い、また、有でなく無でないこと[中道]の悪い所を言い、また、有でなく無でないことを除くことの悪い所を言う。
素晴らしい聖人の言葉は、ギザギザの刃がたくさんついているノコギリを引くように多彩であり、一つの言葉に留まらないものである。
つまり、元々は「ヘビ・カエル・ムカデ」だったのが、日本にはムカデがナメクジと間違って伝わったというのが定説です。
ちなみに、ムカデがヘビを食べる事は、中国の思想書『荘子《そうじ》』[中国戦国時代成立]に書かれています。
莊子 : 內篇 : 齊物論 - 中國哲學書電子化計劃
【原文】
民食芻豢 麋鹿食薦 蝍且甘帶 鴟鴉耆鼠 四者孰知正味
【書き下し文】
民は芻豢《すうかん》を食い、麋鹿《びろく》は薦《こも》を食い、蝍且《むかで》は帯《へび》を甘《うま》しとし、鴟鴉《しあ》は鼠を耆《たしな》む。
四者《ししゃ》孰《いず》れか正味《しょうみ》を知らん。
【現代語訳】
人間は家畜を食べ、鹿は草を食べ、ムカデはヘビを旨いと食べ、トビやカラス[鳥]はネズミを好んで食べる。
この四者のうち、どれが本当の味を知っていると言えようか。[絶対的なものはないということ]
ムカデがヘビを食べるのはどうもありえないように思えますが、そのように信じられていたようですね。
ましてや、ナメクジがヘビを食べる事はありえないので、この話ではつじつまを合わせ、ナメクジの毒でヘビがやられるということになっているのでしょう。
とはいえ、ナメクジにヘビを殺す毒があるとも思えませんがね。
間違いが間違いを重ねて、どうにもこうにも、分けが分かんないことになってしまったんでしょう(笑)
でも、僕とキ〇タクを間違えるのは分かるんだけど、ムカデとナメクジを間違えるはずがないと思うんだけどなあ。
冗談でもそんなこと言うと、キ〇タクファンに〇されるぞ!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
「三竦み」を検索すると良く出て来るこの絵を見ると分かるように、
拳会角力図会 2巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
ナメクジ[ナメクジリ]は漢字では「蚰蜒」と書かれていたようです。
つまり、「蝍蛆《むかで》」と「蚰蜒《なめくじ》」、良く似た字面なので、単純に間違ったんでしょうねヾ(๑╹◡╹)ノ"
あ、結局、一本の足はナメクジをつかんで浮かして、残りの三本の足で飛んでいたから、三本足のように見えただけで、普通の四本足のカエルだったと言うわけです。
「ヘビをも倒す!三本足のカエル最強伝説!?」というのは完全に釣りタイトルでした~、ごめんね~、てへぺろヾ(๑╹◡╹)ノ"
実質的には今回でほぼ話は終わってるのですが、次回が最終回ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
◆インフォメーション
「を知る通信」さんに、「あなたの家の中にいるかもしれない衝撃の妖怪五選」という記事を寄稿しましたので、ぜひご覧ください!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
はてなブックマークでのコメントもぜひ!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
news.woshiru.com
◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪
◆インフォメーション
井原西鶴の大著、『男色大鑑』の一般向けの現代語訳「歌舞伎若衆編」が発売中です♪
北見花芽の中の人もちょっと書いてるので、興味のある方も無い方も、下のアマゾンリンクから買ってくださると狂喜乱舞します♪
※ 書店で買っても、北見花芽の中の人には直接お金が入らないので何卒。
- 作者: 染谷智幸,畑中千晶,河合眞澄,佐藤智子,杉本紀子,濵口順一,浜田泰彦,早川由美,松村美奈,あんどうれい,大竹直子,九州男児,こふで,紗久楽さわ
- 出版社/メーカー: 文学通信
- 発売日: 2019/10/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
「武士編」も好評発売中です♪
全訳 男色大鑑〈武士編〉
『男色を描く』も合わせてお読みいただけるとより楽しめると思いますよ♪
※ こちらも北見花芽の中の人がちょっと書いていますので。
男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(はてなIDをお持ちでない方でも押せますし、コメントもできます)
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪ バズりたいです!w