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井原西鶴が描く明智光秀! その4 ~『武家義理物語』巻一の二「瘊子は昔の面影」~

 

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武家義理物語 6巻. [1] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しております。
    

 

【書き入れ画像】(クリックで展開)

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翻刻【現代語表記】(クリックで展開) 

翻刻

十兵衛も縁《ゑん》のはじめを祝《いわ》ひ。松竹《まつたけ》の臺《だい》の物を調《とゝの》へ
数《かず》/\の盃《さかつき》事までも。振分髪《ふりわけがミ》に見し姉《あね》むすめと
おもひしが。其後《そのゝち》寝間《ねま》のともし火ちかく。互《たがひ》に面《おもて》を見
合《あハ》せし時。十兵衛むかしの脇皃《わきがほ》に氣《き》をつけて。其時《そのとき》ハ
此女にとがむる程《ほど》にハあらぬ。瘊子《ほくろ》ひとつありしが
おとなしく成て。それもはぢて取《とり》うせけるかと。い
はずして。耳《ミゝ》のほとりをミしに。娘《むすめ》もはや心を付て
是《これ》にほくろのましますハ。わたくしの姉君《あねぎミ》なり。う
るハしき御 姿《すがた》疱瘡《はうそう》にてかハらせ給ひ。さりとハ女の
身にしてハ。御いとほしき事なり。さし置《をき》て自《みつから》の

縁組《ゑんぐミ》ハ逆《ぎやく》なると断《ことハり》申せど。二親《ふたをや》の命《めい》をそむくな
れば。是《これ》におくられけるも。心 懸《がゝ》りのやむ事なし。
今おもひあはせバ。こなたさまの御 約束《やくそく》ハ姉君《あねきミ》に
うたがひなし。いかにしても道《ミち》のたゝざる事なれば
何事《なにごろ》もゆるし給ハれ。わたくしハけふより出家《しゆつけ》と
守刀《まもりがたな》にて黒髪《くろかミ》切《きる》を留《とゞめ》て。其方《そのはう》形《かたち》をかへても。世《せ》
間《けん》濟《すむ》まじ。人しれず内證《ないしやう》にて。それがしが分別《ふんべつ》
あり五日に帰《かへ》るまで待《まち》給へ。武士《ぶし》の息女《そくぢよ》の心底《しんてい》と
深《ふか》く感《かん》じて。

【現代語表記】

十兵衛も縁《えん》の始めを祝《いわ》い、松竹《まつたけ》の台《だい》の物を調《ととの》え、数々《かずかず》の盃事《さかずきごと》迄も、振《ふ》り分《わ》け髪《がみ》に見し姉娘《あねむすめ》と思いしが、其《そ》の後《のち》寝間《ねま》の灯火《ともしび》近く、互《たが》いに面《おもて》を見合わせし時、十兵衛、昔の脇顔《わきがお》に気を付けて、
「其《そ》の時《とき》は此の女に咎《とが》むる程《ほど》には有らぬ瘊子《ほくろ》一つ有りしが、大人しく成りて、其れも恥じて取り失せけるか」
と言わずして、耳の辺《ほとり》を見しに、娘《むすめ》も早《はや》[最早?]心を付けて、
「是《これ》に瘊子の在《ましま》すは、私《わたくし》の姉君《あねぎみ》也。
麗《うるわ》しき御姿《おすがた》、疱瘡《ほうそう》にて変わらせ給い、然《さ》りとは女の身にしては、御愛《おいと》おしき事也。
「差し置《お》きて自《みずから》らの縁組《えんぐみ》は逆《ぎゃく》なる」
と断《ことわり》り申せど、二親《ふたおや》の命《めい》を背くなれば、是《これ》に送られけるも、心懸《こころが》かりの止む事無し。
今、思い合わせば、此方様《こなたさま》の御約束《おやくそく》は姉君《あねぎみ》に疑い無し。
如何《いか》にしても道の立たざる事なれば、何事《なにごと》も許し給われ。
私《わたくし》は今日より出家。」

と守《まも》り刀《がたな》にて黒髪《くろかみ》切《木》るを留《とど》めて、
「其《そ》の方《ほう》、形《かたち》を変えても、世間《せけん》済《す》むまじ。
人知れず内証《ないしょう》にて某《それがし》が分別《ふんべつ》有り。
五日に帰《かえ》るまで待《ま》ち給え。
武士《ぶし》の息女《そくじょ》の心底《しんてい》。」
と深く感じて、

 

【現代語訳】

十兵衛もこの縁組の始まりを祝い松竹の台の物[祝儀に使用する、松竹をかたどった料理を乗せた台]用意し、色々と婚礼儀式を行いました。

三三九度の盃を交わしても、妹娘だとは思わず、振り分け髪[幼児の髪型]の時に見たきりの姉娘だと思っていました。

それから、寝室二人きりになり、灯火の近くでお互い見合わせた時十兵衛妹娘横顔が気になり、

「たしか、に見た時、この女には気になる程ではないホクロが一つあったのだが、成人になって、これさえも恥ずかしくなって、取り払ってしまったのだろうか?」

と、言葉には出さずに、耳の辺りを見ました。

妹娘も、十兵衛ホクロのことを気にしているのを、すぐに気付いて、

「ここにホクロがあるのは、私の姉君です。

美しいお姿は、疱瘡醜くお変わりになり、それはそれは女の身としては、お気の毒なことになりました。

姉君を差し置いて、私の方縁組をするのは、順番が逆です。」


この縁組を最初はお断りしたのですが、最終的には両親の言いつけに背くことは出来ず、こちらに送られたのです。

しかしながら、姉君差し置いた事が、ずっと気にかかっておりました。

今になって、考え合わせると、あなた様縁組のお約束をしたのは、まぎれもなく姉君だったのでございますね。

知らなかったこととはいえ、どう考えても世間の道理外れたことです。

今日から出家いたしますので、どうか許して下さいませ。」

と言って、守り刀黒髪を切ろうとしました。

十兵衛はそれを止めて、

そなたを切って出家しても、世間納得しないでしょう。

人知れずこっそり何とかいたしましょう。

五日後の里帰り[婚礼の五日後に里帰りする風習があった]までお待ちなさい。

それにしても、武士の娘の心意気素晴らしい。」

と深く感動したのでした。

【解説】

十兵衛婚礼の儀式が済んでも妹娘だとは気づかなかったのですが、近くで見た時にとうとうおかしなこと気づいてしまいます。

姉娘あったはずのホクロなかったのです。

はい、ここでやっと、この作品のタイトル「瘊子は昔の面影」(「確か前はホクロがあったはず」)回収されましたヾ(๑╹◡╹)ノ"

聡明な妹娘は、実は十兵衛の相手姉娘だったことに、すぐに気づいてしまいます。

妹娘だったら「えへへ、ホクロは取っちゃいました~」っていってそのままごまかすのですが、武士の娘としてそれは許されない事だったのでしょうね。

十兵衛内々に何とかすると、出家しようとする妹娘を止めるのですが、はてさて、十兵衛にはどのような考えがあるのでしょうか?

次回最終回ですヾ(๑╹◡╹)ノ"

【振り分け髪】(イメージ画像)

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