※下に現代語訳と解説があります。
懐硯. 第1 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
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【原文】
爰に戸塒専九郎《とくらせんくらう》と言へる牢人《ろうにん》も、春の日かり[光]の理《ワり》無く長閑《のどか》なる折からの、浮き立つ心に誘《さそ》ハれ、其の人波に此所《ここ》に立ち交わり、最前《さいぜん》より此の若衆《ワかしゆ》に意魂《こゝろだま》を失ひながら跡《あと》を随《した》ひ、帰るさの屋敷まで着け込ミ、辺りの家に立ち寄り、
「此の隣《となり》の門構《もんがま》へなるは、如何《いか》なる御方。」
と問《と》へバ、
「あれハ武蔵《むさし》より渡《ワた》らせ給ふ御隠居所《ごゐんきよじよ》にして、大谷右馬之助《おおたにむまのすけ》殿と申し侍る。
今、余所《よそ》から帰らせ給ふハ、其の孫子《まご》左馬之丞《さまのじよう》殿にて、此の頃、御見廻《おみま》ひに上りての御逗留《ごとうりう》。」
と具《つぶさ》に語《かた》るを聞き届《とゞ》け、我屋に帰り、猶《なお》し弥増《いやま》す恋の柵《しがらミ》、涙川《なミだがは》の深くぞ思ひ込み、侘《ワび》し憂《う》き住居《すまゐ》の立ち居 苦《くる》しく、憔《こ》がれて送る日数《ひかず》のとけしなく、傳手《つて》の頼りも無ければ、明け暮れこれを案《あん》じ煩《ワづら》ひしが、
【現代語訳】
さて、戸塒専九郎《とくらせんくろう》という浪人も、春の日の光が何とものどかなので、心が浮きたつままに、他の人々と同じように、この妙久寺の梅見物にやってきて、人混みの中にいました。
そして、さきほどから、例の美少年に魂を奪われてしまい、ついつい後ろに着いて行って、帰る時も屋敷に着くまで尾行してしまいました。
そして、近くの家にピンポンして、
「この隣の立派な門構えは、一体どのようなお方のお屋敷なのでしょうか?」
と聞き込みをしました。
すると、隣人は、
「あのお屋敷は、武蔵の国からいらっしゃった、大谷右馬之助《おおたにむまのすけ》殿とおっしゃる方の御隠居所でございます。
今、他からいらっしゃっているのは、右馬之助殿の孫の左馬之丞《さまのじょう》殿とおっしゃいます。
近頃、右馬之助殿のお見舞いにいらっしゃって、しばらく滞在されています」
と詳しく教えてくれました。
そこまで聞き出すと、自分の家に帰りましたが、いっそう恋心は増しても、叶えるためには障害が多く、涙が川のように流れ、深く思い詰めました。
このみすぼらしい住まいで過ごす事もつらく。恋焦がれても、もどかしく日々を送るしかありませんでした。
誰か頼りになる人もいないので、ずっと、どうすればこの恋が叶うか考え、悩み続けるのでした。
【解説】
ここでもう一人の主人公、浪人の戸塒専九郎の登場です。
探偵まがいというかストーカーまがいの行為で美少年の正体をつきとめます。
とはいえ、さすがに、屋敷に乗り込んで交際をせまるわけにはいかないので、どうすればいいか思い悩むしかないようなのですが、はてさてどうなることやら?
つづく
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