【原文】(クリックで展開)
【原文】
「江戸を出てから今日《けふ》で廿一日《にじふいちにち》、水茶屋の女の手から茶を飲《の》むも気味《きミ》悪く、浮世《うきよ》ハ律儀《りちぎ》に構へたが損《そん》なり」
と火吹竹《ひふきだけ》の様《やう》になったを圧《へ》し付けて、そろりと襖《ふすま》の間《あい》から覗《のぞ》けば、屏風《べうぶ》を立て見えず。
「さらば合点《がつてん》」と小便《セうべん》に出る様《やう》にして、閨《ねヤ》を出、縁《ゑん》へ回り、書院床《しよえんどこ》の様《やう》なる鴨居板《かもゐいた》の透《す》かしより、思ふまゝに差し覗き見れば、男一つ夜着《よぎ》に枕《まくら》を並べ、胴《どう》は一所に命々鳥《めい/\てう》のごとく、何を言うやら、笑うやら、鳴くやら。
しらりと夜《よ》明けになれば、「心留《こゝろと》まるは関《セき》の地蔵《じぞう》」と歌ふて、馬の鈴音《すゞをと》に旅籠《はたご》の食《めし》の下を炊き付ける。
是や此の行くも帰《かへ》るも旅装束《たびしやうぞく》して膳《ぜん》に向かふ[蝉丸「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」(百人一首)を踏まえる]。
【現代語訳】
「江戸を出てから今日で二十一日目、水茶屋のウエイトレスの手からお茶を渡されて飲むのもためらうくらい、色事を我慢していたが、、、ええい、この世はマジメを通す方が損じゃ!!!」
と江戸の男は火吹竹のようになったのを押さえつけて、そろりそろりと襖の間から隣の部屋の様子を覗きましたが、屏風が立ててあって見えません。
「それならば、こうするしかない!」
とトイレに行くふりをして部屋を出て、縁側に回り、書院床のように突き出た透かし彫りの鴨居板の隙間から、思いのままに覗きました。
すると、男女は一つの布団の中で枕を並べ、命々鳥《めいめいちょう》[一つの体に頭が二つある想像上の鳥]のように胴体が一つになっていて、何を言っているのやら、笑っているのやら、鳴いているのやら。。。
白々と夜が明けて、「♪心が惹《ひ》かれるのは関の地蔵~」と歌う馬方の歌声と、馬の鈴音が聞こえてくると、宿屋はご飯を炊き、これから伊勢へ行く人も帰る人も、どの宿泊客も旅支度をして朝食のお膳に向かいます。
【解説】
江戸の男が宿泊している関宿[三重県亀山市]は、東海道の宿場町の一つで、馬方の歌に出てくる関の地蔵[地蔵院]は現在もちゃんと存在しています。
⽔茶屋は今で言う喫茶店みたいな所です。ヾ(๑╹◡╹)ノ"
水茶屋の看板娘には浮世絵ブロマイドまで作られる、アイドル的存在な娘もいたみたいですよヾ(๑╹◡╹)ノ"
で、ここ、結構エッチな場面なんですが、直接的な言葉は一切使わずに表現されているのがすごいですねヾ(๑╹◡╹)ノ"
詳しい説明はあえてしませんので、各自、想像してくださいヾ(๑╹◡╹)ノ"
一応、火吹竹の参考画像をどうぞヾ(๑╹◡╹)ノ"
カマドの前の男が左手で持っているのが、火吹竹[火を吹いておこす道具]ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
※『西鶴置土産』巻五の十七より
国立国会図書館デジタルコレクションの画像を使用しています。
西鶴置土産 5巻. [5] - 国立国会図書館デジタルコレクション
隣の部屋をのぞいた江戸の男がこのまま何事もなく終わるはずはありません。
はてさて、どのような結末を迎えるか?
次回が最終回ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
火吹竹はイチモツを、命々鳥はチョメチョメしている様子をたとえたんだねヾ(๑╹◡╹)ノ"
だから、言うなって!!!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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