うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

江戸文学の楽しさを皆さんにお伝えできれば♪

人のチョメチョメのぞいた男の運命は? その5 【再読】 ~『野傾友三味線』巻三の四「願成就の宮廻」~

 

f:id:KihiminHamame:20210331154414j:plain

 

翻刻【現代語表記】(クリックで展開)

翻刻


江戸男うつかりとむまい
所をのぞいたる皃《かほ》。板《いた》に取つ
きてはなれず。無理《むり》に引は
なさんとすれば。五 体《たい》くだけ
るがごとし。泊《とまり》り合せし旅《たび》
人よりたかつて。これは不思《ふし》
儀《ぎ》と見物《けんぶつ》するうちに。日が
たけるとおもひ/\の東西
に出て行。あとにはこの男
壱人 痛《いた》や絶《たへ》がたやと。おと
こ泣《なき》してたちすくミける
を亭主《ていしゆ》聞つけて。これ只

事にあらず立聞すれば
堅牢地神《けんこんちしん》頭《かしら》を痛《いた》め給ふ
と申し殊《こと》に太神宮参
詣の人不 浄《しやう》なる事をのぞ
きたる神罰《しんばつ》なるべし。いつ
かその皃《かほ》離《はね》れ申すべき。時《じ》
節《せつ》しれざる事なれば。宿《やど》を
いたした不詳《ふしやう》是非《ゼひ》なし
と。皃《かほ》の取ついた程 板《いた》を引
切《きり》ぬれども。猶その板はな
れざれば。心中に祈念《きねん》し
て。故郷《ふるさと》をさして帰りけ
るが。此時より好色《こうしよく》にふ

かき者《もの》を板顔《いたづら》といふ事
はじまりける

【現代語表記】

此の江戸男、うっかりと旨《むま》い所を覗いたる貌《かお》、板《いた》に取り付きて離れず。
無理《むり》に引き離さんとすれば、五体《ごたい》砕けるがごとし。
泊《とま》り合わせし旅人《たびびと》寄り集《たか》って、「これは不思儀《ふしぎ》」と見物する内に、日が長《た》けると、思い思いの東西に出て行く。
後には此の男 壱人《ひとり》、「痛《いた》や、絶《た》えがたや」と男泣《な》きして立ち竦《すく》みけるを、亭主《ていしゅ》聞き付けて、
「是《これ》は只事《ただごと》には非《あら》ず。
立ち聞きすれば、堅牢地神《けんろうじしん》頭《かしら》を痛め給うと申し、殊《こと》に太神宮参詣の人、不浄《ふじょう》なる事を覗きたる神罰《しんばつ》なるべし。
何時《いつ》か其の貌《かお》離《はな》れ申すべき時節《じせつ》、知れざる事なれば、宿《やど》を致した不祥《ふしょう》、是非《ぜひ》無し。」
と貌《かお》の取り付いた程、板《いた》を引き切《き》りぬれども、猶《なお》其の板離れざれば、心中に祈念《きねん》して、故郷《ふるさと》を指して帰りけるが、此の時より、好色《こうしょく》に深き者《もの》を「板顔《いたづら》」と言う事、始まりける。

 

【現代語訳】

この江戸の男男女いい事をしている所夢中覗きましたが、そのが覗いていた鴨居板くっ付いて離れません。

無理引き剥《は》がそうとすると、痛くて体がバラバラになりそうです。

泊まり合わせた旅人たちがよってたかって、「これは不思議だねえ」と見物しましたが、日が高くなると、旅人たちは、西へ、目的地に向かって、思い思いに旅立って行きました。

あとにはこの江戸の男一人、「痛いよ~、もう限界だ~」と男泣きして立ち尽くすだけでした。

宿屋の主人がこれを聞きつけて、

「これはただごとじゃない。

盗み聞きをすることでさえ、堅牢地神《けんろうじしん》[大地を管理する神]お悩ませになるというのに、こともあろうに伊勢大神参詣するが、汚らわしいもの覗き見などするとはとんでもない

これは神罰[天罰]であろう。

いつその顔から離れるかわからないから、宿屋にとってはとんだ災難、この際こうするしか仕方ない。」

と、顔が張り付いた部分の板を、顔が張り付いたまま、から引っ張って切り離しましたが、それでもから剥がれません

心の中で「どうかからお剥がし下さい」と祈りながら、故郷の江戸に向かって帰っていきました。

そして、このに顔が張り付いた江戸の男のエピソードから、エッチすぎる者のことを、板面《いたづら》」と言うようになりましたとさ。

【解説】

最後のオチ意味が分かりましたか?

この当時「いたづら」という言葉は、今使われている「悪ふざけ」意味以外に、「好色にのめりこむこと」意味していました。

たとえば、この頃の作品で、「いたづら女」という言葉が出てきたら、「好色女」という意味です。
それを「板面《いたづら》」とかけたわけですね。
もちろん、実際は「いたづら」語源「板面《いたづら》」なわけはなく、作者団水シャレです。

さて、ここで皆さん質問というかアンケートです。

宿屋の主人は、「伊勢神宮神罰から離れなくなった」と言っていますが、皆さんは、江戸の男はどうしてから離れなくなってしまったと思いますか?

次回私の見解を述べて、このお話紹介終わりたいと思います。


1、伊勢大神宮の罰

2、堅牢地神の罰

3、女道の神の罰

4、衆道の神の罰

5、江戸男の罪悪感

6、覗かれた男女の怒り

7、その他

8、三つ目の髪の抜

 

 

◆北見花芽のほしい物リストです♪ まだ受け付けてますバレンタインヾ(๑╹◡╹)ノ"

f:id:KihiminHamame:20171119223122j:plain 

いただいた商品のレビューはこちら♪   

◆インフォメーション 

井原西鶴の大著、『男色大鑑』一般向け現代語訳「武士編」及び「歌舞伎若衆編」発売中です♪

北見花芽の中の人もちょっと書いてるので興味のある方も無い方も、下のアマゾンリンクから買ってくださると狂喜乱舞します♪
※ 書店で買っても、北見花芽の中の人には直接お金が入らないので何卒。

全訳 男色大鑑〈武士編〉

全訳 男色大鑑〈武士編〉

  • 発売日: 2018/12/17
  • メディア: 単行本
 
全訳 男色大鑑〈歌舞伎若衆編〉

全訳 男色大鑑〈歌舞伎若衆編〉

  • 作者: 染谷智幸,畑中千晶,河合眞澄,佐藤智子,杉本紀子,濵口順一,浜田泰彦,早川由美,松村美奈,あんどうれい,大竹直子,九州男児,こふで,紗久楽さわ
  • 出版社/メーカー: 文学通信
  • 発売日: 2019/10/21
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

『男色を描く』合わせてお読みいただけるとより楽しめると思いますよ♪
※ こちらも北見花芽の中の人がちょっと書いていますので。 

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

  • 発売日: 2017/08/31
  • メディア: 単行本
 

◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪

f:id:KihiminHamame:20171108164138j:plain

◆拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
はてなIDをお持ちでない方でも押せますし、コメントもできます)

web拍手 by FC2

◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪

にほんブログ村 歴史ブログ 江戸時代へ
にほんブログ村 


江戸時代ランキング

◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪ バズりたいです!w