※下に現代語訳と解説がありますヾ(๑╹◡╹)ノ"
莫切自根金生木 : 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
唐来参和『莫切自根金生木』[天明5(1785)年刊]
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
【翻刻】
①
初會のいりめうらやくそく三會目のとこはな
くわんおんのあげものもゝのせつくや
あやめふくのきのとうろう二どの月とかたりながら
是でハよつぽといきつきそうなものとおもひのほか
なミはづれて大金をつかうゆへ
しりてもこようかと内しよからさしつして
まきちらしたかねをとりあつめ
わけもないことぐし/\いつてのこらずかへす
②
ソレ御めへさまも ソレつうとか何とか ソレよしかへ
ところをずつとね ソレかへるかね
それよしかへ へゝゝゝゝゝゝゝゝ
③
てめへのいふとをりおれもソレナソレ
つつとソレによつてかへりハかへらふが
かねハなんじうだの
④
わつちどもゝいたゝきたうハござりますが
こんなニ御もらひ申やしても内しよで
やかましうござりやす
⑤
女良やのしうちニぐつとふさいで
よのあけるをまちかねて
かへるとちうよりかごニのれバ
さきニのりしひとのわすれておとせしとミへて
四五百両もさいふニかねが有けるが
めつたな口をきいたら又
こいつもくゝり付られんとしらぬかほして
⑥
わたくしどもハあらぜにをとりますから
そのやうにいたゝきますと
めうりかわるふごさります
御ぢひでござりますから
モウさかてハ御めんなされまし
⑦
ソレてもてめへのるときさかてハやりしだいときめたから
なんというてもやらねバならねへ
⑧
ぼうぐミくださらぬやうニおねがい申しやれ
【現代語表記】
①本文
「初会の入目、裏約束、三会目の床花、観音の揚げ物、「桃の節句や 菖蒲葺《あやめふ》く 軒の灯籠 二度の月[『用明天皇職人鑑』や『碁太平記白石噺』に出て来るフレーズ]」」
と語りながら、
「是でよっぽど行き着きそうなもの」
と、思いの外、並外れて大金を使う故《ゆえ》、
「尻でも来ようか」
と内証《ないしょ》から指図して、撒《ま》き散らした金を取り集め、訳《わけ》も無い事をぐしぐし言って、残らず返す。
②若い者?
「それ、御前《おめえ》様も、それ、通《つう》とか何とか、それ、良しかえ、所をずっとね、それ、帰るかね[「返る金」と掛けた]、それ、良しかえ、えええええええええ」
③萬々
「手前《てめえ》の言う通り、俺もそれなそれ、つっとそれによって、帰りは帰ろうが、金は難渋《なんじゅう》だの」
④遣手?
「わっちどもも、頂きとうは御座りますが、こんなに御貰い申しても、内証《ないしょ》で喧《やかま》しゅう御座りやす」
⑤本文
女郎屋の仕打ちにぐっと塞《ふさ》いで、夜の明けるのを待ち兼ねて、帰る途中より駕籠《かご》に乗れば、先に乗りし人の忘れて落とせしと見えて、四五百両も財布に金が有りけるが、
「滅多《めった》な口を聞いたら、又、こいつも括《くく》り付けられん」
と、知らぬ顔して。
⑥駕籠舁《かごかき》A
「私《わたくし》どもは、荒銭《あらぜに》を取りますから、その様《よう》に頂きますと、冥利《みょうり》が悪う御座ります。
御慈悲で御座りますから、もう酒手《さかて》は御免《ごめん》なされまし」
⑦萬々
「それでも手前《てめえ》の乗る時、酒手は遣り次第と決めたから、何と言うても遣らねばならぬ」
⑧駕籠舁B
「棒組、下さらぬ様《よう》にお願い申しゃれ」
【現代語訳】
①本文
萬々は、
「初会の費用、二会目の約束、三会目の床花[馴染みになったしるしに与える祝儀]、浅草観音への寄進、桃の節句や端午の節句に飾る釣灯籠《つりどうろう》、十五夜《じゅうごや》と十三夜《じゅうさんや》の二度の月見」
と語りながら、
「これだけイベントがあったら、かなりお金も尽きそうだ」
と思いました。
ところが、萬々が、思いのほかに並外れて大金を使うので、
「これは怪しいお金に違いないから、貰って後からとばっちりを受けたらたまらない」
と遊女屋の主人の方から指示して、萬々が撒き散らした金を集めてまとめ、適当なことを言って、残らず萬々に返しました。
②若い者?(遊女屋の男性従業員)
「それ、あなた様も、それ、事情は察してらっしゃるでしょうから、それ、よろしいかな、今日の所はこのまま、それ、お金はお返しするので、お帰りになると良い、それ、よろしいかな」
③萬々
「お前の言うとおりだが、俺もそういうことだから、それならばさっと、帰るには帰るが、金はもてあますものだなあ」
④遣手?(遊女屋の女性従業員)
「私どもも、本当はいただきたいのですが、こんなにいただくわけにはいかないと、ここの主人の方から、うるさく言ってくるのでございますのよ」
⑤本文
萬々は、遊女屋の仕打ちにガクっと気落ちして、夜が明けるのも待てずに、帰ることにしました。
帰り道の途中から駕籠に乗ると、前に乗った人が忘れて置いて行ったと思われる、四五百両も金がはいったサイフがありました。
「軽はずみにこのサイフの事を言ったら、なんだかんだこの金も押し付けられるかもしれない」
と考え、萬々は気づかないふりをしました。
⑥駕籠舁《かごかき》A
「私どもは、決められた料金をちゃんといただければ充分なので、そのようにチップをいただきますと、ありがたすぎてバチが当たります。
お願いでございますから、そのようなチップはご勘弁くださいませ」
⑦萬々
「そう言われても、俺はこの駕籠に乗る時に、必ずチップを渡すと決めたから、何と言われてもチップを渡さねばならぬ」
⑥駕籠舁B
「相棒よ、チップは下さらぬように、お願い申してくだされ」
【解説】
遊女屋でお金を使い果たすことができそうだと思った萬々ですが、あまりにも景気よくお金を使ってしまったので、逆に何か危ない事をして手に入れたお金だと疑われてしまいます。
遊女屋としてもそんなお金を貰ったら、あとで面倒なことになるのは明白なので、バラまいた金は全て返却されてしまったのでした。
遊女屋の従業員の男性の言い分が、「それ」「それ」言って適当すぎるのがおもしろいですよね。
萬々もつられてか、言葉足らずになっていますヾ(๑╹◡╹)ノ"
遊女屋でお金を使えなかったので、萬々は駕籠屋にチップをたんまり払おうとしますが、拒否されてしまいます。
駕籠屋もさすがに怪しいお金だと思ったんでしょうね。
おそらく萬々は小判でチップを払おうとしたのでしょうが、庶民が小判を貰っても逆に困るんですよね。
小判なんてお釣りも出せないような大金なんで、街中では使うことができずに、もてあますだけです。
それに駕籠屋が小判など普通は持てるはずがないので、怪しまれてあらぬ疑いをかけられてしまう恐れもありますしね。
というわけで、駕籠の中に忘れられた大金入りの財布、萬々は見なかったことにしますが、なんだか嫌な予感がしますねえヾ(๑╹◡╹)ノ"
で、「三つ目を探せ!」は、まだ続行中のようですヾ(๑╹◡╹)ノ"
◆北見花芽のほしい物リストです♪
◆インフォメーション
井原西鶴の大著、『男色大鑑』の一般向けの現代語訳「武士編」及び「歌舞伎若衆編」が発売中です♪
北見花芽の中の人もちょっと書いてるので、興味のある方も無い方も、下のアマゾンリンクから買ってくださると狂喜乱舞します♪
※ 書店で買っても、北見花芽の中の人には直接お金が入らないので何卒。

- 作者: 染谷智幸,畑中千晶,河合眞澄,佐藤智子,杉本紀子,濵口順一,浜田泰彦,早川由美,松村美奈,あんどうれい,大竹直子,九州男児,こふで,紗久楽さわ
- 出版社/メーカー: 文学通信
- 発売日: 2019/10/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
『男色を描く』も合わせてお読みいただけるとより楽しめると思いますよ♪
※ こちらも北見花芽の中の人がちょっと書いていますので。
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(はてなIDをお持ちでない方でも押せますし、コメントもできます)
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪ バズりたいです!w