今回取り上げるお話は、以前、こちらの本で小説化したものを書かせていただいたお話です。
その時、ちょっとモヤモヤが残りましてね、そのモヤモヤを解消するために、今回取り上げたく思いますので、しばしお付き合いくださいませ。
モヤモヤの内容は次回以降にちゃんと言いますのでヾ(๑╹◡╹)ノ"
井原西鶴『本朝桜陰比事』元禄二[一六八九]年刊
新日本古典籍総合データベース
※この記事では国文学研究資料館所蔵品のデジタル公開画像を適宜加工して使用しております。
【翻刻】
七 仕掛《しかけ》物ハ水になす桂川
むかし都の町 静《しつか》にしてめつらしき取沙汰 絶《たへ》て。何かなと
聞 耳《みゝ》たつる折ふし五月雨のにごり水に。桂《かつら》川の瀬《せ》
/\を不思義なる物の流《なが》れきたれり。新しき長櫃《なかひつ》
に錠《しやう》をおろして其上に白《はく》幣をさして置ぬ。里人の何が
し是を見付ておの/\呼《よび》に来《きた》りて。是ハ何とも合点《かてん》し
かねて兎角《とかく》此まゝにハおかれじ。先《まつ》神職《しんしよく》の物と見ゆれ
ば吉田 萩原《はぎハら》の御家へたづね見んといふ。近道《ちかみち》に御前《ごせん》へと
内談《ないだん》極《きハ》めて持参《ちさん》いたし。ことがましく子細《しさい》をこめて申上
る時に仰せ出されしハ先《まつ》錠前《じやうまへ》を明させて御覧《ごらん》なされ
けるに年ひさしき瀑首《されかうべ》五つ女の黒髪《くろかミ》入 乱《みた》れし。いづれ
も驚《をとろ》き是ハいかなる事そといよ/\不思義の皃付せし時
【現代語表記】
七「仕掛物《しかけもの》は水になす桂川」
昔、都の町、静かにして、珍しき取沙汰《とりざた》絶《た》えて、「何がな」と聞き耳《みみ》立つる折節、五月雨の濁り水に、桂川《かつらがわ》の瀬々《せぜ》を不思議なる物の流れ来たれり。
新しき長櫃《ながびつ》に錠を下ろして、其の上に白幣《はくへい》を挿して置きぬ。
里人の何がし、是《これ》を見付けて、各々《おのおの》呼《よ》びに来《き》たりて、是は何とも合点《がてん》しかねて、
「兎角《とかく》此のままには置かれじ。
先《ま》ず神職の物と見ゆれば、吉田・萩原《はぎわら》の御家へ尋ね見ん」
と言う。
「近道《ちかみち》に御前《ごぜん》へ」
と内談《ないだん》極《きわ》めて持参《じさん》致し、事がましく子細《しさい》を込めて申し上げる。
時に仰せ出されしは、先《ま》ず錠前《じょうまえ》を明けさせて御覧《ごらん》なされけるに、年久しき瀑首《されこうべ》五つ、女の黒髪入り乱《みだ》れし。
何《いず》れも驚き、「是は如何《いか》なる事ぞ」といよいよ不思議の顔付きせし時、
【現代語訳】
巻四の七「仕掛物[芝居の道具、衣装、装置などのこと]は桂川の水と消えた」
[桂川に流した仕掛物《しかけもの》は無駄になってしまった]
昔、都[京都]の町が穏やかで、珍しい出来事もなく、「何か面白い事はないかなあ」と皆が聞き耳を立てている時がありました。
そんな時、五月雨《さみだれ》[梅雨]で水が濁った桂川の浅瀬を、不思議な物が流れてきました。
カギがかけてある新しい長持《ながもち》[衣類などを入れる長方形の箱]の上に、白い御幣《ごへい》[神主がお祓《はら》いの時などに使う、棒に紙を挟んだもの]が挿してありました。
村人の〇〇がこれを見付けて、ほかの村人を呼び集めました。
村人たちは、これが何だか分からず、
「とにもかくにも、このまま置いておくわけにはいかない。
どうも神社の物のようだから、神主の吉田様と萩原様にお尋ねしよう」
「いやいや、それよりお奉行様にお伺《うかが》いを立てる方がてっとり早い」
と相談して決め、奉行所にこの長持を持って行きました。
そして、おおげさに状況を細かく申し上げました。
すると、お奉行様は、まず長持のカギを開けるよう指示して、ご覧になりました。
中には、古いシャレコウベ[ドクロ]が五つと、女の黒髪が入り乱れて入っていました。
誰もが驚き、「これは一体、どういうことだ?」と、ますます不思議な顔つきになるのでした。
【解説】
このお話が収録されている『本朝桜陰比事《ほんちょうおういんひじ》』は、井原西鶴の作で、今で言う推理小説を集めた短編小説集です。
五つのシャレコウベ[ドクロ]と女の黒髪が入り乱れた謎の長持が桂川を流れてきます。
その黒髪で僕のカツラを作ろうよヾ(๑╹◡╹)ノ"
(ガン無視)
果たしてお奉行様はこの長持の正体を見破ることができるのでしょうか?
タイトルがちょっとしたヒントになっています。
挿絵は、御幣が挿してあるカギ付きの長持が桂川を流れる様子が描かれています。
このお話自体は次回で完結ですが、そのあと色々と検証を重ねますので、どうか生暖かい目でご覧くださいませヾ(๑╹◡╹)ノ"
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