【前回のあらすじ】
大入道の息子の一つ目小僧は、大入道から片目を与えられて二つ目になり、家督を譲られ、諸国化け修行に出たのですが。。。
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
大昔化物双紙 2巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション (5ページ目です)
※画像は拡大できます。
【原文】
丹波の山奥に狒々《ひゝ》と言ふ者有りて、良く人を悩まし、猪《しゝ》・狼《おゝかめ》を取り喰らひ、山を荒らしけれバ、里人これが為に悩まぬ者無し。
丹波の国の化け物大将と言ふ。
然るに、狒々が一子を山童《やまワらう》と言へり。
されども山童は化け物大将となるべき働きなけれバ、狒々 詮方《せんかた》無く、見越入道《ミこしにうだう》と言へる者を子分に頼ミ申しけるハ、
「此の度、越後の国大入道が倅《せがれ》一ッ目小僧、世を取って今入道と言へり。
彼、化け修行に出でたる由聞くなれば、汝《なんじ》、彼の今入道と見るならば引っ捕らへ、鼻を拉《ひし》ぎくれよ」
と見越入道に言ゝい渡しける。
山童《やまワらハ》、凹《へこ》んでゐる。
「随分、化け仲間で、鼻の拉《ひしゃ》げぬ様《やふ》にするがいゝ」
「よく/\計らへ/\」
「合点か/\」
「何さお前さん、まだ一ッ目ぐらいの小僧が、此の三越《ミこし》に会って収まりがあるものか」
【現代語訳】
丹波の国[現在の京都・兵庫あたり]の山奥に、ヒヒという者がいました。
猪や狼を取って食べ、山を荒らしまわるので、村人はみんな苦しんでいました。
そんなヒヒは丹波の国の化け物大将と呼ばれています。
ところが、ヒヒの一人息子の山童《やまわらわ》には、化け物大将になれるような才能がありませんでした。
そこで、ヒヒは仕方なく、見越入道《みこしにゅうどう》という者を養子に迎え入れ、
「近頃、越後の国の大入道の息子の一つ目小僧僧が、家督を譲られて今入道《いまにゅうどう》を襲名した。
今入道は化け修行に出たと聞いたので、おぬしは今入道を見つけたら引っ捕らえて、自慢の鼻を押し潰してやるのだ[恥をかかせてやるのだ]」
と命じたのでした。
山童はヘコんでいます。
ヒヒ「二度と化け物仲間の前に顔を出せないくらい、今入道の自慢の鼻を押し潰してやるがいい[今入道に恥をかかせてやるがいい]」
ヒヒ「うまくやるんだぞ」
ヒヒ「わかったか?」
見越入道「なんのなんの、お前さん、まだ「一」つ目ぐらいの小僧が、この「三」越の手にかかって、ただで済むはずがない[見越入道の「見」の漢字をあえて「三」と表記し、「一(つ目小僧)」よりも数が多い「三(越入道)」の自分の方が上だと言っている]」
【解説】
ここで、一つ目小僧が今入道《いまにゅうどう》と名乗るようになったことがわかります。
化け物界の大物は越後の国の大入道だけではないようで、丹波の国にはヒヒという大物がいるようです。
が、大入道と違って、ヒヒの息子は化け物としては優秀ではなかったようで、見越入道《みこしにゅうどう》を跡取りに迎えます。
跡取りになれなくてヒヒの息子の山童《やまわらわ》はヘコんでいるようですが、ヘコむって言葉はこの頃から使われていたのですね。
さてさて、今入道と見越入道の入道対決が行われるのでしょうか?次回に続く!
【一つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(前回の答え)】
【一つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(正解は次回)】
ヒント
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