新日本古典籍総合データベース
※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0)
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【原文】
十九日には、皆/\寄り合ひて、穢多《ゑた》の十兵衛と言へる者に、申し含め、彼が家に傳へし良き罠《わな》有れば、是を以《も》て、此の夜ハ罠を掛けさせける。
然るに、化け物更に掛ゝりもせで、夜もすがら化け物共、罠を嬲《なぶ》り者にし、剰《あまつさ》へ隠れ居たりける十兵衛が鼻を摘《つま》みける。
元より斯様《かやう》な事には出合ひし十兵衛なるに、何と無く恐ろしくて、隠れ居る事もなり難く、平太郎に暇を乞ひ、帰り、然れども、「良き罠なれバ、もしや変化の掛ゝりもやしつらん」と夜明けて後、見に来たり、平太郎に尋ねしに、化け物は掛ゝりもせで、巧みに仕掛け置きし罠を取り出し、屋根に上ゲ置きぬ。
十兵衛、此の様を見て申しけるハ、「此の罠をバ日に晒《さら》しなバ、その術《わざ》の妨《さまた》げになりぬるが、斯様の事も知りつゝ、斯《か》くしたりけるハ、只に狐狸とも見へ侍らず」と申しける由。
【現代語訳】
七月十九日にの夜には、みんなで集まって、穢多《えた》[士農工商より下とされた身分。死牛馬の処理などをした]の十兵衛という者によく言い聞かせて、十兵衛の家に代々伝わる良い罠《わな》を仕掛けさせました。
ところが、化け物は全くこの罠に掛からずず、一晩中この罠をいじくりまわして、その上、隠れていた十兵衛の鼻を摘《つま》みました。
元々、この程度の事には慣れているはずの十兵衛でしたが、わけもなく恐ろしくなって、隠れていることもできなくなり、平太郎に別れの挨拶《あいさつ》をして帰りました。
しかし、「良い罠なので、ひょっとしたら化け物が掛かっているかもしれない」と思い、夜が明けてから見に来て、平太郎にどうだったか尋ねると、化け物は掛かりもせず、巧妙に仕掛けておいた罠を取り出して、屋根に上げてありました。
十兵衛はこの様子を見て、「この罠を目に見える所に置いたら、バレバレで罠を仕掛けた意味がなくなります。罠の仕掛けをものともせずに取り出し、見える場所に置くような嫌味なことをするのは、単なるキツネやタヌキレベルの下等な化け物ではないでしょう」と申しました。
【解説】
穢多の十兵衛という身分の低い男性が登場しますが、平太郎は特に差別的な態度は取っていません。
それどころか、遠慮なしに十兵衛はとっとと帰っています。
やはり、先に登場した賤の女と同様に、身分差はあっても、交友関係は意外とフレンドリーだったのかもしれませんね。
kihiminhamame.hatenablog.com
当時の身分制度について、一考が必要かもしれませんね。
それにしても、この罠、どんな罠だったんでしょうかね?
挿絵では竹みたいですが、それよりも、シェーみたいなポーズをしている平太郎と十兵衛が気になりますヾ(๑╹◡╹)ノ"
そして、化け物の正体は、やはりただ者ではないようですが、果たして。
僕は化け物じゃなくてバカ者ってよく言われるよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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