







(魔王一行の行列)
新日本古典籍総合データベース
※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0)
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【原文】
斯《か》くて、立派に暇《いとま》申し、「我が供、行列を見給へ」と立ち出でける。
平太郎も「是を見送るべし」と縁に出ける。
互ひに拝せし其の時、平太郎が頭、俄《にわ》かに重くなりにけるが、五郎左衛門押したると覚えしとぞ。
平太郎は、「今更、欺《あざむ》かれしか」と口惜しく、大の力を出し、聲掛けて頭《かしら》を擡《もた》げしが、早や五郎左衛門、庭に飛び下りて、早くも彼の並み居し供の駕籠《かご》の内に入るとぞ見へて、形ハ更に見へざりける。
髭《ひげ》の生えたる大いなる足を駕籠の内より出しつゝ、並み居たる供、一度にとつと立ち上りしが、彼の髭足ハ更に見へず。※脱文の箇所は他の写本などを参考に補いました。
其の駕籠を高くも舁《か》き上げツゝ、扨、行く程に、向かふは、屋根上より次㐧に高く連なりて、雲井指して帰りける。
其の並び行く供の有様、悉《こと/\》く人の姿なるは無くて、異形《いぎやう》の物にて有りけるとぞ。
此の三十日の間、昼夜化け物現れしに、既に今夜を限りにて、跡形も無く終はりしとぞ。
誠に恐ろしき事ども也。
然《さ》れども、平太郎は一度も惑はされし心無く、始終を委敷覚えつゝ、斯《か》くと物語りしける。
実に古来より並び無き事なりける。
【現代語訳】
こうして、五郎左衛門は立派に別れの挨拶をし、「私の家来の行列をご覧くだされ」と言って、立ち上がって出て行きました。
平太郎も「これを見送ろう」と縁側に出ました。
お互いに礼をしたその時、平太郎の頭が急に重くなりましたが、どうやら五郎左衛門が押さえつけたようです。
平太郎は、「最後の最後でしてやられたか!」と悔しく、おもいっきり力を入れて、叫んで頭を上げましたが、もはや五郎左衛門は庭に飛び下りて、あっという間に並んで座っている家来の待つ駕籠の中に入ったかと思うと、姿は全く見えなくなりました。
五郎左衛門は、けむくじゃらの大きな足を駕籠の中から出していましたが、並んで座っていた家来が一斉にどっと立ち上がると、けむくじゃらの足は全く見えなくなりました。
その駕籠を家来が高くかつぎあげながら進んで行くと、行列は前方の屋根の上よりだんだん高くなって、大空に向かって帰って行きました。
その並んで行く家来は、どれもこれも人間の姿をしている者は無く、ヘンテコな姿の者ばかりでした、
この三十日の間、昼夜を問わず化け物が平太郎の所に現れましたが、とうとうこの夜を最後に、まるで何も無かったかのように終わりました。
とても恐ろしい出来事でした。
しかし、平太郎は一度も心を惑わされることは無く、一部始終を詳しく覚えており、このように伝えることができたのです。
実にこれまでに前例が無い出来事でした。
【解説】
魔王は最後の最後でちょっとだけ平太郎を悔しがらせることができてご満悦でしょうね(笑)
魔王にしてはやり方がセコいですが(笑)
裃の男は魔王が化けた姿で、駕籠から出たけむくじゃらの足[髭足]が魔王の本当の姿でしょう。
魔王は家来に指図して怪異を起こさせていたのでしょうが、初日に現れた鬼のような者は魔王本人だったのではないでしょうか?
kihiminhamame.hatenablog.com
「毛むくじゃらの手[髭手]」と書かれていますしね。 魔王は初日と最終日に自ら現れたと思われます。
そして、平太郎自ら語ったのがこのお話の内容だという訳です。
だから、誰が何と言おうと実話なのです(笑)
これでお話の部分は終わりです。
このあとに、あとがきがありますので、もう一回だけ続きます。
最後の最後でやっと紛れ込めたヾ(๑╹◡╹)ノ"
【三つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(前回の答え合わせ)】

【三つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(正解は次回発表)】
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