※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
ぶんぶくちやがま - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】
りに此の茶釜を持ち行き、茶を立て楽しまん。
狐めハ残念、打ち漏らしたる腹立ち」
と、茶釜取り、持ち帰りける。
部屋にもなれば、囲炉裏《いろり》に炭を起こし立て、茶釜を設《しつら》いに立てける。
無惨やな、狐ハ化ける物こそ多かるべきに、茶釜と化けたハ絶体絶命、運の尽き、諦め、無常を観念す。
次第/\に火ハ強く、熱さハ堪《こら》へ難く、思ハず、知らず、正体の尻尾《しつぽ》を「によつ」と突き出せバ、四人、共に肝を消す。
何が火の勢《せい》強く起こつて、囲炉裏の中より飛んで出て、座敷の内を飛び回れば、皆口/\に声を上げ、
「ぶんぶく茶釜に尾が生えた。ぶんぶく茶釜に目が生えた」と
「田宮殿、見しやしやれ」
「可笑《おか》しな物だの」
「そこらで/\」
ふくさい「ぶんぶく茶釜に手が出たハ」
ぶんざい「さあさ、ぶんぶく茶釜に尾が生へた」
ふくあん「ぶんぶく茶釜に目が出来た」
「も一つ返して/\/\な」
ぶんぶく諫《いさ》む「あんまりぶんぶくと呼んでくれるな。奥へ聞こへて、しくじらせるな」
【現代語訳】
[本文]
「ここに見事な茶釜がある。
せめて代わりにこの茶釜を持って行って、茶を立てて楽しもう。
キツネは残念ながら取り逃して、腹が立つが」
とぶんぶくは茶釜を拾って、持ち帰りました。
部屋に戻ると、囲炉裏《いろり》に炭を起こして、茶釜を五徳の上に置きました。
あわれなことに、キツネは多くの物に化けられるのに、よりによって茶釜に化けたおかげで、絶体絶命のピンチになり、「ここが運の尽き」と、諦めて無常を感じるのでした。
段々火は強くなり、キツネは熱さを我慢することができず、思わず知らないうちにシッポを「ニョっ」と突き出して正体を現してしまったので、四人の茶坊主は揃って驚いたのでした。
どうにも火の勢いが強くなったので、キツネは囲炉裏の中から飛んで出て、座敷の中を飛び回ったので、みんな口々に声を上げ、
「ぶんぶくの茶釜に尾が生えた! ぶんぶくの茶釜に目が生えた!」と
[挿絵部分]
若衆A「田宮殿、ごらんなさい」
若衆B(田宮)「面白い光景だなあ」
茶坊主たち「そこらで、そこらで!」[囃子詞《はやしことば》]
ふくさい「ぶんぶく茶釜に手が生えた!」
ぶんざい「さあさ、ぶんぶく茶釜に尾が生えた!」
ふくあん「ぶんぶく茶釜に目ができた!」
茶坊主たち「も一つ返して、返して、返してな!」[囃子詞]
ぶんぶくは友の茶坊主たちを諫《いさ》めます。
「あんまりぶんぶくと呼んでくれるな。東山殿に聞こえてクビになってしまう」
【解説】
最初にも説明したのですが、この話に登場する坊主は茶坊主で、主君の側に仕え、主に茶道に従事し、給仕や接待などを担当した役職で、頭を丸めてはいますが、僧ではなく、身分は武士です。
茶坊主たちに追い掛けられたので、キツネは、茶坊主たちの商売道具の茶釜なら危害を加えられまいと、思わず茶釜に化けてしまったんでしょうね。
キツネが化けた茶釜を、ぶんぶくが見つけて拾うわけですが、つまり、「ぶんぶく茶釜」とは「ぶんぶくの茶釜」という意味だったわけですね。
火にかけられたキツネ茶釜は、熱さのあまり思わずシッポを出して、部屋の中を飛びまわります。
キツネは気の毒ですが、挿絵の半分茶釜で半分キツネの姿はカワイイですね。
どうでもよくなったのか、ぶんぶく以外の茶坊主は、「ぶんぶく茶釜に尾が生えた!」なんて歌って楽しそうです(笑)
ぶんぶくは自分の名前を連呼されてあせっていますが。
なお、ぶんぶくとふくあんの着物の柄が、これまでの挿絵と入れ替わってしまっていますが、まあ、この時代の本にはよくあるミスなんで、気にしてはいけませんヾ(๑╹◡╹)ノ"
三つ目の頭に毛が生えた!
生えてないよ。
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5月3日は北見花芽の誕生日ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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