「定番の昔話が江戸時代にはどう書かれていたか?」シリーズヾ(๑╹◡╹)ノ"
今回は、「花咲かじいさん」です。
「花咲かじいさん」は人気があったお話のようで、江戸時代にはいくつかの作品が出版されています。
その中で、制作のコンセプトが興味深かった『赤本再興《あかほんさいこう》〇花咲き爺《じじ》』[式亭三馬補綴、歌川国丸画、文化九(一八一二)年刊]を、ここでは取り上げたいと思います。
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
赤本花さき爺 - 国立国会図書館デジタルコレクション
花咲ぢゝ 3巻 鰻谷劇場条書 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】
伏稟《ふくひん》
先年、私、工夫《くふう》を以て、繪草紙合巻《ゑさうしがふくわん》と申す、仕立形《したてかた》を新たに制作《せいさく》仕《つかまつり》り候《さうら》ふ所、御子様方 御贔負《ごひいき》、御蔭《おかげ》を以て、大当たり仕り、翌年《よくねん》より打ち続き、年々/\合巻の草紙、流行《りうかう》致し、且《か》つ、戯作者《げさくしや》と名乗り候ひて、営みと成り来たり候を、全《まつた》ク以《もつ》て御贔負㐧一、次には往古《いにしへ》の繪入り物語、或《ある》いハ繪入り正本《しやうほん》、別《べつ》して赤本の餘光《よくわう》と存じ奉り候。
依《よ》つて、冥加《ミやうが》の為《ため》、赤本〇桃太良〇花咲き爺《ぢゞ》〇鼠の嫁入り、都合《つがふ》三組を再板《さいはん》仕り候ひて、御幼少《ごようせう》の御子様方へ、往古の趣《おもむき》を御覧に入れ奉りたく、且つ、繪草紙の祖神《そじん》とも申すべき品/゛\を世に絶やさんも嘆《なげ》かしく、彼是《かれこれ》思ひ当たり候ふニ付き、作意《さくい》を古調《こてう》に補綴《ほてつ》致し、絵ハ私 所蔵《しよざう》の赤本、黒本、数/゛\を取り集め、國丸子《くにまるし》の筆を借りて、拾ひ写しに画《か》かせ候ふ上、當春再板仕り候。
猶《なほ》、追〻《おひ/\》、舌切《したき》り雀《すゞめ》、かち/\山の類、出板仕り候。
御幼少の御子様方、御求《おもと》め、御覧被下《ごらんくだされ》候ハゞ、赤本の祭祀《まつり》を致す同様と、冥加至極《みやうがしごく》有り難く仕合わせに存じ奉り候。
恐〻《きようきよう》、以上。
戯作者《げさくしや》 式亭三馬《しきていさんば》 欽曰《きんえつ》[欽《つつし》みて曰《い)ふ]
【現代語訳】
ごあいさつ
何年か前、私が考えて、絵草紙合巻[五冊ぐらいに別れて出版されていた絵本を、一冊にまとめて出版した形式]という新たな形式で本を作った所、お子さま方がご贔屓《ひいき》にしてくださったおかげで、大ヒットしました。
次の年からも引き続き制作し、年々合巻の草紙の人気が増しています。
それに加えて、私が戯作者《げさくしゃ》と名乗って仕事にすることができましたは、第一にみなさまがご贔屓にしてくださったからです。
第二に、昔の絵入り物語、または絵入り正本《しょうほん》[浄瑠璃や歌舞伎の脚本]、特に赤本[ページ数の少ない、絵本の初期型の形式]という存在があったおかげでございます。
よって、そのお礼として、赤本の「桃太郎」「花咲き爺《じじ》」「鼠の嫁入り」の合わせて三冊をリメイクし、幼いお子さま方に、昔のお話の雰囲気を味わっていただきたく思います。
それに加えて、絵草紙の元祖とも言える作品たちが、この世から忘れ去られるのも残念なのです。
あれこれ考えて、文章は昔ながらの文体を意識して書き、絵は私が所蔵する赤本や黒本[赤本が発展した形式]を色々参照し、歌川国丸氏の画力をもってして、昔の絵本のタッチで描かせた上で、この春にリメイクして出版いたしました。
なお、追って、「舌切り雀」「かちかち山」なども出版いたします。
幼いお子さま方にお求めいただき、ご覧いただけたなら、赤本をたたえるお祭りをするのと同じようなもので、出版した甲斐があり、とてもありがたく、幸せでございます。
恐々《きょうきょう》[「恐恐謹言《きょうきょうきんげん》」。「敬具」のように文末につける言葉]、以上。
戯作者の式亭三馬が謹んで申し上げます。
【解説】
今回は序文で、本編は次回から始まります。
おまけで、出版目録の部分も、赤字での書き入れはしておきました。
赤本の「桃太郎」「花咲き爺」「鼠の嫁入り」といった古典作品を、昔の雰囲気を残しながら再構築して出版したということです。
今で言うと「シン・ウルトラマン」と同じような意図で作られているということでしょうか。
「シン・花咲か爺さん」ですねヾ(๑╹◡╹)ノ"
表紙に「倣《ならふ》富川吟雪《とみかわぎんせつ》写意《しやい》」とあるので、絵は富川吟雪のタッチを真似して描かれたのでしょう。
ストーリーは赤本の「花咲かじいさん」のお話がベースなので、「式亭三馬作」ではなく「式亭三馬補綴」という言葉を使ったのでしょうね。
この赤本再興シリーズ、「桃太郎」「花咲き爺」「鼠の嫁入り」の三作品をリメイクしたとありますが、現存するのはこの「花咲き爺」と「桃太郎」だけです。
巻末の出版目録にも「桃太郎」「花咲き爺」の名は出て来るのですが、「鼠の嫁入り」の名はなく、現存もしていないので、「鼠の嫁入り」だけ出版されなかったようです。
また、この赤本再興シリーズはそれほど人気が出なかったのか、追って出版すると予告した、「舌切り雀」「かちかち山」も現存しておらず、おそらく出版されなかったと思われます。
実際には、これらの「桃太郎」「花咲き爺」といったお話は絶えそうになっていたわけではなくて、色んなバリエーションでちょこちょこ出版されていたんですけどね(笑)
売るための煽《あお》り文句でしょうね。
僕も、元は江戸時代の妖怪だから、いわば「シン・三つ目」だね!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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