『赤本再興《あかほんさいこう》〇花咲き爺《じじ》』[式亭三馬補綴、歌川国丸画、文化九(一八一二)年刊]
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
赤本花さき爺 - 国立国会図書館デジタルコレクション
花咲ぢゝ 3巻 鰻谷劇場条書 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】
①慳貪爺ハ、悪心 愈《いよ》/\募《つの》りて、「此の上ハ手短《てみじか》に、正直爺が家へ忍び入り、宝の葛籠《つゞら》奪ハん」とて、難無く忍びて奪い取り、葛籠を開くれバ、宝に非《あら》で、様/\の化け物出て、夫婦を悩ます。
②「葛籠から出たら、のう/\とした」
③「一つ見越してやらうか。俺に見越されると、三年生きぬぞ」
④「ひうどろ/\/\/\、もゝんがあ」
⑤大なる女の首、けら/\/\と笑ふ。
⑥「誰だと思ふ、蝦蔵《ゑびざう》が暫凧《しばらくだこ》、あゝつがもねへ」
⑦「申し/\お爺さん、私ハ怖くハ無いわいな」
⑧「なめら三宝《さんぼう》、又被つた」
⑨「のう、怖や、恐ろしや、助け給へ、南無阿弥陀仏《なむあミだぶつ》」
【現代語訳】
①慳貪じじは、悪事を企《たくら》む考えがますます増して、「こうなったら、手っ取り早く、正直じじの家に忍び込んで、宝物が入った葛籠《つづら》を盗もう」と、正直じじの家に忍び込んで、簡単に葛籠を盗みました。
慳貪じじが葛籠を開くと、宝物ではなく、色々な化け物が出て来て、慳貪夫婦を苦しめました。
②化け物たち「葛籠から出たらスッキリした」
③見越入道《みこしにゅうどう》「ここでお前を見越してやろうか[上からのぞいて見てやろうか]! 俺に見越されると、三年以内に死ぬんだぞ!」
④行灯《あんどん》の化け物「ひゅうどろどろ、ももんがあ!」
⑤大きな女の首[けらけら女(大首)]が、「けらけらけら」と笑います。
⑥凧の化け物「俺を誰だと思う、市川蝦蔵《いちかわえびぞう》が「暫《しばらく》」を演じている姿を描いた凧だぞ! ああ、つがもねえ[「バカバカしい」の意。市川家代々の芝居の決めゼリフ]!」
⑦お猪口《ちょこ》の化け物「もしもし、お爺さん、私は全く怖くないですよ」
⑧慳貪じじ「なめら三宝[驚いた時に発する言葉。南無三宝《なむさんぼう》]! またしてもやられた」
⑨慳貪ばば「ああ、怖い、助けて下され、南無阿弥陀仏《なむあミだぶつ》」
【解説】
数ある江戸時代の「花咲かじいさん」系の絵本の中から、この作品を読むことにしたのは、この化け物が出て来るシーンがあったからです。
妖怪好きだもんでヾ(๑╹◡╹)ノ"
葛籠から化け物が出るのは、「舌切り雀」でよく見られるシーンですね。
以前読んだ「舌切り雀」系の絵本にも、見越入道とケラケラ女は登場しています。
kihiminhamame.hatenablog.com
凧に描かれているのは「いちかわえびぞう」さんですが、市川海老蔵さんではなく市川蝦蔵さんです、読みは同じですが漢字表記が違います。
「暫」は市川家の代表的な演目です。
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「ひゅうどろ」はお化けが出て来る時に、今でも使う擬音ですね。
「ももんがあ」は、化け物が人を驚かす時に発する言葉で、「ももんじい」とも言います。
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久々に行灯の化け物が見られて良かったですw
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お猪口の化け物も久々ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
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犬や臼や灰などを使わず、直接実力行使でお宝を奪いに行った慳貪じじですが、これも福犬が守ってくれたのでしょうか、葛籠の中からは化け物が出て来て、慳貪夫婦をとっちめるのでした。
さあ、こうなったらもう、慳貪じじの悪心に歯止めはききません。
次回、とうとう正直じじを〇しに行くのですが、はてさて。
うわあ、僕も葛籠の中に入りたかったなあヾ(๑╹◡╹)ノ"
じゃあ、この葛籠の中にお入りなさい。ちゃんとフタを閉めて、鍵もかけてあげるから。
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5月3日は北見花芽の誕生日ヾ(๑╹◡╹)ノ"
◆インフォメーション
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