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[3]水戸黄門、八幡の藪知らずへ!~江戸時代に書かれた水戸黄門漫遊記~

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『義公黄門仁徳録《ぎこうこうもんじんとくろく》』[江戸中後期成立か。呑産通人(呑産道人)作]巻二十七「下総国八幡宮藪を八幡知らずと申す事」
国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA) 
新日本古典籍総合データベース

【原文】

 殊《こと》にハ、夜中に及びても、たとえ闇夜たりと言へども、藪の内明るき事、白昼の如く。
 然《さ》れども、夜八ッ頃と思しき頃ハ、真の闇にて、一向に道も知れず。
 稍《やや》一時《いつとき》程も経ちて、又明るき事、昼の如し。
 然《さ》れば此の浄念、其の暗きを以て夜と知りつゝ、只一心に佛名を唱へて、斯《か》くの如く元の道へ出るたるハ、甚《はなは》だ訝《いぶか》しき事なりと思い、其の邊のと或《あ》る一家へ立ち寄り、右の始末一/\物語りけれバ、宿の主《あるじ》申す様《やう》、
「其れハ、此方《こなた》ハ、命を拾へ給ふ物なり。
 昔より此の藪へ入りし者、再び生きて返りし者も無く、又ゑつて[入つて]再び出たる無し。
 殊に此の程、何処《いづく》とも無く、鉦《かね》の音聞こえしが、扨《さて》ハ此方様にて有りしよな。
 凡《およ》そ日数十五日程、鉦の音止む間無けれバ、此の近邊の者ハ怪しみ思ふ所なり」
 と申しけれバ、浄念も大きに驚き、
「誠に是《これ》、我が一命を逃れしも、佛力の為《な》す所なり」
 と愈々《いよ/\》信心、心を發し、終《つい》に其の名を天下に上げし者なり。
 然《さ》れバ、その後、是ハ八幡の八幡知らずと唱へしと也。

 然るに、義公様、此の事を思し召し出され、御側《おそば》御近習《ごきんじゆ》の衆に仰セ出ださるゝハ、
「此の邊に、彼《か》の八幡知らずと申す処《ところ》なり。
 予、此の八幡知らずに入りて、其の奥を定むべしと思ふなり。

【現代語訳】

 とりわけ、夜中になっても、たとえ世間が闇夜であったとしても、藪の中明るく昼間のようでした。
 しかし、夜の八《や》つ頃[午前二時頃]と思われる時になると、真っ暗闇になり、全く足元もわかりません。
 しばらくして一時《いっとき》[二時間]程も経つと、また昼間のように明るくなります。
 なので、この浄念は、その真っ暗闇になる時に、夜が来た確認しながら、ただひたすら仏の名唱えて歩き続け、元の場所出たのでした。
 これはとてもヘンテコな事だと思い、その辺りにあった立ち寄って、事の一部始終を語ると、家の主人は、
「それは、まあ、あなた様は命拾いをなされました。
 からこの藪に入った者で、再び生きて帰った者いません
 また、この藪に入った者で、再び藪から出ることができた者いません
 なるほど、近頃どこからともなく、鉦の音聞こえたのですが、さては、あなた様でしたか。
 およそ十五日ほど、鉦の鳴る音止まなかったので、この辺りの者不気味思っていたのです」
 と言いました。
 浄念はとても驚き
「まさしく、命拾いをしたのは、仏の力によるものである」
 と、ますます、信心の思い深くし、とうとう浄念その名天下広く知られる僧になったのでした。

 こうして、その後、この竹藪は、「八幡の八幡知らず」名付けられたのでした。
 さて、義公様[黄門様]このこと思い出しになられ、お側近くに仕える家臣たちに、
この辺りは、あの八幡知らずというである。
 ワシはこの八幡知らず入って、そのどうなっているか見定めたいと思う。

【解説】

 藪の中闇夜であっても昼間のように明るいという。

 ただ、午前二時から二時間だけ真っ暗になるので、それをたより浄念一日カウントしたようです。

 浄念生きて藪から出られたのは仏の力考え、それからますます修行に励み誰もが知る立派な僧になったようです。

 その後、浄念のエピソードきっかけに、竹藪「八幡の八幡知らず」名付けられたようですが、「八幡にあるにもかかわらず、八幡ではない謎の場所」と言った意味合いでしょうか。

 黄門様はこの八幡知らず入る言い出しましたが、はてさて。

  この人たちも三目黄門のお供だよ~ヾ(๑╹◡╹)ノ"

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