『義公黄門仁徳録《ぎこうこうもんじんとくろく》』[江戸中後期成立か。呑産通人(呑産道人)作]巻二十七「下総国八幡宮藪を八幡知らずと申す事」
※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA)
新日本古典籍総合データベース
【原文】
俄かに一天、掻き曇り、只今まで白昼なりしに、真の闇となりて、更に物ゝ何色かも分からずと雖《いへど》も、物に動じ給わぬ御氣性故、御足に任せられて進み給ふに、暗くて定かに知れねども、一方《いつぼう》壱丈《いちぜう》ばかりも有らんと思しき洞穴《ほらあな》の様《やう》なる穴有り。
世の常の者ならバ、是に恐れて立ち帰りもすべきに、義公様御めづ[怖《お》めず]臆せづ、其の穴の内へ入り給ふに、壱間《いつけん》ばかりも行《ゆ》く様《やう》に覚へ給ふに、凡《およ》そ深さ三、四丈程も有るべくと思し召す程に、穴の底へ落ち給ひ、暫《しばら》く御心も付かざりしに、稍《やゝ》二時《ふたとき》計《ばか》りも経ちつらんと思し召す頃、漸《やう/\》御心の内にて、
「扨《さて》/\、是ハ深き洞穴なり。
殊に闇夜にて、更に物ゝ何色も分かち無く、是ハ甚《はなは》だ難澁《なんじふ》なり。
然《さ》りながら、是迄来たりて其の侭《まゝ》に致し、此の奥を見届けざる事の有るべきや。
仮令《たとえ》変化《へんげ》の業《わざ》たりとも、従三位《じゆさんみ》の官位を以て通行致さんに、恐るゝ事無し」
と一人 呟《つぶや》き給ひ、御足に任セられ、次第/\に進み給ふに、凡そ道十町余りも御拾《おひろ》い有りし所、穴の内、何方《いづかた》へ行《ゆ》くべき道無し。
【現代語訳】
急に空全体が暗くなって、たった今まで昼間だったのが、真っ暗闇になりました。
全く物が何色なのかも分からなくなりましたが、義公様[黄門様]は、物事に動じない元々のご性分なので、お足がおもむくままに、お進みなりました。
すると、暗くてはっきりとは分からないのですが、直径が一丈ぐらい[約3メートル]あると思われる洞穴のような穴がありました。
世の中の普通の人なら、これを恐れて引き返すのでしょうが、義公様は恐れず、おどおどもせず、その穴の中にお入りになりました。
義公様は、一間《いっけん》ぐらい[約2メートル]進んだと思われる所で、深さが三、四丈ぐらい[約10メートル]あると思われる、穴の底に落ちてしまわれました。
しばらく、気を失っていらっしゃいましたが、二時《ふたとき》ぐらい[約4時間]経ったと思われる頃、やっとお気づきになられて、
「さてさて、これは深い洞穴である。
その上、闇夜なので、全く物が何色かすら分からず、これはとても困ったものだ。
しかしながら、ここまで来たにもかかわらず、諦めてそのまま引き返し、この奥を見届けないなどということは、決してあってはならない。
たとえ化け物の仕業であっても、従三位《じゅさんみ》の官位の威光で通行すれば、恐れる事はなにもない」
と一人でつぶやきになり、お足がおもむくままに、少しずつお進みになると、だいたい十町余り[約1キロ]もお歩きになった所で、穴の中は進める道がどこにもなくなってしまいました。
【解説】
真っ暗闇の中、洞穴に入って、十メートルも落下してしまう黄門様。
さすがの黄門様も、もはやこれまでかと思いきや、四時間後に何事も無かったかのように復活して、再び歩き始めます。
隠居後で高齢のはずなのに、恐ろしいほどのタフネスぶりです。
これなら化け物にも勝てるかもヾ(๑╹◡╹)ノ"
黄門様は穴に落ちたけど、北見花芽は僕と恋に落ちたんだよねヾ(๑╹◡╹)ノ"
ちょっと待ってて、今、君を埋める穴を掘ってるからヾ(๑╹◡╹)ノ"
三つ目のLINEスタンプ、発売しました!
store.line.me
◆北見花芽のほしい物リストです♪
◆拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(はてなIDをお持ちでない方でも押せますし、コメントもできます)
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪