【前回のあらすじ】
内蔵之助が帰ってしまったので、釆女は一人寂しく、頼母を思う歌を詠むのでした。
【初めての方へ】
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
又、東隣に琴《こと》掻《か》き鳴らして、
また、東隣で琴を弾いて、
「逢《あ》ひは近ふて、語りハせいで[急《せ》いて?]、千賀塩竈《ちがのしほがま》」
「千賀塩竈《ちがのしおがま》(=千賀浦《ちがのうら》)のあの人とは、近くにいるから会えるけれど、話すことはなかなかできません」
[「千賀塩竈《ちがのしおがま》」は「近し」に掛かる歌枕]
等《など》、耳麗《みゝうるは》しう歌ふを聞くにも、
などと、誰かが美しい歌声で歌っていました。
それを聞くと、
「哀《あは》れ、我が心にも良く言ひ叶《かな》へりや。
「ああ、この歌は、私の気持ちをよく表していますな。
我に等しき人も等《など》無からんにと思へバ、斯《か》ゝる歌を文作《ふづく》り致《いた》す人も有り。
私と同じ境遇の人などいないと思っていましたが、このような歌を作る人もいるのですなあ。
憎からず/\」
良い感じでございます」
と独《ひと》り言《ご》ちして有りける内にも、漸う《やう/\》丑三《うしみ》つにも為《な》りぬ。
と采女は、独り言をしました。
そのうちに、時が過ぎて丑三つ[午前2時ごろ]にもなりました。
門《かど》の辺《ほと》りに衣《ころも》の音《おと》なひ、そよ/\と聞こへぬ。
すると、門の辺りで、そよそよと、着物が擦《す》れる音がしました。
「誰《たれ》なるらん」と聞けバ、内蔵之助、又、訪《たづ》ね来たりぬ。
「どなたでしょうか?」
と聞くと、内蔵之介が再び訪ねてきたのでした。
何となく宵《よひ》のあらまし、胸打ち騒ぎ、心ならずに、言ひ寄れバ、
采女は、先ほどの事があったので、ドキドキして、気持ちが落ち着きません。
内蔵之介は、話しながら近づいてきました。
「扨《さて》、如何《いか》なりし縁にしやありけん、今宵彼《か》の人、御身の悩みの事を尋《たづ》ね給ひ、
「さて、不思議な縁があったものですな。
あの後、偶然にも、あの人(=頼母)が、あなた様(=采女)の病状の事を、私にお尋ねにいらっしゃいました。
『心は何と侍るぞ。
『采女殿の、ご気分はどのような感じですか?
御前に貞観政要《でうぐハんせいよう》の興行《かうぎやう》暇《いとま》無く、一日より後ハ訪れもせず、良く心得て』
殿(=唐橋侍従)の御前で、『『貞観政要《じょうがんせいよう》』』[唐の太宗の言行録]の講読会がありまして、時間が取れず、一日しかお見舞いに行けていないことを、どうぞご理解くださいませ』
等《など》、言ひし言葉を、流れに棹《さほ》を得し舩人等《ら》が心地して、
などと、あの人(=頼母)は、おっしゃいました。
私は、流れに棹《さお》さす船人たちの気持ちがして(=これはチャンスだと思って)、
そよ、其の事と無く、おどろ/\〈『そよ、其の事』と、おろ/\〉語り寄れバ、
『そう、その事でございます』
と、あなた様(=采女)が好意を持っていることを、それとなく伝えました。
『あな、常《つね》ならぬ戯《たはぶ》れ事や』
『ああ、とんでもない冗談をおっしゃいますこと』
と言ひて、又御前へ出ぬ。
と言って、あの人(=頼母)は、殿(=唐橋侍従)の御前に戻られました。
早《はや》、斯《こ》う知らせ初《そ》めし上ハ、今更、賢者振《けんじやぶ》りも由無《よしな》し。
さあ、こうやって伝えてしまったからには、今更、賢者《けんじゃ》ぶっても、仕方ありません。
遠慮《ゑんりよ》も又、前の事よ。
遠慮なんかも不要です。
只《たゞ》、果無《はかな》き鳥の跡[文字]バかりなる対面に、人の心の奥も見給へ」
ただ、くだらない和歌を書いて、想像の中でだけであの人(=頼母)に会うのではなく、直接、あの人(=頼母)の本心をお確かめください」
と、内蔵之介は言いました。
【解説】
はい、まさかの急展開です。
内蔵之介は、こともあろうか、頼母に采女が好意を持っていることを伝えてしまいました。
そして、内蔵之介は、釆女に、頼母へ気持ちを伝えるよう、そそのかします。
これは、純粋に采女のことを思っての行為なのか、それとも高度な仕返しなのか?
ここでちょっと時系列がおかしいことに気づきました。
最初に内蔵之介が釆女の元を訪れた時間帯は、「寝静まりて」とあります。
そのあと、頼母と内蔵之介が会うわけですが、まだ、頼母は貞観政要の興行の途中で、そんな寝静まった真夜中であるはずがありません。
それから、真夜中の丑三つ時に内蔵之介は釆女を再訪するので、なんだか時間的におかしいですよね。
そこで、オリジナルの『藻屑物語』と『雨夜物語』を見直してみると、『藻屑物語』の一部の写本と『雨夜物語』では、「寝静まりて」ではなく、単に「静まりて」となっていました。
「静まりて」だと、「日が暮れて日中の業務が終わり、屋敷の中が静かになった頃」と解釈できて、時系列的にもおかしくはなくなるかなと。
「静まりて」って書いてあっても、写す時についつい「寝静まりて」って書いちゃいたくなる気持ち、分からなくはないですけどね。
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