【前回のあらすじ】 頼母は確保され、侍従は茨主殿司に事情聴取をさせるのでした。
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
誠に幼《いとけな》かりしより御側近ふ召し使ハれ、有り難き御情けの下に人と成《な》り侍り候へバ、
実に幼いころから大殿(侍従)のお側《そば》近くで召し使われ、ありがたくも情けを掛けていただき、一人前にしていただきました。
御馬の先《さき》にてこそ死を軽んぜんに、過世《すぐせ》の拙《つたな》き故《ゆへ》にや斯《か》ゝる有様、中/\本望《ほんもう》とは思ひ侍らず。
戦場で大殿のお馬の前で戦って、命を落とすべきなのに、前世の行いが悪かったのでしょうか、このような事になってしまい、とても不本意なことでございます。
猶《なを》/\此の上の御情けにハ、疾《と》く/\仰せ付け候ふ様《やう》に、御前へ宜《よろ》しく御披露願ひ奉る」
と言いへば、
やはり、これ以上のお情けをいただくわけにはいかないので、早く処分を仰せつけくださるよう、大殿にお伝えいただきたく存じます」
と頼母は言いました。
主殿司《とのもつかさ》打ち聞きて、
「扨《さて》、仲立ちハ無かりしや。
茨主殿司《いばらとのもつかさ》は聞いて、
「さて、式部殿に仲立ちはいませんでしたか。
斯様《かやう》の事までも心に残し給ひそ」
と有りけれバ、
このような事でさえ言い残して、心残りにされませんよう」
と尋ねると、頼母は、
「然《さ》れバとよ、此の式部ハ近き頃ほいに召し出されし童《わらハ》にて有らずや。
「そのことでございますが、式部殿は最近召し出されたばかりの若衆ではありませんか。
然《さ》有れバ人皆、面《おもて》を頷《うなづ》くバかりの様《やう》なれバ、誰やの者か頼ミ頼まれんや」
なので、家中の者とは皆、顔も見てあいさつする程度の関係しかなかったようなので、仲立ちを頼むような人はいなかったのでは」
「今一太刀《いまひとたち》」と憤《いきどお》りを励ましゝ渋川露斎法師を囲ひける心の内、情け深く又優しけれ。
と、「今すぐに刀でバッサリ斬ってやる!」と激オコの対象だったにもかかわらず、渋川露斎法師が仲立ちをしたことを隠したのは、頼母の心の内が情け深く優しいからなのでしょう。
軈《やが》て主殿司、御前へ出て、始め終ハりの事共、奏し侍れバ、
すぐに主殿司は侍従の元に赴き、頼母の証言の一部始終を申し上げました。
然《さ》無くても憎からず思召《おぼしめ》しける上に、猶《なを》此のあらましに御心留まりて、
そうでなくても侍従は頼母の事をかわいくお思いになっていた上に、更にこの証言の内容が心にキュンとお響きになって、
「教への道を専《もつハ》らにし侍る事こそ、返す/゛\も浅《あさ》からね。
「武士道をしっかり貫いており、決して浅はかな行動ではない。
先《ま》づ主殿司に預けさせ給ふ」
との仰せの有れバ、
ひとまず、主殿司にお預け致す」
と仰せ付けられました。
則《すなハ》ち頼母を誘ひて、屋形《やかた》の内一間を設《しつら》い、其夜は様々/゛\労《いたわ》りけるとなん。
すぐに主殿司は頼母を連れて屋敷の一間をあてがい、その夜は色々とねぎらったのでした。
物《もの》〈扨《さて》〉、討たれし子の父なめりける人ハ、侍従の連枝《れんし》の許《もと》に後藤監物《ごとうけんもつ》とて心馳《こころば》し有る武士にて、憚《はゞか》らず召し使ひ給ひしが、
さて、討たれた式部の父にあたる人は、侍従の兄弟に大切に召し使われている、後藤監物《ごとうけんもつ》という気骨ある武士でした。
[「連枝」はオリジナルの『藻屑物語』『雨夜物語』では「小笠原右近大夫(一般には「小笠原貞慶」のことを指すが、この時期にはすでに故人)」、「後藤監物」は「細野民部少輔」となっている]
【解説】
式部殺害が致し方ないことが分かったので、頼母は侍従のお気に入りの若衆でもありますし、とりあえず処分は保留となりました。
それにしても、ぶち殺すつもりだった露斎のことをかばうなんて、頼母はお人好しと言うか何と言うか。
さて、式部の父が出てきたようですが、子供のケンカに親が出てくるとロクなことがないんですよね。。。
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僕は北見花芽が何をしても必ずかばうからね
ヾ(๑╹◡╹)ノ"

