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[37]消える二つの命 ~『男色義理物語』~

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 【前回のあらすじ】 頼母の後追いをしようとした采女を、介錯の刑部左衛門はたしなめますが、釆女は抵抗します。

 

 【初めての方へ】 原典の画像だけでなく、スクロールすると、ちゃんと活字の原文(可能な限り漢字に直し、送り仮名と振り仮名を補足しています)と現代語訳と解説がありますよヾ(๑╹◡╹)ノ"

 スマホでご覧の方へ】 諸事情により、PC版と同じデザインになっています。なるべくスマホでも読みやすいようにはしているのですが、もし、字が小さいと感じた場合は、スマホを横にして拡大すると読みやすいと思います。


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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。

 

【原文】【現代語訳】

 又人/゛\毎《ごと》に『情け無く斯く迄留むべき事は有らざされども、偏《ひとへ》に身の難《なん》を顧《かへり》みんとこそ』など取り/゛\言ひ嘲《あざ》けられんも口惜し。
 また、どの人も、
『情け容赦《ようしゃ》なく、こうまでして止める必要はなかったのに、釆女の後追いを止めたのは、刑部が自分の身に罪が及ぶのを恐れたからだろう』
 などと、口々に言い罵《ののし》るだろうと思うと、悔しくて仕方ありません。


『止め得ぬ』とばかりにて、老《おひ》の頭《かうべ》を刎《は》ねられんハ、何惜しむべき齢《よハひ》ぞや。
采女の後追いを止めることができなかった』
 と処罰を受けて、私のような老いぼれの首が刎ねられたとしても、私はもう何も惜しむこともない年齢です。


 まだ片言の鴬《うぐひす》の谷《たに》の戸 出《いづ》る人/゛\さへ、義《ぎ》によつて情けを変ぜず、二つ無き命を失うに、況《ま》して老木《おいき》の桜昔に帰る春《はる》も有らバこそ[能『西行桜』より]、後の禍《わざわひ》ハ良し。
 まだ谷の入り口から出てきたばかりで、うまく鳴くこともできない若いウグイスのような人々(頼母と采女)でさえ、義理を重んじて気持ちを変えず、二つとない命を失うと言うのに、なおさら老木の桜(刑部左衛門)も、花を咲かせていた昔の春に戻った気分になり、あとで、どんな処罰を受けようが構いません。

 兎《と》も有れ角《かく》も有れ、如何に情け無ふ留め侍らんや。
 今は心静かに」
 兎にも角にも、どうして情け容赦なく後追いを止めることができましょうか。
 今は心静かに思いを遂げて下され」


 と泪《なみだ》を浮かめ立ち退けバ、頼母、采女に寄り添ひて、
 と刑部左衛門は涙を浮かべて立ち退きました。
 頼母は采女に寄り添い、


「扨《さて》も浅からぬ御心当て、数《かぞ》うべからず。
「それにしても、これまで数えきれないほど多くのお心使いをいただきました。

 予《かね》てのあらましの如く、後《のち》の世にても必ず一つ台《うてな》に半座を空けて待つべし。
 前から言っていたように、後の世でも必ず同じ蓮の台に座りましょう、半分空けて待っています。

 早《は》や追い付き給へ。
 余りに時移り侍るまゝに」
 早く追い付いてくだされ、時間はすぐに経ってしまいますから」

 とて、肌押し寛《くつろ》げて、左の脇に突き立てけれバ、采女聞きも敢《あ》へず、
 と言って、着物を緩めて肌を出し、左の脇に刀を突き当てました。
 すると、釆女は頼母の言葉を聞き終わらないうちに、


「我こそ先《さき》に立つて、三途《さんづ》の瀬踏《せぶ》みして待またん」
「私こそ先に行って、三途の川の深さを確かめて待ちましょう」

 とて、同じく左の脇に突き立て、治世《ぢせい》〈辞世〉と思しくて、
 と言って、同じく左の脇に刀を突き立てて、辞世の句と思われる歌を詠みました。

「諸共《もろとも》に いざゝは我も 小余綾《こゆるぎ》の[「急ぎ」に掛かる枕詞] 急ぎて越ゑん 四手《しで》死出の山川」[『雨夜物語』には采女の辞世の句なし]
「さあ、私も一緒に急いで死出の山と三途の川を越えましょう」

 右の方《かた》へ引き回しけるが、刺し違へて臥しにける。
 頼母と采女は刀を右の方に引き回し、それからお互いに刀を刺し合って息絶えました。

「君一日の恩《おん》の為《ため》に妾《しやう》が百年《もゝとせ》の身を誤《あやま》つ」[白楽天の詩より]と言ゝしも是ならんかし。
「男が一日情けをかけたばかりに、女は一生不遇の身となった」[「頼母が少しの情けをかけたばかりに、釆女は命を落とすことになった」的な意味合いで引用されているか]というのは、こういうことでしょうか。

 悼《いた》むべし、悲しむべし。
 二人の死は嘆き悲しむべきものです。

※『男色義理物語』は、誤字がとても多いので、明らかな誤字は〈〉で修正してます。


 【解説】

 釆女の鬼気迫る言葉に圧倒されたのか、刑部左衛門はあっさりと考えを変えて、采女の後追いを止めるのをやめます。
 とうとう二人は切腹の後、刺し違えて亡くなってしまいました。。。

 はい、まだ終わってません、物語は続きます、そう、あの方のことを忘れてはいませんか?


 【挿絵】



 左ページは、切腹用の刀を前に手を合わせる頼母と、後ろで刀を構える刑部左衛門。
 下の方に居るのは見物人でしょうか。

 右ページは、和尚の後ろの木に隠れて、機会をうかがう采女の姿が描かれています。
 和尚の右には二人の若い僧侶、左は検視役でしょうか。


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 三つ目が三途で待ってるって?ヾ(๑╹◡╹)ノ"

 違う違う、三途じゃなくて三時のおやつを待ってるのヾ(๑╹◡╹)ノ"


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