【前回のあらすじ】 頼母の後追いをしようとした采女を、介錯の刑部左衛門はたしなめますが、釆女は抵抗します。
【初めての方へ】 原典の画像だけでなく、スクロールすると、ちゃんと活字の原文(可能な限り漢字に直し、送り仮名と振り仮名を補足しています)と現代語訳と解説がありますよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
又人/゛\毎《ごと》に『情け無く斯く迄留むべき事は有らざされども、偏《ひとへ》に身の難《なん》を顧《かへり》みんとこそ』など取り/゛\言ひ嘲《あざ》けられんも口惜し。
また、どの人も、
『情け容赦《ようしゃ》なく、こうまでして止める必要はなかったのに、釆女の後追いを止めたのは、刑部が自分の身に罪が及ぶのを恐れたからだろう』
などと、口々に言い罵《ののし》るだろうと思うと、悔しくて仕方ありません。
『止め得ぬ』とばかりにて、老《おひ》の頭《かうべ》を刎《は》ねられんハ、何惜しむべき齢《よハひ》ぞや。
『采女の後追いを止めることができなかった』
と処罰を受けて、私のような老いぼれの首が刎ねられたとしても、私はもう何も惜しむこともない年齢です。
まだ片言の鴬《うぐひす》の谷《たに》の戸 出《いづ》る人/゛\さへ、義《ぎ》によつて情けを変ぜず、二つ無き命を失うに、況《ま》して老木《おいき》の桜昔に帰る春《はる》も有らバこそ[能『西行桜』より]、後の禍《わざわひ》ハ良し。
まだ谷の入り口から出てきたばかりで、うまく鳴くこともできない若いウグイスのような人々(頼母と采女)でさえ、義理を重んじて気持ちを変えず、二つとない命を失うと言うのに、なおさら老木の桜(刑部左衛門)も、花を咲かせていた昔の春に戻った気分になり、あとで、どんな処罰を受けようが構いません。
兎《と》も有れ角《かく》も有れ、如何に情け無ふ留め侍らんや。
今は心静かに」
兎にも角にも、どうして情け容赦なく後追いを止めることができましょうか。
今は心静かに思いを遂げて下され」
と泪《なみだ》を浮かめ立ち退けバ、頼母、采女に寄り添ひて、
と刑部左衛門は涙を浮かべて立ち退きました。
頼母は采女に寄り添い、
「扨《さて》も浅からぬ御心当て、数《かぞ》うべからず。
「それにしても、これまで数えきれないほど多くのお心使いをいただきました。
予《かね》てのあらましの如く、後《のち》の世にても必ず一つ台《うてな》に半座を空けて待つべし。
前から言っていたように、後の世でも必ず同じ蓮の台に座りましょう、半分空けて待っています。
早《は》や追い付き給へ。
余りに時移り侍るまゝに」
早く追い付いてくだされ、時間はすぐに経ってしまいますから」
とて、肌押し寛《くつろ》げて、左の脇に突き立てけれバ、采女聞きも敢《あ》へず、
と言って、着物を緩めて肌を出し、左の脇に刀を突き当てました。
すると、釆女は頼母の言葉を聞き終わらないうちに、
「我こそ先《さき》に立つて、三途《さんづ》の瀬踏《せぶ》みして待またん」
「私こそ先に行って、三途の川の深さを確かめて待ちましょう」
とて、同じく左の脇に突き立て、治世《ぢせい》〈辞世〉と思しくて、
と言って、同じく左の脇に刀を突き立てて、辞世の句と思われる歌を詠みました。
「諸共《もろとも》に いざゝは我も 小余綾《こゆるぎ》の[「急ぎ」に掛かる枕詞] 急ぎて越ゑん 四手《しで》〈死出〉の山川」[『雨夜物語』には采女の辞世の句なし]
「さあ、私も一緒に急いで死出の山と三途の川を越えましょう」
右の方《かた》へ引き回しけるが、刺し違へて臥しにける。
頼母と采女は刀を右の方に引き回し、それからお互いに刀を刺し合って息絶えました。
「君一日の恩《おん》の為《ため》に妾《しやう》が百年《もゝとせ》の身を誤《あやま》つ」[白楽天の詩より]と言ゝしも是ならんかし。
「男が一日情けをかけたばかりに、女は一生不遇の身となった」[「頼母が少しの情けをかけたばかりに、釆女は命を落とすことになった」的な意味合いで引用されているか]というのは、こういうことでしょうか。
悼《いた》むべし、悲しむべし。
二人の死は嘆き悲しむべきものです。
※『男色義理物語』は、誤字がとても多いので、明らかな誤字は〈〉で修正してます。
【解説】
釆女の鬼気迫る言葉に圧倒されたのか、刑部左衛門はあっさりと考えを変えて、采女の後追いを止めるのをやめます。
とうとう二人は切腹の後、刺し違えて亡くなってしまいました。。。
はい、まだ終わってません、物語は続きます、そう、あの方のことを忘れてはいませんか?
【挿絵】


左ページは、切腹用の刀を前に手を合わせる頼母と、後ろで刀を構える刑部左衛門。
下の方に居るのは見物人でしょうか。
右ページは、和尚の後ろの木に隠れて、機会をうかがう采女の姿が描かれています。
和尚の右には二人の若い僧侶、左は検視役でしょうか。
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違う違う、三途じゃなくて三時のおやつを待ってるのヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
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