うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

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【再読】化け物寺 その2 ~『曽呂里物語』巻四の四「万の物年を経ては必ず化くる事」~

 

 

前回の続きですヾ(๑╹◡╹)ノ"

えんよう坊は、こんかのかねんけんやのばとうそんけいが三ぞくごんざんのきゅうぼく という化け物仲間お・も・て・な・しするために、関東の僧捕って食って酒盛りをすると言う、化け物にとって素晴らしい事をするつもりです。

果たして関東の僧運命はいかに!ヾ(๑╹◡╹)ノ"

前回同様、『曽呂里物語』は、ここに載せれる画像が無かったので、オリジナルをご覧になりたい方は、下のリンク先でご確認くださいね。
www.wul.waseda.ac.jp

翻刻

かの僧ハもとよりかくごしたる事ながらあれらかゑじ
きにならんこと口おしきしだいなり。さるにてもばけものゝ
名字をたしかにきくに。まづゑんよう坊といふハ丸へうたんな
るへし。こんかのこねんハひつじさるの方の河のなまつ。けんや
のばとうハいぬゐの方の馬のかしら。そんけいの三そくとハた
つミの方の三つあしのかいる。ごんざんのきうぼくとハうしとら

の方のふるきくち木のふしたるにてぞ有らん。かれらごときの
ものいかにこうをへたれハとて何ほとの事か有へき。つねに
すぢかねを入たる棒《ばう》をつきてきたり。かのばうにていづれ
一うちのしやうぶなるべしとて。大 音聲《おんじやう》を以てをの/\変《へん》
化《げ》のほとをしりたり。まへ/\の住寺そのこんげんをしら
すしてつゐにむなしくなりぬ。我ハそれにハ事かハるへし
手なミの程をミせんとて。かのばうを取なをし。爰にてハ
うちたふしかしこにてハおひつめ。丸べうたんをはじめて
みな一うちつゝにうちわり。四つの物ともをさん/\にうちく
だき。其外けんぞくのばけ物とも。あるひハすふくへすりこ
ばちのわれ。かけざはちすりこぎ。あしたぼくりござのき
れ。ミそこしいかき竹ずんきり。数百年をへたる物共。そのかた
ちをへんじてつきまとひたる所なり。かのばうに一あてあて
られて何かハすこしもたまるへき。一つものこらすうちくたき


てぞすてたりける。夜あけてにゐがもとよりつかひをたてゝ
見れハ。僧ハつゝがもなかりけり。さてにゐハ寺にゆきてと
ひけれハ。有し事共くハしくかたる。まことに智者なりとて
すなハち彼僧を中興《ちうこう》かい山として。今にたへす古跡《こせき》と
なり。仏法はんじやうのれい地とそ成にける

【現代語表記】

彼の僧は、
「元より覚悟したる事ながら、彼等《かれら》が餌食《えじき》にならん事、口惜しき次第なり。
然《さ》るにても、化け物の名字を確かに聞くに、まず、「えんよう坊」と言うは、丸瓢箪《まるびょうたん》なるべし。
「こんかのこねん」は未申《ひつじさる》の方の河の鯰《なまず》、「けんやのばとう」は戌亥《いぬい》の方の馬の頭《かしら》、「そんけいの三ぞく」とは辰巳《たつみ》の方の三つ足の蛙《かいる》、「ごんざんのきゅうぼく」とは丑寅《うしとら》の方の古き朽《く》ち木の伏したるをにてぞ有らん。
彼等ごときの物、如何に劫《こう》を経たればとて、何程の事が有るべき。
常に筋金《すじがね》を入れたる棒《ぼう》を突きて来たり。
彼の棒にて何《いず》れも一《ひと》打ちの勝負なるべし。」
とて、大音声《だいおんじやう》を以て、
「各々《おのおの》変化の程を知りたり。
前々《まえまえ》の住寺、其の根源《こんげん》を知らずして、終《つい》に虚《むな》しくなりぬ。
我は其れには事変わるべし。
手並みの程を見せん。」

とて、彼の棒を取り直し、爰にては打ち倒《たう》し、彼処《かしこ》にては追い詰め、丸瓢箪を始めて、皆一打ちずつに打ち割り、四つの物共を散々に打ち砕き、其の外 眷属《けんぞく》の化け物共、或《ある》いはすふくべ[素瓢?]、擂小鉢《すりこばち》の割れ、欠けざ鉢[座鉢?]、擂粉木《すりこぎ》、足駄木履《あしだぼくり》、茣蓙《ござ》の切れ、味噌漉《みそこし》、笊籬《いかき》、竹寸切《たけずんぎり》、数百年を経たる物共、其の形を変じて付き纏《まと》いたる所なり。
彼の棒に一当て当てられて、何かは少しも堪《た》まるべき。
一つも残らず砕きてぞ捨てたりける。
夜明けて、新居が許より使いを立てて見れば、僧は恙《つつが》も無かりけり。
扨、新居は寺に行きて問いければ、有りし事共詳しく語る。
「真に智者なり」とて、則《すなわ》ち彼の僧を中興開山《ちゅうこうかいざん》として、今に絶えず古跡《こせき》となり、仏法繁盛の霊地とぞ成りにける。

【現代語訳】

 関東の僧は、

「最初から覚悟していた事とはいえ、こいつらの餌食《えじき》になるのは、何とも悔しい。

 そういえば、確かにはこの化け物たちの名前を聞いた。

 まず、「えんよう坊」と言うのは、丸瓢箪《まるびょうたん》だろう。

「こんかのこねん」未申《ひつじさる》の方角のに棲《す》む鯰《なまず

「けんやのばとう」戌亥《いぬい》の方角の野原に転がる馬の頭の骨

「そんけいの三ぞく」は辰巳《たつみ》の方角の渓谷《けいこく》に棲《す》む三つ足の蛙

「ごんざんのきゅうぼく」とは丑寅《うしとら》の方角の枯れて倒れた古い木だろう。


 なあんだ、その程度の物がいくら長い年月を経て化け物になったと言っても、大したことはないだろう。

 はこういう時のためにいつも、筋金《すじがね》[細長い金属]を入れたを突いて歩いている。

 このでどいつもこいつも、一撃決着を付けてやろう。」

 と思いました。

 そして、大きな声で、

お前たち正体がわかったぞ!

 前の住職は、お前たち正体がわからなくて、結果、恐れて抵抗できずにお前たちに食われて亡くなってしまった。

 だが、はそういうわけにはいかないぞ!

 私の力を思い知らせてやる!」

 と言って、筋金入りの棒を持ち直し、こっちでは打ち倒し、あっちでは追い詰めて、丸瓢箪を始めとして、ほかの四つの物どもも、みんな一撃だけで打ち割り、粉々に打ち砕きました。

 そのほか、とっくりヒビが入ったすり小鉢欠けた食器すりこぎ高下駄ゴザの切れ端味噌漉《みそこ》しザル竹で編んだカゴ竹を輪切りにした器など、数百年を経たが化けて、丸瓢箪ども子分になっていました。

 これらの子分の化け物も、筋金入りの棒一撃をくらっては、どうすることもできませんでした。

 関東の僧は一つも残らず砕いて捨てたのでした。

 夜が明けて、新居氏のもとから使いがやって来て様子を見ると、関東の僧無事でなんともありませんでした。

 それを聞いて新居氏に行き、関東の僧にどういうわけか尋ねると、関東の僧昨夜の出来事を詳しく語りました。

 新居氏は、「本当に賢いお方だ!」とほめたたえました。

 そのまま関東の僧は、この山寺中興開山《ちゅうこうかいざん》[廃れた寺を復興させた人]となりました。

 山寺は現在までも絶える事がなく続いて、長い歴史のある場所となり、仏教が栄える神聖な地となったのでした。

【解説】

はい、本文の内容だけでは、よく分からないので、化け物の正体の謎解きをもうちょっと詳しく説明します。

化け物の正体名前漢字に直すと判明します。

方角に関しては、当時は時刻や方角十二支で表していたことを念頭に置いてください。
次の図と照らし合わせると、お分かりいただけるでしょう。

f:id:KihiminHamame:20201105174214j:plain

「えんよう坊」漢字で書くと「円揺坊」
「円揺」「丸瓢箪」の別名だそうです。

「こんかのこねん」漢字で書くと「坤河の小鯰」[「坤家」「古鯰」説もあり]
「坤[訓読みだと「ひつじさる」]」イコール「未申」で、南西の方角を指します。

「けんやのばとう」漢字で書くと「乾野の馬頭」[「乾谷」説もあり]
「乾[訓読みだと「いぬい」イコール「戌亥」で、北西の方角を指します。

「そんけいの三ぞく」漢字で書くと「巽渓の三足」
「巽[訓読みだと「たつみ」イコール「辰巳」で、南東の方角を指します。

「ごんざんのきゅうぼく」漢字で書くと「艮山の朽木」
「艮[訓読みだと「うしとら」」イコール丑寅で、北東の方角を指します

なお、「巽渓の三足」には「蛙」という言葉が入っていませんが、当時、三本足と言えば蛙の妖怪というイメージがあったようです。
八咫烏《やたがらす》も三本足ですが、ここでは渓谷というイメージからは連想されないので。

三本足の蛙霊力があったとされ、元は三本足の蛙の姿をした中国「青蛙神《せいあじん》」から来ているようです。
※青蛙神は妖怪というより、縁起が良い神様です。

織田信長「三足《みつあし》の蛙」という香炉を愛用していて、本能寺の変の前には「三足の蛙」が鳴き出したそうです。
今でも本能寺の宝物館展示されているので、一度実物を見てみたいものです。www.kyoto-honnouji.jp

【挿絵】(模写)
f:id:KihiminHamame:20201105174851j:plain
※勝手に色を付けて説明を加えましたヾ(๑╹◡╹)ノ"

【参考文献】

◆『怪異小説集』

dl.ndl.go.jp

◆『江戸怪談集〈中〉』

江戸怪談集〈中〉 (岩波文庫)

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  • 発売日: 1989/04/17
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三つ目コーナー

みんな忘れてると思うけど、僕の名前覚王山通の三目美男」だからね!ヾ(๑╹◡╹)ノ"

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三目醜男間違いだろヾ(๑╹◡╹)ノ"

 

 

 

◆インフォメーション

「を知る通信」さんに、「あなたの家の中にいるかもしれない衝撃の妖怪五選」という記事を寄稿しましたので、ぜひご覧ください!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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