【前回のあらすじ】
采女は頼母への思いを歌にして、心を慰めるのでした。
【初めての方へ】
原典の画像だけでなく、スクロールすると、ちゃんと活字の原文(可能な限り漢字に直し、送り仮名と振り仮名を補足しています)と現代語訳と解説がありますよヾ(๑╹◡╹)ノ"
【スマホでご覧の方へ】
諸事情により、PC版と同じデザインになっています。なるべくスマホでも読みやすいようにはしているのですが、もし、字が小さいと感じた場合は、スマホを横にして拡大すると読みやすいと思います。
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
(「手に鳴らす 哀れ調べを してしかな[得《ゑ》てしがな?]) 恋の乱れの 束《つか》ね緒《を》にせん」
(「あの人が打つ小鼓に使われていて、愛着を感じる調べの緒[鼓を固定する紐]を、なんとか手に入れることができないでしょうか。)
私の乱れる恋心を、その調べ緒で束《たば》ねたいのです」
心細げに打ち誦《ずん》じ、其処等《そこら》の畳紙《たたうがミ》の方《かた》に書き留《とゞ》め、
と心細げに歌を口ずさみ、そこらにある畳紙《たとうがみ》の方に書き留めました。
或る時ハまた、果無《はかな》くも、其の人の名を、句の上《かミ》に置きて、折句《おりく》の歌、詠ミ綴《つゞ》りて、虚《むな》しく独《ひと》り居《い》の枕の下に、散り積もりしハ、今ハ千束《ちづか》にも成《な》り侍らん。
ある時はまた、むなしくも、あの人(頼母)の名を、上《かみ》の句に置いて、折句《おりく》の歌を詠んで書き綴《つづ》り、さびしく一人で寝る枕の下に突っ込み、それが溜《た》まりに溜まって、今は千束《せんたば》にもなるほどでした。
斯《か》ゝる嘆《なげ》きの筆遣《ふでづか》ひ、辛《かろ》うじて内蔵之助取り出し、「然《され》バこそ」と独り言《ご》ちして、
このような采女の嘆きの歌の数々を、内蔵之助は枕の下から何とか取り出し、「やはりそうか」と、ひとり呟《つぶや》きました。
或る夜、寝静まりて、彼《か》の内蔵之助、訪《とぶら》い罷《まか》で来て、異人《ことひと》も無く、唯《たゞ》二人、頭《かしら》を突き合ハせ、暫《しバ》しハ物も言はず、打ち恨みたる顔付きにて、
ある夜、屋敷の者が皆、寝静まった頃、この内蔵之助は、采女の部屋を訪れました。
内蔵之助と采女以外は誰もおらず、二人きりで頭を突き合わせて、しばらくは物も言いませんでした。
そして、内蔵之助は、恨めしそうな顔つきで、
「扨《さて》も飛鳥川《あすかがは》の渕瀬《ふちせ》、定め無きは人の心と言ゝながら、斯《か》く扨《さて》〈斯《か》く迄《まで》〉我を隔《へだ》て給ハんとは、露知らずして、仇《あだ》に契りし悔しさよ。
「それにしても、飛鳥川《あすかがわ》の水が流れていた場所が、次の日には干上がっているように、人の心は変わりやすいと言いますが、ここまであなたの心が私から離れていたとは、全く知りませんでした。
あなたと交わしていた契りが、無意味になってしまったかと思うと、悔しくてたまりません。
[「飛鳥川の淵瀬《ふちせ》」は、「世の中は 何か常なる 飛鳥川 昨日の淵ぞ 今日は瀬になる」『古今和歌集』から生まれた言葉]
然《さ》れば、一日《ひとひ》、白地《あからさま》ながら、戯《たハぶ》れ侍りし事、今ハよも打ち紛らはし給ふ事有るまじや。
そもそも、先日、私の追求が図星であったにもかかわらず、あなたは冗談めかしていましたが、今はもう、誤魔化しになることはできませんぞ。
忍び余れると有る歌の心は如何《いか》にぞや」
と言へば、
『忍び余れる(恋しさに耐え切れない)』と詠んだ歌の気持ちはどういうことでしょうか」
と言いました。
此の人、世にも弛《たゆ》げる頭《かしら》を擡《もた》げて、
すると、この人(采女)は、とてもダルそうに頭を起こして、
「又、難《むつか》しの人の言葉ことばや。
「それにしても、人の言葉というものは、色んな意味に解釈されてしまうので、難しいものですな。
縦《よ》しや恋するにもし給へ、又物思ふにもし給へ、唯《たゞ》世の中の恨めしき身(の辛《つら》さ取り集め、)
たとえば、そんなつもりで言ったわけではないのに、恋をするという意味にも、物思いをするという意味にも、人は勝手に解釈なさってしまわれます。
私は、ただ、この世における、情けない自分の身の上(の辛《つら》さをまとめて、)
【解説】
「其の人(頼母)の名を、句の上(上の句)に置きて、折句の歌、詠ミ綴りて」という箇所が、ちょっと分かりにくいと思われるので、ここで解説します。
和歌は「五・七・五・七・七」の三十二文字で構成されますが、上《かみ》の句はその前半の「五・七・五」のことです。
折句《おりく》は、今で言うと、あいうえお作文や縦読みと同様の言葉遊びです。
『伊勢物語』に収録されている「かきつばたの歌」を例に出しますと、
からころも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ
と、句の頭を「かきつは(ば)た」にして、歌が詠まれています。
つまり、「其の人(頼母)の名を、句の上(上の句)に置きて、折句の歌、詠ミ綴りて」というのは、上の句の頭[「かきつばたの歌」で言うと「かきつ」の箇所]を「た・の・も」にして歌を詠んだということです。
さて、采女が頼母を思って詠んだ歌が内蔵之助に発見されてしまいました。
内蔵之助は再び問いただしますが、まだ采女はしらばっくれるようです。
挿絵は[4]の、采女の所に同僚たちがお見舞いに来たシーンですね。
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【次回予告を兼ねた くずし字クイズ】
折句の「た・の・も」もバレてたみたいですね。
正解は一番最後ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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「醜くて 突き飛ばしたい 目障りだ」ヾ(๑╹◡╹)ノ"
何それ?ヾ(๑╹◡╹)ノ"
何だろ?ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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【くずし字クイズの答え】