【前回のあらすじ】
内蔵之助は、采女が頼母の事を思って詠んだ歌を見つけ出し、再び追求するのでした。
【初めての方へ】
原典の画像だけでなく、スクロールすると、ちゃんと活字の原文(可能な限り漢字に直し、送り仮名と振り仮名を補足しています)と現代語訳と解説がありますよヾ(๑╹◡╹)ノ"
【スマホでご覧の方へ】
諸事情により、PC版と同じデザインになっています。なるべくスマホでも読みやすいようにはしているのですが、もし、字が小さいと感じた場合は、スマホを横にして拡大すると読みやすいと思います。
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
(縦《よ》しや恋するにもし給へ、又物思ふにもし給へ、唯《たゞ》世の中の恨めしき身)の辛《つら》さ取り集め、筆に任せて侍るまゝ、心二つに思はん人も有らんかなれど、
(たとえば、そんなつもりで言ったわけではないのに、恋をするという意味にも、物思いをするという意味にも、人は勝手に解釈なさってしまわれます。
私は、ただ、この世における、情けない自分の身の上)の辛《つら》さをまとめて、思いつくまま筆を走らせただけです。
縦《よ》し其れハ兎も有れ角も有れ、人の口に戸ハ立てられず」
それを浮気心を詠んだと思う人もいるでしょうが、まあ、それはいずれにても、どうしようもないことで、他人の口から出る言葉は、止めることができないわけで」
[「人の口に戸ハ立てられず」の箇所は、『雨夜物語』では、「いはでの山に年を経んにはしかじ」(藤原顕輔「思へども いはでの山に 年を経て 朽ちや果てなん 谷の埋れ木」『千載和歌集』を踏まえるか)となっている]
と真《まこと》しき顔付きにて、又打ち臥《ふ》しぬ枕を押さへて、
と、采女は真顔で言い、また横になろうとしました。
すると、内蔵之介は、その枕を押さえて、
「然《さ》もあれ、此の折句ハ如何《いか》に」
「ああ、それでしたら、この折句は何ですか」
と素気無《すけな》ふ差し置けバ、
と、折句が書かれた紙をそっけなく差し出して置きました。
そして、内蔵之介は、
「哀れ言ふに甲斐無《かいな》く見へ給ふ物かな。
「ああ、本当に見苦しいご様子ですな。
昔より此の二つの道にハ、如何《いか》なる女御高位公達《によごかういきんだち》にも、心を掛けて虚《むな》しく恋〈恋死〉せし類《たぐひ》多し。
昔から、男色・女色の二つの道において、どんな身分が高い方々でも、恋するあまりに、はかなく亡くなってしまった例が多くあります。
まして、是ハ朝夕同じ台《うてな》に打ち混じりて、言問《ことゝ》ひ交《か》ハし給ふに、然《さ》も輪廻《りんゑ》深き人の心や。
まして、あなたはずっと同じ屋敷に住んで、同じ主君にお仕えする同僚に恋をするとは、なんと人の心は執念深いものなのでしょうか。
二人の親にも苦《く》を掛け、斯《か》く物を思ハせ給ふ事、孝《かう》の一事《いちじ》にも外れ給ふ。
あなたの患《わずら》いのことで、両親にも苦しい思いをさせ、このように心配をおかけになることは、「孝《こう》」(親孝行)という一字にも背くことになられます。
然《さ》れバ、『孝經《かうけう》』にも『身体髪腑《しんたいはつぷ》を父母に受けて、敢《あへ》て毀《やぶ》り傷《そん》ぜざるを、孝の始めとす』とこそ言ふに、
そもそも、『孝経《こうきょう》』にも
『髪や皮膚を含むあなたの全ての肉体は、両親から授けられたものであるので、決して傷つけないようにすることが、孝(親孝行)の第一である』
とあります。
転《うたて》しき心惑《こゝろまど》ひにハ有らずや」
恋煩《こいわずら》いによって、両親にいただいた大事な体を痛めるなどということは、嘆かわしい気の迷いにほかなりません」
と荒ゝかに言ゝ罵《のゝし》りけれバ、其の時、少し起き直りて、
と、荒々しく、大声でわめきちらしました。
その時、采女は少し起き直って、
「心乱れし黒髪を、御身にし有れバこそ、斯《か》う取り上げて、思ひ元結《もとゆひ》を尋《たづ》ね給ふ。
「乱れた黒髪を束ねる元結《もとゆい》を求めるように、乱れた私の恋心の元《もと》(原因)が何かを、契りを交わしたあなた様だからこそ気づいて、見逃すわけにはいかないと取り上げ、こうして尋ねてくださるのですね。
[「心乱れし黒髪」は、待賢門院堀河《たいけんもんいんのほりかわ》「長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝《けさ》は 物をこそ思へ」『百人一首』をふまえるか]
[「取り上げる」には「髪を結い上げる」という意味もある]
平兼盛《たいらのかねもり》が『忍ぶれど、人の問ふまで』等《など》とゝ言ひしも、良く言ひ叶《かな》ゑりや。
平兼盛《たいらのかねもり》が
「忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで(隠していても、「恋してるの?」と人に聞かれるほど、私の恋心は顔に出てしまっているみたいでげす)」
などと詠んだ気持ちがドンピシャすぎて。
[平兼盛云々は、『雨夜物語』には無い]
今ハ罪(深く忍び恥づべきにも有らず。)
今はもう罪(深く思い、恥を忍んでいる場合ではありません。)
【解説】
しらばっくれる采女に、内蔵之介は頼母の名が折り込まれた折句を、動かぬ証拠として突き出します。
ついに、采女は観念して、白状するようです。
折句に関しては前回をご参照ください。
kihiminhamame.hatenablog.com
それにしても、この作品の作者は、それなりの教養があった人物だと思われ、下手に和歌の技法とか使って書いてるから、訳しにくいったらありゃしない、んもう!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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【次回予告を兼ねた くずし字クイズ】
采女が頼母に対する思いを話し始めたようです。
正解は一番最後ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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僕の乱れた黒髪も縛ってほしいよヾ(๑╹◡╹)ノ"
ん? 君に黒髪なんかないから、代わりに体を縛ってあげようヾ(๑╹◡╹)ノ"
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【くずし字クイズの答え】