※下に現代語訳と解説があります。
西村市郎右衛門『御伽比丘尼』[貞享四(一六八七)年刊]
御伽比丘尼 5巻. [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
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【原文】
其れが中に中老《ちうらう》の男、此の法度《ほうと》を調《とゝの》ふ。
先《ま》ず、 青《あを》き紙《かミ》を以《も》て行灯《あんどう》を貼り、燈心《とうしん》百筋《ひやくすじ》立てたり。
話一つに燈心《とうしん》一筋《ひとすぢ》づゝ灯し消ちて、百に満つれバ、座中《ざちう》 闇《やミ》となりぬるに定む。
斯《か》くて、一人/\おどろ/\しき物語、語り続けける程に、九十九になれバ、燈心 只《たゞ》一筋の光《ひかり》幽《かすか》に物悲《ものかな》しく、我《われ》かの氣色《けしき》になりて、鼠《ねづミ》の鳴《な》く聲《こゑ》も耳《ミゝ》に怪しく、風の戸鎖《とざ》し鳴らすも、胸に気疎《けうと》く、漸《やう》/\百に満つれバ、燈《ともしび》打ち消《け》して、偏《ひとへ》に闇《やみ》の如《ごと》く、「如何《いか》なる事があらん」
と、固唾《かたづ》を呑《の》ふで、一時《いつとき》斗《ばか》り、別《べつ》の怪《あや》しミも無けれバ、又灯火を掲げ、互《たが》ひに顔《かほ》を見合はせ、
「往昔《そのかみ》より言ひ傳《つた》へたるハ、左《さ》斗《ばか》りも無し」
など打ち笑ひぬ。
「夜の明《あ》けなん程も無し」
と、人/\其儘《そのまま》に転《まろ》び臥《ふ》しぬ。
【現代語訳】
この一座の中の、五十歳ぐらいの男が、百物語の作法に従って準備をしました。
まず、青い紙で行灯《あんどん》を貼り、灯心を百本立て、話が一つ終わるごとに、灯心の炎を一本ずつ消して、百の話が終わると、部屋の中が暗闇になるというわけです。
一人一人、恐ろしい話を語り続けていくうちに、九十九の話が終わり、残りの灯心はたった一本になりました。
その炎はかすかで物悲しく、恐ろしさで思わず気を失いそうになり、ネズミの鳴く声も耳に嫌に残り、風が閉めた戸を鳴らす音も心臓に悪いながらも、なんとか百話に達したので、最後の灯心の炎を消すと、部屋の中はただただ暗闇のようになりました。
「どんな事が起こるのだろう?」
と一座の者たちはドキドキして、しばらく待ちました。
ところが、特に何の怪奇現象も起こらなかったので、再び灯火をつけ、たがいに顔を見合わせて、
「その昔から言い伝えられているような怪奇現象は、これっぽっちも起らなかった」
などと言って笑ったのでした。
「もう少ししたら夜も明けるだろう」
と一座の者たちそのまま雑魚寝《ざこね》したのでした。
【解説】
百物語は、夜に灯心[今はロウソクを使いますよね]を百本用意し、怪談話が一つ終わるたびに一本ずつ消し、最後の一本を消して部屋が暗くなった時に、怪奇現象が起こると言われていました。
とりあえず、ここでは怪奇現象は特に起きなかったようです。
もちろん、話はここで終わりではないですよ、ふふふふふ。
行灯に貼った青い紙から生まれた青行灯という妖怪については、こちらの記事に書いておりますので、よろしければ。
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何も起きなかったんなら、言ってくれれば僕が行って出てあげたのにヾ(๑╹◡╹)ノ"
お前が出ても怖がるどころか、笑われるだけだよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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