※下に現代語訳と解説があります。
西村市郎右衛門『御伽比丘尼』[貞享四(一六八七)年刊]
御伽比丘尼 5巻. [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
【原文】
斯《か》くて遠寺《えんじ》の鐘、里の鶏《くたかけ》、東雲《しののめ》を告ぐるに、各《おのおの》起《お》き出《い》でて見れバ、只今《ただいま》切《き》り捨《す》てたるごとき女首五つ、黒き髪《かミ》を乱《ミだ》し、翠《ミどり》の黛《ずミ》、紅《くれなゐ》の顔《かんばせ》美しきが、朱《あけ》の血潮に染ミたるを、一人/\の枕元《まくらもと》に並べ置きぬ。
座敷《ざしき》の戸ハ宵《よひ》より強く錠《でう》下ろしてあれバ、外《ほか》より通ふ窓《まど》も無し。
此の不思議さ、戸鎖《とざ》し明け出て是を見るに、更《さら》に変わる事無き女の首也けれバ、皆取り集《あつ》め近き野辺《のべ》に捨《す》て、立ち帰り見るに、今迄《いままで》有りし女の首、一時《いちじ》に髑髏《されかうべ》とぞ成りける。
然《さ》れば、此の百物語ハ、魔《ま》を修《しゆ》する行《ぎやう》にして、怪異《けゐ》を祈《いの》るの法なり。
宵《よひ》より餘事《よじ》を交へず、此の事に念《ねん》を凝《こ》らしたれバぞ、斯《か》ゝる不思議ハ有りける。
是を思ふに、仏を念ずるの心、至《いた》つて誠《まこと》有らバ、何ぞ仏果《ぶつくわ》の妙《めう》に叶《かな》ハざらん。
魔道《まどう》、仏道《ぶつどう》異《こと》なりと言へど、念ずるの心、又一つ也。
是悪《これあく》、是善《これぜん》なれバ、速《すみ》やかに悪《あく》を去つて、偏《ひとへ》に菩提心《ぼだいしん》を願《ねが》ふにハしかじ。
【現代語訳】
こうして、遠くの寺の鐘の音や、村里のニワトリの声が夜明けを告げると、一座の者たちは、それぞれ起き出しました。
すると、黒い髪を乱して、緑の眉墨《まゆずみ》に、紅潮した美しい顔つきの、たった今、切り捨てられたような、赤い血潮に染まった、女の生首が五つ、一人一人の枕元に並べて置かれているではありませんか。
部屋の戸は宵からしっかりとカギを閉めてあり、外から入れるような窓もありません。
これはなんとも不思議な現象です。
戸を開け、日差しを入れて見てみても、やはり全く変わらぬ女の生首でした。
そこで、女の生首を全て集めて、近くの埋葬地に捨てて、帰り際に振り返って見ると、さっきまで女の生首だったのが、一瞬でシャレコウベ[ドクロ]になったのでした。
そもそも、この百物語というものは、魔道の修行で、怪異を起こすための祈祷《きとう》です。
宵から他事は全くせず、ひたすら怪異が起こる事を念じていたからこそ、このような不思議が起こったのです。
これをふまえて思うに、誠の心をもってひたすら仏道の修行をすれば、悟りと言う素晴らしい境地に達することができるでしょう。
魔道と仏道は異なる道ですが、心を込めて念ずると言う点においては同じです。
しかしながら、悪の魔道と善の仏道、どうせ念ずるなら、当然、すぐに悪の魔道はやめて、ひたすら仏道の悟りの境地を願う方がいいに決まっています。
【解説】
何事もなく終わったかと思った百物語、怪異はしっかり起きていました。
寝ている間に一座の者たちそれぞれの枕元に、女の生首が置かれていたのです。
でも、さすが武士のみなさん、恐れもせずに集めて近くの埋葬地に捨てるというねヾ(๑╹◡╹)ノ"
すると、その女の生首が一瞬でドクロに変わるという、更なる怪異が起きてこの話は終わります。
正直、意味不明ですが、まあ、怪談話と言うのはそういうもんですわなヾ(๑╹◡╹)ノ"
『御伽比丘尼』という作品だけあって、最後に仏法を説いていますが、説教臭くて古臭いですね。
本文中の「仏果の妙」の「妙《みょう》」は仏教用語で、「とても優れていること」を意味するの。
タイトルの「不思議は妙、妙は不思議」の「妙」には、一般的に使われる「奇妙」と言う意味も掛けているわね。
それより、また、赤字になっている部分が、、、。
「女首五つ」「黒き髪」「髑髏《されこうべ》」、、、。
ん?ひょっとして、先に読んだ「仕掛物は水になす桂川」と関連があるの?
「仕掛物は水になす桂川」と「不思議は妙、妙は不思議」の関連性、みなさんは興味がありますか?
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