前回のくずし字クイズ、
正解はこちら!
くずし字ってねえ、平仮名さえ覚えれば、だいたい読めるようになるんです。
なので、くずし字を読めるようになりたい方は、まず、主要な平仮名のくずし字(変体仮名)を覚えましょう!
【主要な変体仮名一覧】
国語要覧 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
一応、こちらが私が愛用しているくずし字辞典ですが、ある程度くずし字が読める方でないと、使いこなすことはできないと思います。
で、一番大事なことを忘れている方が多いのですが、たとえくずし字が読めても、書いてある内容が理解できなければ、何の意味もないので、古文を読解する勉強もお忘れなく!
それでは、本文を読んで行きましょうヾ(๑╹◡╹)ノ"
※下に現代語訳と解説がちゃんとあります。
井原西鶴『西鶴諸国はなし』貞享二(1685)年刊
西鶴諸国はなし : 大下馬. 巻5 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
【翻刻】
身《ミ》を捨《すて》て油壷《あふらつぼ》
ひとりすぎ程《ほど》。世にかなしき物ハなし。河内《かわち》のくに。
平岡《ひらおか》の里《さと》に。むかしハよしある人の娘《むすめ》。かたちも人に
すぐれて。山家《やまが》の花《はな》と。所《ところ》の小哥《こうた》に。うとふ程《ほど》の女《おんな》也。
いかなる因果《いんぐハ》にや。あいなれし男《おとこ》。十一人迄。あハ雪《ゆき》の
消《きゆ》るごとく。むなしくなれバ。はじめ焦《こが》れたる里《さと》人も。
後《のち》ハおそれて。言葉《ことば》もかハさず。十八の冬《ふゆ》より。おの
づから後家《ごけ》立《たて》て。八十八になりぬ。さても長生《なかいき》ハ。つれ
なし。以前《いせん》の姿《すがた》に引替《ひきかへ》。かしらに霜《しも》をいたゞき。見るも
おそろしげなれども。死《しな》れぬ命《いのち》なれバ。世《よ》をわたるかせき
に。檰《もめん》の糸《いと》をつむぎしに。松 火《び》もとけなくなく。ともし
油《あぶら》にことをかき。夜更《よふけ》て明神《ミやうじん》の。燈明《とうミやう》を盗《ぬす》ミて。たより ⏎ とする。
【現代語表記】
身《み》を捨《す》てて油壺《あぶらつぼ》
一人過ぎ程《ほど》、世に悲しき物は無し。
河内《かわち》の国、平岡《ひらおか》の里《さと》に、昔は由《よし》有る人の娘《むすめ》、形も人に優れて、「山家《やまが》の花《はな》」と、所《ところ》の小歌に歌《うと》う程《ほど》の女《おんな》也。
如何《いか》なる因果にや、相馴《あいな》れし男《おとこ》、十一人迄、淡雪《あわゆき》の消ゆる如く虚《むな》しくなれば、始め焦《こ》がれたる里人《さとびと》も、後《のち》は恐れて、言葉《ことば》も交わさず、十八の冬《ふゆ》より、自《おの》ずから後家《ごけ》立《た》てて、八十八になりぬ。
さても長生《ながい》きはつれなし。
以前《いぜん》の姿《すがた》に引《ひ》き替《か》え、頭《かしら》に霜《しも》を頂き、見るも恐ろし気なれども、死なれぬ命なれば、世《よ》を渡る稼ぎに、木綿《もめん》の糸《いと》を紡《つむ》ぎしに、松火《まつび》もとけしなく、灯し油に事を欠き、夜更《よふ》けて明神《みょうじん》の灯明《とうみょう》を盗《ぬす》みて頼りとする。
【現代語訳】
巻五の六「油壺に身投げする[油を盗んだために、命を落とすことになった]」
独身で過ごすことほど、世の中で悲しい事はありません。
河内国[大阪府東部]の枚岡《ひらおか》村に、昔はそれなりの家柄の人の娘で、容姿も人より優れていて、「山里の花」とその土地の小唄にも歌われるほどの女性がいました。
どういう因果因縁があったのか、結婚した男が十一人も、アナ雪淡雪が消えるようにあっさり亡くなってしまったので、始めは恋焦がれていた村人も、そのうち恐れて、言葉も交わさないようになり、十八歳の冬から、自然と未亡人を通すことになり、今はもう八十八歳になりました。
以前の美しい姿とは打って変わり、頭は霜が降ったような白髪となり、見た目も恐ろし気になったのですが、人間の宿命として、自分で死ぬ時をなかなか自由に選べないものなので、生きていくための稼業として、木綿の糸を紡《つむ》いでいました。
貧乏なので松を焼いた火を夜仕事の際の灯《あか》りとするしかなかったのですが、それでは明るさが足りず、油を灯りに使えば明るいのですが、買うことができなかったので、夜更けに枚岡明神《ひらおかみょうじん》の灯明の油を盗んで、夜仕事の灯りに使っていたのでした。
【解説】
この章のタイトル、目次では「身を捨てる油壺」なのに、本文では「身を捨てて油壺」と微妙に違ってますが、この時代の作品ではよくあることなので、細かい事は気にしてはいけませんヾ(๑╹◡╹)ノ"
舞台は現在の大阪府東大阪市の枚岡神社[本文中では「明神」]があるあたりです。
結婚した相手が十一人も死ぬとは尋常じゃないですね。
その理由は、ここでは書かれていませんが、おそらく性-欲が強すぎて男たちが衰弱死したのだと思われます。
美しかった女性も、七十年も誰からも相手にされず、恐ろしい姿の老婆になってしまいました。
神社の灯明の油を盗むという、バチあたりなことをする生活を送るようになるのですが、はてさて。
「独身で過ごすことほど、世の中で悲しい事はありません。」
北見花芽のことだねヾ(๑╹◡╹)ノ"
お前もだよ!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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