『男色比翼鳥』、今回で堂々完結だよ!
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
男色比翼鳥 6巻. [6] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※画像はクリックすると拡大します。
【翻刻】
と丹後(たんご)の方をふし拝(をがミ)あさしか原へ来りて見ればけにも
酒ゑん中(なかば)と見(ミ)へさいつさゝれつさわぎの中へ人々案内
こい若衆のかたき親(をや)の歒罷出ちんぢやうにしやうぶあれ
一平次大におどろきおくびやう風にふきちらされ日頃の言葉に
相違(そうい)して何れも頼むと逃行(にげゆく)を幸手軒(かうしゆけん)引つとらへ六七間(けん)
なけ出せば緑之助飛掛(とひがゝ)リ首中(くびちう)に討(うち)おとすハさりとハあさまし
き死やうかな残者(のこりのもの)共さハくをあそこ爰(こゝ)にて討て捨よろ
こびいさみ立帰り己(をの)が氣まゝに契(ちぎ)りけり誠(まこと)に替つた男色
の品(しな)珎らしき歒討(かたきうち)咄(ハなす)に目出度五人男千靏万龜(せんかくばんき)なが/\
しく命を延る笑らひ草(ぐさ)とぞ申けり
男色比翼鳥六終
※赤字が前回のくずし字クイズの答えです。
【現代語表記】
と丹後(たんご)の方を伏し拝(おが)み、浅茅ヶ原(あさじがはら)へ来りて見れば、実(げ)にも酒宴中(なか)ばと見(み)え、差いつ差されつ騒ぎの中へ、人々案内請い、
「若衆の敵、親(おや)の歒、罷り出て、尋常に勝負あれ。」
一平次大いに驚き、臆病風に吹き散らされ、日頃の言葉に相違(そうい)して、「何れも頼む」と逃(に)げ行(ゆ)くを、幸手軒(こうじゅけん)ひっ捕らえ、六、七間(けん)投げ出せば、緑之助飛(と)び掛(が)かり、首中(くびちゅう)に討(うち)落とすは、さりとは浅ましき死に様(やう)かな。
残(のこ)りの者(もの)共騒ぐを、あそこ爰(ここ)にて討ちて捨て、喜び勇み立ち帰り、己(をの)が氣ままに契(ちぎ)りけり。
誠(まこと)に替わった男色の品(しな)、珍しき歒討(かたきう)ち、咄(はな)すに目出度き五人男、千鶴万亀(せんかくばんき)長々しく、命を延ぶる笑い草(ぐさ)とぞ申しけり。
男色比翼鳥六終
【さっくり現代語訳】
と丹後の方を伏し拝み、浅茅ヶ原(あさじがはら)へ行ってみると、まさしく酒宴の最中と見えて、連中は盃を差しつ差されつ、騒いでいました。
五人はその中に割って入り、
奥村「若衆の敵!」
緑之助「親の敵!」
奥村・緑之助「出てきて尋常にいざ勝負!」
と挑むと、一平次はとても驚き、臆病風に吹かれて、いつもの偉そうな態度とは大違いで、「皆の衆、あとは頼んだぞ」と言って逃げていくのを、奥村幸手軒が引っ捕らえて六、七間[約11~13メートル]投げ飛ばすと、緑之助が飛びかかり、首を打ち落としました。
なんとまあ、みっともない死に様でしょう。
騒ぎ立てる残りのアウトローたも、あっちやこっちで次々と討ち捨てて、喜び勇んで奥村の家に帰り、それぞれが思い思いのままに契りを交わしました。
実に変わった男色のエピソードで、世にも珍しい敵討ちです。
このめでたい五人男の話をすると、「鶴は千年、亀は万年」と命が長く延びるほど、笑いが絶えないということです。
おしまい
【解説】
忘れていると思いますが、丹後国の文殊堂で祈願したので、その方向を拝んでいます。
一平次の弟子の多くは都若衆を捜しに出て行ってしまい、残った連中も酔っ払っているので、五人組の方が断然有利というわけです。
この作品は正月に出版されたものなので、鶴亀も出てきて、めでたしめでたし、というわけです。
まあ、この作品は男色がテーマなので、敵討ちの場面は実にあっさりしすぎです(笑)
当時の小説において、男色と敵討ちはセットでよく描かれている趣向で、要は男色と武士道は関わりが深かったということです。
また、巻1の2で繰り広げられた、男色女色優劣論争も当時の小説にはよく見られる趣向です。
この作品のような男色の短編集[井原西鶴の『男色大鑑』に始まる]もこの時期には少なからず見られます。
今回紹介した『男色比翼鳥』は、当時の男色物の特徴が顕著に現れた作品と言えましょう。
次回予告と挿絵クイズ
次回はこの巻6の13の挿絵の解説をしたいと思います。
山田と市川には、最初に登場した時と明らかに変わっている所がありますが、さて?
三つ目コーナー
鶴は千年、ツルツルは三つ目!
だから、何?
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