うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

江戸文学の楽しさを皆さんにお伝えできれば♪

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。

長歌だけあって長いですね ~『玉水物語』その25~

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。


f:id:KihiminHamame:20190709212430j:plainf:id:KihiminHamame:20190709212434j:plain
f:id:KihiminHamame:20190709212440j:plainf:id:KihiminHamame:20190709212446j:plain
f:id:KihiminHamame:20190709212452j:plainf:id:KihiminHamame:20190709212457j:plain
f:id:KihiminHamame:20190709212501j:plainf:id:KihiminHamame:20190709212506j:plain
玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。

【原文】

[長歌] 束の間も 去り難かりし 我が住み家 君を逢い見て 
其の後は 静心《しづこころ》無く 憧《あくが》れて 上《うわ》の空にも 
迷いつゝ 儚《はかな》き物を 数ならぬ 憂き身成りける
物故《ものゆえ》に 漫《すゞろ》に身をバ 筑紫《つくし》[※「尽くし」とかけた]
漕《こ》ぎ渡れども 
晴れやらで 浪に漂ふ 細[笹]蟹《さゝがに》[※蜘蛛《くも》の古名]の 糸筋よりも 
微《かすか》かにて 過ぎにし月日 数《かぞ》ふれば たゞ夢とのミ
成りにけり 我が身一つハ 如何《いかに》にせん 君さへ長き 
恨みをば 負ひなん事の 由《よし》無さよ 朝夕君を 
見る事も 身の類《たぐひ》ぞと 慰めて 夢現《ゆめうつゝ》とも
分き難く 明かし暮らしつ 面影を 何時《いつ》の世迄も 
変ハらじと 思ひ明石《あかし》[※「明かし」とかけた]の 浦に出て 潮干《しおひ》の貝も 
拾ふかな 蜑[海女][海人]《あま》の炊[焚]《た》く藻の 夕煙《ゆふけぶ》り 棚引く方も
懐かしや 島伝ひにて 海松布《みるめ》[※和歌では「見る目」とかけられることが多い]刈る 蜑の子供に 
あらねども 乾く間も無き 袖の上に 訪《と》ひ来る風も 
干しかねて 靡《なび》く気色[景色]《けしき》を 余所《よそ》に見て 思ひ知られぬ

身の程も 遂に甲斐無き 心地して たゞ一筆を 
遊《すさ》み置く 玉章[玉梓]《たまづさ》バかり 身に添へて 長き思ひの 
[印]《しるし》ぞと 常ハ訪[弔]《とぶら》ふ 心有らん 後の世迄の
架け橋と 成りても君を 守りてん かゝる憂き身を 
人知れず 訪《とぶら》ハじとハ 小野ゝ山 また立つ否《いな》や 
色に出でゝ また例《ためし》無き 類《たぐひ》をも 思ひ出でよの
心にて ただ書き遊《すさ》む 水茎[※「手紙の文」のこと。続く「山川」「谷水」を導いている]の 岩根を出る 
山川の 谷水よりも 所狭《ところせ》き 袂《たもと》の露を 君ハ知らじな

[短歌1] 色に出て 言はぬ思いの 哀れをも 此の言葉に 思ひ知らなん
[短歌2] 濁り無き世に 君を守らん

斯様《かよう》に歌を書き、奥に二首の歌を付けて、


予習の答え


つかの間も さりかたかりし 我すみ家

【さっくり現代語訳】

[玉水の長歌このままずっと、住み慣れた土地を離れるつもりなど、全くありませんでした。
 しかし、姫君を一目見てから、気持ちがザワザワして、すっかりハートが奪われて上の空になり、他のことが何も考えられなくなりました。
 このまま生きていたって、どーってことないケダモノの身なので、はるか筑紫(つくし)[※現在の九州地方]まで行くを漕ぐように、ひたすら姫君のためにこの身を尽くすことにしたのです。
 しかし、それでも、私の心は晴れやらず、にプカプカ浮かぶ蜘蛛(くも)の糸よりも、弱々しい心持ちになるのでした。
 姫君に仕えて、指折り数えて過ごした月日は、まるでのようでした。
 しかし、このケダモノの身はどうしようもありません。
 は思いを遂げる事ができないのを、長い間勝手に無念に思い続けたのですが、それは姫君には何の責任もないことです。
 「朝晩、姫君を見る事が出来るだけでも、身に余る光栄だ」と自分自身を慰めるしかありませんでした。
 だか現実だかわからないフワフワした気持ちで、「姫君のお姿はいつまでも美しいままに違いない」と思いながら夜を明かし、月日を過ごしました。
 気分転換に、潮干狩りをしてでも拾おうかと、明石[※現在の兵庫県明石市の浦に出かけてみると、漁師藻塩を焼いていました。
 夕暮れの空にが漂う方角は、がかつて住んでいた辺りではないかと懐かしく思います。

 ずぶ濡れになりながら島伝いに海藻を取る漁師の子供のように、で乾く間もないほど濡れている私の袖の上をが通り過ぎますが、乾かすことができません。
 になびく様子も目に入らず、自分身の程知らずだと思い知り、やはりこのまま過ごしても意味がないと思い、この手紙を思いにまかせて書いています。
 どうか、この手紙だけでもお側に置いて、が長い間姫君を慕っていたことを、記憶の片隅にでも留めていてください。
 姫君ピンチの時はいつでも助けに参るつもりでいます。
 姫君が無事にあの世に行けるように、三途の川にかかるとなってでも、ずっと姫君を守ります。
 こんなケダモノの私姫君がこっそり小野山[※音無(おとなし)の滝で有名な京都の山]辺りまで捜しに来ることもないでしょう。
 もまた姫君に会いに行こうかと心が揺らぐ時がありますが、すぐに思いとどまります。
 せめて「そういえば、に恋したキツネ女房に化けたという、なことがあったなあ」と、たまには思い出していただけたらと、ただ思うままにこの手紙に書き連ねました。
 岩の根元からわき出た、を流れる山の川の水よりも狭い着物の袂(たもと)を流れる私の涙を、姫君は知らないでしょうね。
[短歌1]と向かっては言えなかった恋心の哀れさを、姫君はこの手紙言葉で知ってくれるでしょう。
[短歌2]素晴らしいこの世に生きている限り、はずっと姫君を守り続けます。」
 玉水はこのように長歌を書き、最後に二首短歌を付けて、

【解説】

 長歌の部分、途中で切るるとワケワカメになるので、三ページ分一挙掲載です!
 長歌五七五七五七を何回も続けて、最後五七五七七で締める歌の形式です。
 短歌五七五七七です。

 この玉水の歌、特に最後の辺りは誤字脱字誤写があるようで、直訳するとイミフな箇所が多々見られますが、例の如く想像力を膨らませて、何とか意味の通じるようにしました。
 しかし、二首目の短歌上の方の句が完全に欠落しているので、さすがに私の想像力でもカバーできませんでしたので、あしからず。

 には玉水姫君への秘めた思いが延々と詠まれています。
 はい、同じような内容の繰り返しで、結構、ねちっこいですよね(笑)

次回で最終回です。
箱の謎も分かります。

次回の予習

最後のページです。。。
f:id:KihiminHamame:20190709214715j:plainf:id:KihiminHamame:20190709214718j:plain

三つ目コーナー

薄い本、描き描き♪

f:id:KihiminHamame:20190709214756j:plain

三つ目の顔邪魔~っ!

 

◆インフォメーション

井原西鶴の大著、『男色大鑑』一般向け現代語訳が発売されました♪

北見花芽の中の人
もちょっと書いてるので興味のある方も無い方も、下のアマゾンリンクから、お買い求めくださると狂喜乱舞します♪
※ 書店で買っても、北見花芽の中の人には直接お金が入らないので何卒。

全訳 男色大鑑〈武士編〉

全訳 男色大鑑〈武士編〉

 

『男色を描く』合わせてお読みいただけるとより楽しめると思いますよ♪
※ こちらも北見花芽の中の人がちょっと書いていますので。 

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

 

 

◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪

f:id:KihiminHamame:20171119223122j:plain 

いただいた商品のレビューはこちら♪   

 

◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪

f:id:KihiminHamame:20171108164138j:plain

 

はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(コメントもできます)

web拍手 by FC2

 ◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪

にほんブログ村 本ブログ 古典文学へ
にほんブログ村


江戸時代ランキング

◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪ バズりたいです!w