うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

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長歌だけあって長いですね ~『玉水物語』その25~


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玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。

翻刻

つかの間も さりかたかりし 我すみ家
きみを逢ミて 其のちは しつ心なく
あくかれて うわの空にも まよひつゝ
はかなき物を かすならぬ うき身成ける
ものゆえに すゝろに身をハ つくしふね
こきわたれとも 晴やらて 浪にたゝよふ
さゝかにの いとすしよりも かすかにて
過にし月日 かそふれは たゝ夢とのミ
なりにけり 我身ひとつハ いかにせん
君さへなかき うらみをは おひなん事の

よしなさよ 朝ゆふきみを 見る事も
身のたくひそと なくさめて 夢うつゝとも
ワきかたく あかし暮しつ おもかけを
いつのよ迄も かハらしと 思ひ明石の
浦に出て しほひの貝も ひろふかな
あまのたくもの 夕けふり たな引かたも
なつかしや しまつたひにて みるめかる
あまの子ともに あらねとも かハく間もなき
袖のうへに とひ来る風も ほしかねて
なひくけしきを よ所に見て 思ひしられぬ

身のほとも つゐにかひなき こゝ地して
たゝ一筆を すさみをく 玉つさハかり
身にそへて なかき思ひの しるしそと
つねハとふらふ 心あらん 後の世まての
かけハしと なりても君を まもりてん
かゝるうきミを 人しれす とふらハしとハ
おのゝやま またたついなや 色にいてゝ
またためしなき たくひをも 思ひいてよの
こゝろにて たゝかきすさむ 水くきの
岩ねを出る 山かハの 谷水よりも

ところせき 袂のつゆを 君ハしらしな
 色に出ていはぬ思ひの哀をも此こと葉に思しらなん
           にこりなきよに君をまもらん
かやうに哥をかき奥に二首の哥を書付て

赤字が前回の予習の答え

【現代語表記】

[長歌] 束の間も 去り難かりし 我が住み家 君を逢い見て 
其の後は 静心(しずこころ)無く 憧(あくが)れて 上の空にも 
迷いつつ 儚(はかな)き物を 数ならぬ 憂き身成りける
物故(ものゆえ)に 漫(すずろ)に身をば 筑紫(つくし)[※「尽くし」とかけた]
漕(こ)ぎ渡れども 
晴れやらで 浪に漂う 細[笹]蟹(ささがに)[※蜘蛛(くも)の古名]の 糸筋よりも 
微(かすか)かにて 過ぎにし月日 数(かぞ)うれば ただ夢とのみ
成りにけり 我が身一つは 如何(いかに)にせん 君さえ長き 
恨みをば 負いなん事の 由(よし)無さよ 朝夕君を 
見る事も 身の類(たぐい)ぞと 慰めて 夢現(ゆめうつつ)とも
分き難く 明かし暮らしつ 面影を 何時(いつ)の世迄も 
変わらじと 思い明石(あかし)[※「明かし」とかけた]の 浦に出て 潮干(しおひ)の貝も 
拾うかな 蜑[海女][海人](あま)の炊[焚](た)く藻の 夕煙(けぶ)り 棚引く方も
懐かしや 島伝いにて 海松布(みるめ)[※和歌では「見る目」とかけられることが多い]刈る 蜑の子供に 
あらねども 乾く間も無き 袖の上に 訪(と)い来る風も 
干しかねて 靡(なび)く気色[景色](けしき)を 余所(よそ)に見て 思い知られぬ
身の程も 遂に甲斐無き 心地して ただ一筆を 

遊(すさ)み置く 玉章[玉梓](たまずさ)ばかり 身に添えて 長き思いの 
記[印](しるし)ぞと 常は訪[弔](とぶら)う 心有らん 後の世迄の
架け橋と 成りても君を 守りてん かかる憂き身を 
人知れず 訪(とぶら)わじとは 小野の山 また立つ否(いな)や 
色に出でて また例(ためし)無き 類(たぐい)をも 思い出でよの
心にて ただ書き遊(すさ)む 水茎[※「手紙の文」のこと。続く「山川」「谷水」を導いている]の 岩根を出る 
山川の 谷水よりも 所狭(せ)き 袂(たもと)の露を 君は知らじな

[短歌1] 色に出て 言わぬ思いの 哀れをも 此の言葉に 思い知らなん
[短歌2] 濁り無き世に 君を守らん

斯様(かよう)に歌を書き、奥に二首の歌を付けて、

【さっくり現代語訳】

[玉水の長歌このままずっと、住み慣れた土地を離れるつもりなど、全くありませんでした。
 しかし、姫君を一目見てから、気持ちがザワザワして、すっかりハートが奪われて上の空になり、他のことが何も考えられなくなりました。
 このまま生きていたって、どーってことないケダモノの身なので、はるか筑紫(つくし)[※現在の九州地方]まで行くを漕ぐように、ひたすら姫君のためにこの身を尽くすことにしたのです。
 しかし、それでも、私の心は晴れやらず、にプカプカ浮かぶ蜘蛛(くも)の糸よりも、弱々しい心持ちになるのでした。
 姫君に仕えて、指折り数えて過ごした月日は、まるでのようでした。
 しかし、このケダモノの身はどうしようもありません。
 は思いを遂げる事ができないのを、長い間勝手に無念に思い続けたのですが、それは姫君には何の責任もないことです。
 「朝晩、姫君を見る事が出来るだけでも、身に余る光栄だ」と自分自身を慰めるしかありませんでした。
 だか現実だかわからないフワフワした気持ちで、「姫君のお姿はいつまでも美しいままに違いない」と思いながら夜を明かし、月日を過ごしました。
 気分転換に、潮干狩りをしてでも拾おうかと、明石[※現在の兵庫県明石市の浦に出かけてみると、漁師藻塩を焼いていました。
 夕暮れの空にが漂う方角は、がかつて住んでいた辺りではないかと懐かしく思います。

 ずぶ濡れになりながら島伝いに海藻を取る漁師の子供のように、で乾く間もないほど濡れている私の袖の上をが通り過ぎますが、乾かすことができません。
 になびく様子も目に入らず、自分身の程知らずだと思い知り、やはりこのまま過ごしても意味がないと思い、この手紙を思いにまかせて書いています。
 どうか、この手紙だけでもお側に置いて、が長い間姫君を慕っていたことを、記憶の片隅にでも留めていてください。
 姫君ピンチの時はいつでも助けに参るつもりでいます。
 姫君が無事にあの世に行けるように、三途の川にかかるとなってでも、ずっと姫君を守ります。
 こんなケダモノの私姫君がこっそり小野山[※音無(おとなし)の滝で有名な京都の山]辺りまで捜しに来ることもないでしょう。
 もまた姫君に会いに行こうかと心が揺らぐ時がありますが、すぐに思いとどまります。
 せめて「そういえば、に恋したキツネ女房に化けたという、なことがあったなあ」と、たまには思い出していただけたらと、ただ思うままにこの手紙に書き連ねました。
 岩の根元からわき出た、を流れる山の川の水よりも狭い着物の袂(たもと)を流れる私の涙を、姫君は知らないでしょうね。
[短歌1]と向かっては言えなかった恋心の哀れさを、姫君はこの手紙言葉で知ってくれるでしょう。
[短歌2]素晴らしいこの世に生きている限り、はずっと姫君を守り続けます。」
 玉水はこのように長歌を書き、最後に二首短歌を付けて、

【解説】

 長歌の部分、途中で切るるとワケワカメになるので、三ページ分一挙掲載です!
 長歌五七五七五七を何回も続けて、最後五七五七七で締める歌の形式です。
 短歌五七五七七です。

 この玉水の歌、特に最後の辺りは誤字脱字誤写があるようで、直訳するとイミフな箇所が多々見られますが、例の如く想像力を膨らませて、何とか意味の通じるようにしました。
 しかし、二首目の短歌上の方の句が完全に欠落しているので、さすがに私の想像力でもカバーできませんでしたので、あしからず。

 には玉水姫君への秘めた思いが延々と詠まれています。
 はい、同じような内容の繰り返しで、結構、ねちっこいですよね(笑)

次回で最終回です。
箱の謎も分かります。

次回の予習

最後のページです。。。
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三つ目コーナー

薄い本、描き描き♪

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三つ目の顔邪魔~っ!

 

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