玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。
【原文】
「此の箱ハ、人に飽かれず、年経《としふ》れど老ひせず、添ふ人に愛を増す箱なれバ奉るなり。
『君に添ひ参らせん程は此の掛子[懸籠]《かけご》を開けさせ給ふな』と申し置きつるごとく、やう思し召し、離れん閉ぢめなどにハ開けても御覧ぜさせ給へ」
など、細/\と書きて参らせたるに、哀れ浅からず思し召し、畜類ながらかゝる優しき心の哀れ深きを打ち伝へのために置くなり。
【予習の答え】
やさしきこゝろの哀ふかきをうちつたへのために
をくなり
【さっくり現代語訳】
「この箱を持っていると、配偶者に飽きられず、年を取っても老化せず、配偶者の愛が増す効果がある箱なので、差し上げるのです。
「帝に添い遂げなさっている間は、この内蓋をお開けになってはいけません」
と前に申し上げたことは決してお忘れなく、帝が崩御されてお別れになったあとに、開けてご覧くださいませ」
などと[玉水は]細かく姫君に書いて差し上げたのでした。
姫君はたいそう感動されたのでした。
ケダモノであっても、このように優しい心を持ち、思いやりが深いキツネがいたことを、後世に伝えるために、このように物語にして残しました。
『玉水物語』完
【解説】
はい、あっさりお話は終了です。
『玉水物語』が現在では忘れ去られた話なのは、やっぱりオチのインパクトが少ないからでしょうね。
さて、謎の箱ですが、
「人に飽かれず、年経れど老いせず、添う人に愛を増す箱」
とは、どういうことか分かりますか?
そうです、いわゆる玉手箱というやつですね。
気づいた方もおられると思いますが、その21のタイトルですでにネタバラシしてたりします(笑)
玉水が手渡しする箱だから、玉手箱? ~『玉水物語』その21~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
このブログのマニアの方(え?そんな人いないって?)なら覚えてらっしゃると思いますが、以前、浦島太郎の回でも説明したように、玉手箱は開けたら老人になる理不尽な箱ではなく、時間を封じ込めることができる箱なのです。
亀が時間を操れるとは。 ~『浦島太郎』その17~ - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
玉手箱が姫君が重ねるはずの年を封じ込めてくれるので、姫君は年を取らずに若さを保ち続け、結果として帝に飽きられず愛され続けるというわけです。
そして、帝がお亡くなりになって、愛される必要がなくなった時に、箱の内蓋を開けると、封じ込められていた時間が一気に解放されて老女となり、帝の菩提を弔いながら天寿を全うするというわけです。
今、姫君が箱を開けたところで、大した時間は封じ込められてないので、老人にはならないでしょうが、玉手箱としての効力が失われると思われるので、以降は普通に老化して帝にも飽きられてしまうのでしょうね。
『浦島太郎』も『玉水物語』も室町時代に成立した御伽草子というジャンルの作品です。
玉手箱というのはこの時期、流行の趣向だったのでしょうね。
ネット上で見る事が出来る『玉水物語』の翻刻や現代語訳の中には、一番大事な「老いせず」が欠落して「人に飽かれず、年経れど添う人に愛を増す箱」となっていて、箱の謎がよくわかんなくなっている場合があるのでご注意を!
次回はリンクのまとめをして『玉水物語』のシリーズは終了したいと思います。
三つ目コーナー
薄い本、どんどん続きを書くぞ~!
はい、三つ目の薄い本も今回で強制終了!
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