アクセス数が壊滅的になってきたので、アクセスを稼げそうなタイトルにしてみましたが、果たして効果は?ヾ(๑╹◡╹)ノ"
というわけで、今回も『曽呂里物語』収録のお話を紹介します。
みなさまは「耳なし芳一」をご存知でしょうか?
小泉八雲の怪談で有名なお話ですね。
ストーリーなどは、もじのすけさん(id:mojinosuke)のブログを、ぜひご覧ください。mojinosuke.hatenablog.com
今回紹介する「耳切れうんいちが事」は、文章として残っている「耳なし芳一」系のお話としては最古のものです。
ちなみに、「耳なし芳一」系のお話は、ほかには延宝五(一六七七)年刊『宿直草《とのいぐさ》』巻二の一一「小宰相《こざいしょう》の局《つぼね》幽霊の事」があり、
小泉八雲「耳なし芳一」の直接の元になったのは、一夕散人《いっせきさんじん》作・天明二[一七八二]年刊『臥遊奇談《がゆうきだん》』巻二の一「琵琶秘曲悲幽霊《びわのひきょくゆうれいをなかしむ》」だと言われています。
前回同様、『曽呂里物語』は、ここに載せれる画像が無かったので、オリジナルをご覧になりたい方は、下のリンク先でご確認くださいね。
www.wul.waseda.ac.jp
【翻刻】
九 耳《ミゝ》きれうんいちか叓
信濃《しなの》の国 善光寺《ぜんくハうし》のうちにびくにてら有けり。又ゑちご
の国にうんいちといふざとう侍り。つねに彼びくにてらに
出入しけり。あるときいたハる事有て半年ほとをとつれ
さりけり。すこし心よくしてかの寺に行けり。あるじの老尼《らうに》
うんいちハはるかにこそおほゆれ。何としてうちたへけるそ
といひけれハ。久しく所労《しよらう》の事さふらひて御見まひも申さす
候といふ。とかくして其日もくれけれハ。うんいちハきやくでん
やとられよといひて老尼《らうに》ハ方丈《はうちやう》にいりぬ。爰にけいじゆん
とて弟子びくに有。丗日ほとさきに身まかりぬ。かのけいじ
ゆんうんいちかふしたる所へ行て。其後ハ久しくこそおほゆ
れ。いざ我々がれうへともなひ侍らんといふ。うんいちハ死
たる人ともしらず。それへ参るへく候へ共御一人おハします
所へ参り候ことハいかゝにて候まゝ。えこそ参るまじといふ。
いや/\くるしうもさふらハすとてせひに引立ゆく。
【原文】※漢字や送り仮名を補足した表記
九「耳《ミゝ》切れうんいちが事」
信濃《しなの》の国 善光寺《ぜんくハうじ》の内に比丘尼寺《びくにでら》有りけり。
又、越後《ゑちご》の国にうんいちと言う座頭《ざとう》侍り。
常に彼《か》の比丘尼寺に出入りしけり。
或る時、労《いた》ハる事有りて、半年程訪れざりけり。
少し心良くして彼の寺に行きけり。
主《あるじ》の老尼《らうに》、
「うんいちハ遥かにこそ覚えゆれ。
何として打ち絶へけるぞ」
と言ひければ、
「久しく所労《しよらう》の事候《そふら》ひて、御見舞ひも申さず候」
と言ふ。
兎角《とかく》して其の日も暮れければ、
「うんいちハ客殿宿られよ」
と言ひて老尼《らうに》ハ方丈《はうぢやう》に入りぬ。
爰《ここ》にけいじゆんとて弟子比丘尼有り。
丗日《みそか》程 前《さき》に身罷《まか》りぬ。
彼のけいじゆん、うんいちが伏したる所へ行きて、
「其の後ハ久しくこそ覚ゆれ。
いざ我々が寮《れう》へ伴ひ侍らん」
と言ふ。
うんいちハ死したる人とも知らず、
「其れへ参るべく候へ共、御一人 御座《おハ》します所へ参り候事は、如何《いかゞ》にて候まゝ、えこそ参るまじ」
と言ふ。
「いや/\、苦しうも候ハず。」
とて、是非に引き立て行く。
【現代語訳】
巻四の九「耳《みみ》切れうんいちの話」
信濃《しなの》の国[長野県]の善光寺《ぜんこうじ》の中に尼寺がありました。
また、越後《えちご》の国[新潟県]には、うんいちという座頭[盲人の一番下の階級]がいました。
うんいちは、いつもこの善光寺の中の尼寺に出入りしていました[おそらく琵琶法師として]。
ある時、うんいちは病気になって、半年ほど尼寺を訪れることができませんでした。
病気が少し回復し、うんいちは半年ぶりに尼寺に行くことができました。
住職の老尼《ろうに》が、
「うんいち、久しぶりではありませんか。
どうして、ずっと来なかったのですか?」
と聞くと、うんいちは、
「長らく病を患《わずら》いまして、ご挨拶《あいさつ》にも伺《うかが》うことができませんでした。」
と答えました。
なんだかんだでその日も暮れたので、
「うんいちは、客殿にお泊りなされ。」
と言って老尼は方丈《ほうじょう》[住職の居室]に入りました。
この尼寺にはけいじゅんという弟子の尼がいましたが、三十日ほど前に亡くなりました。
そのけいじゅんが、うんいちが寝ている所にやって来て。
「あれからずいぶん久しぶりではありませんか。
さあ、私の寮《りょう》[宿舎]に一緒に行きましょう。」
と誘いました。
うんいちは、けいじゅんが死人とは知らず、
「お誘いいただいた手前、あなたの寮に参るべきなのでしょうが、あなたがお一人でいらっしゃる所に参上することは、男-女-の-仲を疑われて問題になるので[尼寺で色-恋は禁止]、参ることはできません。」
と断りました。
しかし、けいじゅんは、
「いやいや、そんな堅い事は言わず、苦しゅうない、苦しゅうない。」
と言って強引にうんいちを自分の寮に引っ張って行きました。
【解説】
このお話の主人公はうんいちという座頭です。
はっきりとは書かれていませんが、うんいちは用も無いのに尼寺に出入りしていたわけではなく、琵琶法師として尼寺に出入りしていたと思われます。
※座頭は主に琵琶法師をしていました。
そして、うんいちのもとに現れるのは、平家の亡霊ではなく、うんいちが尼寺に行けなかった期間に亡くなった、けいじゅんという弟子の尼です。
けいじゅんはうんいちが難色を示すのを構わず、自分の部屋に連れて行って二人っきりになろうとします。
はてさて、うんいちの運命はいかに?
【参考文献】
◆『怪異小説集』
◆『江戸怪談集〈中〉』
三つ目コーナー
僕は 琵琶法師(びわほうし) じゃなくて、枇杷欲し(びわほっし) だよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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