アクセス数稼ぎのために煽《あお》ったタイトルにしてますが、「驚愕《きょうがく》の真実」と言うほどの内容ではないことを最初にお詫び申し上げます(笑)ヾ(๑╹◡╹)ノ"
さて、『曽呂里物語』巻四の九「耳切れうんいちが事」を読んだわけですが、一つ気になったことがあります、それは主人公の名前です。kihiminhamame.hatenablog.comkihiminhamame.hatenablog.comkihiminhamame.hatenablog.com
主人公の名前「うんいち」は漢字で書くと「運一」「運市」「雲一」「雲市」といったところでしょうか。
ちょっと変わった名前ですよね。
もちろん、実際にそういう名前も存在するわけなのですが、なんか違和感を覚えたんです。
※ちなみに「けいじゅん」は漢字で書くと「恵順」とか「慶順」でしょう。
なぜなら、「耳きれうんいち」より少し後に書かれた類似作品の『宿直草《とのいぐさ》』巻二の一一「小宰相《こざいしょう》の局《つぼね》幽霊の事」の主人公の名前は、「うんいち」と一字違いの「だんいち(団都)」だからです。
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しかも、柳田国男「鹿の耳」『一目小僧その他』(昭和九年 小山書店)に、阿波の里浦に伝わる昔話として同様の話が紹介されているのですが、その主人公の名前も「だんいち(団一)」なのです。
一目小僧その他 - 国立国会図書館デジタルコレクション
つまり、私は「うんいち」は、「だんいち」の間違いではないかと考えたわけです。
「耳切れうんいち」には元にした資料があり(今は失われてしまったのか、未発見なのかはわかりませんが)、そこには主人公の名前は「だんいち」と書かれていたにもかかわらず、見間違えて「うんいち」にしてしまったのではないかと。
さすがの僕でも「う」と「た」を見間違えることはないと思うけどなーヾ(๑╹◡╹)ノ"
その謎を解くカギは変体仮名(くずし字)にあります。
今は平仮名の「た」は一文字しかありませんが、明治初期以前は変体仮名と言って、平仮名が複数存在したのです。
ここで問題になる平仮名の「た」は、ご覧のように、「多」のくずし、「当」のくずし、「堂」のくずしなどが存在しました。
※ちなみに、現在使われている「た」は「太」のくずしです。
国語漢文便覧 - 国立国会図書館デジタルコレクション
特に多く使われていたのが「多」のくずしです。
例えば、これは「弾」という字に「だん」と振り仮名がしてあるのですが、ほら!
※この時代、濁点の多くは省略されていました。
(『臥遊奇談』より)
パッと見は「うん」に見えませんか?
こんな感じで「だんいち」と書かれていたら、「うんいち」と見間違える可能性は高いと思うんですが、いかがでしょうか???
僕も本当は「三つ目」じゃなくて「ミつ目」かも!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
大して変わらないよヾ(๑╹◡╹)ノ"
ちなみに、「耳なし芳一」系作品の主人公の名前は、直接の影響関係があるかどうかは分かりませんが、次のように変遷しています。
「うんいち」『曽呂里物語』巻四の九「耳切れうんいちが事」(寛文三[一六六三]年刊)
↓
「団都(だんいち)」荻田安静《おぎたあんせい》『宿直草《とのいぐさ》』巻二の一一「小宰相《こざいしょう》の局《つぼね》幽霊の事」(延宝五[一六七七]年刊)
↓
「鶴都(つるいち)」筆天斎《ひってんさい》『御伽厚化粧』巻四の十二「赤関留幽鬼《せきかんゆうきをとどむ》」(享保十九[一七三四]年刊)
↓
「芳一(ほういち)」一夕散人《いっせきさんじん》『臥遊奇談《がゆうきだん》』巻二の一「琵琶秘曲悲幽霊《びわのひきょくゆうれいをなかしむ》」(天明二[一七八二]年刊)
↓
「芳一(ほういち)(Hoichi)」小泉八雲『怪談』「耳無芳一の話(The Story of Mimi-Nashi-Hoichi)」(明治三十七[一九〇四]年刊)
「いち」という名前が共通しているのが特徴ですね。
座頭によく付けられた名前だったのでしょうか?
もうパンツはかない!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
一応、突っ込んでおくけど、それは「座頭市」を演じた勝新太郎の迷言ねヾ(๑╹◡╹)ノ"
これまたちなみに、主人公の呼ばれ方の変遷はこちら。
「耳切れうんいち」『曽呂里物語』
↓
「耳切れ団都」『宿直草』
↓
※『御伽厚化粧』に耳切り描写はなし。
↓
「耳切れ芳一」『臥遊奇談』
↓
「耳無し芳一」小泉八雲『怪談』
ずっと「耳切れ」だったのを「耳無し」にしたのは小泉八雲の創作だったというわけです。
これまたこれまたちなみに、小泉八雲の「耳なし芳一」の直接の元ネタは『臥遊奇談』と言われていますが、内容が類似しているだけでなく、決定的な証拠があります。
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ほら、富山大学が所蔵する『臥遊奇談』には、しっかりと「小泉八雲」の蔵書印が押してあるんですよヾ(๑╹◡╹)ノ"
小泉八雲は『臥遊奇談』を持っていたんですヾ(๑╹◡╹)ノ"
小泉八雲が直接読んだわけではなく、奥さんが読んで聞かせたんでしょうかね。
えっと、話がそれすぎてよくわかんなくなりましたが、「うんいち」は本当は「だんいち」だったのでは?というお話でしたヾ(๑╹◡╹)ノ"
類似テーマの過去記事「寝太郎の本当の名前は?」考察も読んでいただけたら嬉しいですヾ(๑╹◡╹)ノ"
kihiminhamame.hatenablog.com
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【『曽呂里物語』の本文が読める本】
◆『怪異小説集』※本文のみで注釈や現代語訳はなし。閲覧無料。翻刻の誤り多数あり。
◆『江戸怪談集〈中〉』※抄出。本文と注釈のみで現代語訳はなし。翻刻したのは別の方なのに、何故か『怪異小説集』と同じ箇所の間違いが多数あり。
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