前回の続き、左ページの文章を中心に解説します。
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※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
金草鞋. 1編 - 国立国会図書館デジタルコレクション
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【原文】
侍
「新五左衛門《しんござえもん》殿、御覧なされ、向かふへ美しそふな婦人が参ります。
兎角《とかく》女の歩く尻付きと申す物ハ、悪く無い物で御座る」
「如何様《いかさま》御尤《ごもつとも》も千万《せんばん》、拙者と貴公ハ胴服中《どうぶくちう》で御座る。
はいほう/\、脇寄れ/\、馬ハ溝《どぶ》へ叩き込め、車ハ屋根へぶち上げろ、女ハそつと脇へ御退《おの》きなさい」
「向かふから、生酔《なまゑ》ひめがひよろ/\して失《う》せ居《を》る。
忌々《いま/\》しい奴だ、おいらに気を悪くさせやァがる」
〇 下谷上野町《したやうへのまち》常陸屋《ひたちや》と申す呉服店にて、年々《とし/゛\》の新型 御単物地《おひとへものぢ》売り出し候。
何とぞ御評判《ごひやうばん》宜《よろ》しく願ひ申し上げますと、此の作者の口上。
【現代語訳】
侍A
「新五左衛門《しんござえもん》殿、御覧なさい、あちらに美しそうな婦人がいます。
何はともあれ、女性の歩く時の尻の格好は、悪くないものですなあ、でへへ」
侍B(新五左衛門)
「なるほど、全くその通りでござる。
ただ、あなたと私は今、胴服[武士の制服]を着ているので、仕事に集中するでござる。
ハイホー、ハイホー、脇に寄れ、脇に寄れ!
馬はドブに叩き込め!
車は屋根へ放り上げろ!
女性はそっと脇へお寄りなさい、でへへ」
奴
「向こうから、酔っ払い[千久羅坊と延高のことか]がよろよろしながら来やがる。腹立たしいヤツだ、おいらの気分を悪くさせやがって」
〇 下谷上野町《したやうえのまち》の常陸屋《ひたちや》という呉服店で、毎年、私がデザインした新しい柄の着物生地を売り出しています。
なにとぞ、世間の評判になりますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上、この作品の作者の口上《こうじょう》でございました。
【解説】
侍B(新五左衛門)は、女性のお尻に夢中な侍Aに仕事中だと注意しながら、馬や車には厳しいのに、自分も女性にデレデレしているというね(笑)
この女性を見てデレデレしている侍二人は、挿絵の中では間違いなくニヤニヤしてるこの二人でしょうね(笑)
千久羅坊と延高は奴を見てビビってましたが、奴《やっこ》は奴で二人を見てイライラしてたみたいです(笑)
最後に、唐突に呉服屋の宣伝が出てきます。
演出上の広告ではなく、実際、下谷上野町の常陸屋の主人、忍岡常丸《しのぶがおかつねまる》と作者の十返舎一九は親しく、一九は毎年着物の柄のデザインをしていたそうです。
お店の場所は、今の上野公園[地図では寛永寺]の南あたりにあったみたいですね。
〔江戸切絵図〕 - 国立国会図書館デジタルコレクション
僕の着物は目玉柄だよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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※付録CDに『武太夫物語絵巻』(『稲生物怪録』)が収録されています。
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